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大団円は修羅場の前に

 無言のまま女性陣が睨み合う。

 声を掛けるのも躊躇われたので俺は彼女達を放置してギュンターの元へと向かう。

 なぜか一緒に付いて来た若萌は修羅場に巻き込まれたくなかったためだろう。


「セイバー。今回は本当に感謝してもしたりんよ。お前に出会えたこと、一生忘れはせん」


「大げさすぎるってギュンター。魔王としての責務は結局ほとんどしてないしな。ギュンターと若萌に任せて諸国巡ってた記憶しかねぇや」


「それでも、お前が居てくれなければ魔族は滅んでいた。お前が来たから助っ人も来たし、女神も倒せた。我等魔族は我等に味方してくれたお前達への恩を一生忘れはしない。といっても、我々に何が出来るわけでもないのだが、せめて、娘を嫁にやるぐらいか」


「ふふ。ユクリを娶るのは確定みたいね父さん」


「楽しそうだなオイ」


「私の居る未来に繋がったもの。賑やかな日々になるわ。ユクリと母さんが絶えず争い怒号が起きて、ラオルゥが日本の常識を守れずに請求書が膨れ上がって、正義の味方なのに赤い悪魔と呼ばれる父さんの素敵な毎日の始まり始まり。あ、マイツミーアとペリカとテーラも来てたわね」


「それ、全然素敵じゃなくね?」


「魔王陛下! 頑張ったですにゃ!」


「陛下、御帰還おめでとうございます」


「聞いてください陛下、姉さんがギーエンさんとバカップル化しちゃったんですよっ!」


 噂をすればというべきだろうか、何故か俺の元へと寄って来るマイツミーア、テーラ、ペリカ。ついでにラオルゥとシシルシが近づいて来る。


「セイバー、明日に異世界に戻るのだろう? 嫁として我も付いて行くが、異論はあるまいな?」


「面白そうだからシシーも連れてってくれるよねー? 赤いおぢちゃん?」


 なんか知らんうちに地球行きのメンバーが増えてる気がするのだが……

 そんな女性陣は俺に一声かけた後、睨み合い続ける萌葱とユクリのもとへ、なぜかラオルゥとマイツミーアが参戦してテーラとペリカが苦笑いを浮かべている。シシー、頼むから煽らないでくれる?


「ふん。なんて顔をしているセイバー」


「おお、ルトラか。っていうかスーツ姿なのになんて顔も何も無いだろ。お前も一緒に来るか?」


「僕様はこちらに残るよ。ディア様の森を再現するんだ。ディア様とウチのババァが過ごした地を再現する。ギュンターと共に話し合ったんだ」


 ルトラはディアリッチオの森を再現するつもりらしい。何年かかるか分からないが、植林して街を作って、残りの人生を費やすそうだ。

 今度はきっとルトラガーデンとか呼ばれる森になるんだろうな。それともディアリッチオの森のままで行くのかな? まぁ、俺には関係のない未来の話か。


「セイバー。シシルシとラオルゥ様を頼む」


「ああ。まぁ保護者になれるかどうかわからんが、向こうのメンバーと協力してなんとかしてみるよ」


「こちらも、再びお前の力に頼らなくて済むようになんとか和平を結んで行くさ。道のりは遠いがそれなりに道筋は作られているからな」


「ああ、そうだ。ギュンター。前に会議で決めた各国との条約、多分再考できるはずだぞ」


「わかっているさ。お前や若萌と決めたことは我が引き継ぐ。時期魔王候補も見付けたしな。補佐にしてゆっくりと引き継いでいくことにする」


 と、ユクリの代わりに見つかったらしい魔王候補に視線を送るギュンター。

 視線の合ったラガラッツがどうしました? と事情を知らない顔をしていたが、既に犠牲者は決まったようだ。

 これから先は和平に向けて大変な闘いが行われるだろうな。主に行政的に。

 ラガラッツの精神力が摩耗するだろう未来に、俺は静かに黙祷を捧げた。


「でも、なんでラガラッツ? サイモンとかカルヴァドゥスとか指揮が上手いのは他にも居るだろ」


「東の兵士達から色々聞かされてな。なんでも率先して撤退命令を出し、自分が中隊と共に殿に残り民や我らを逃そうとしたのだ。その決断力の速さ、民を想いやれる心、さらに的確な指示出し、先見の明など、数えればきりがない。彼はまさに伏龍であったよ。魔将にしておくには惜しいと思った。東はシオリアに任せ彼には我が側近として間近で我が働きを見て貰おうと思う。コルデラも側近としては優秀になってきたからな。ぜひとも二人で時期魔王の座を争ってほしいモノだ」


 切磋琢磨しろと? まぁ俺が関係ないなら別にいいんだが。頑張れラガラッツ、コルデラ。


「あと、敵前逃亡をしていたムイムイなのだが」


「ああ、彼女な……確かに俺は勇者と闘うなら逃げた方がいいとは言ったが……」


「折角なのでネンフィアス帝国に連れて帰って貰い根性を叩き直して貰うことにした」


「うわぁお」


 男塗れの場所で一人戦闘訓練か。かなり地獄だな。


「それで……さ、さて、我等はそろそろ城の補修や各地への指示出しをしようかな」


 ん? どうしたギュンター焦った顔でそそくさと逃げだし……あ、まさか。

 気付いた時には遅かった。

 がしり、背後から肩に手が置かれる。

 右と左同時。なれど両方が右手である。


「セイバーさん、ちょぉっといいかなぁ? 助けに来たら妻が出来てましたって……どういうこと?」


「セイバーよ、余を差しおいて妻候補とはどういうことかな?」


 気が付けば、若萌が少しずつ俺から遠ざかっていた。

 助ける気はないらしい。

 背後に引き寄せられる俺は思わず手を伸ばす。

 何を勘違いしたか若萌は朗らかな顔で手を振り返すのだった。

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