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中央集中3

「フレアライトクロスっ!」


「ダブルマジック、プラズミックフォレスト×2」


巨人の槍ティタニウムランサー!」


「ふむ。こうして四方で闘い合うというのは昔を思い出すな。勇者パーティーを思い出す」


 四者四様、至宝が双剣から雷撃を迸らせ北の群れを薙ぎ払い、ルトラの二連魔法が南の群れを駆逐する。

 魔法で作り出した巨大な槍を光速で発射するのはパルティ。西の群れが一瞬で消し飛んだ。

 それらを背に感じながら、ラオルゥは久方ぶりのパーティー戦に心を躍らせていた。


 懐かしい思いが湧き起こる。

 憧憬にも似たその闘いに、知らず涙が滲んだ。

 腕で涙を拭い、迫るディアリッチオ人形を魔眼で破裂させて行く。

 眼に映る全ての魔神を的確に破壊するラオルゥの攻撃で、東の群れも悉く爆散していった。


 魔王軍もネンフィアス軍も、弓を射掛け魔法を唱え、彼らには及ばずとも人形の群れを撃破していく。

 自分達も頼りになるのだと、負けじと食らいつく姿に、ギュンターは感動を覚えていた。

 自分が信じた魔王軍。それがついにその真価を発揮してくれたような。

 不謹慎ではあるが、今、輝く魔王軍の働きが、彼の眼には眩しく映った。生き残っていて良かった。今は素直にセイバーに感謝する。


「うぅ、どうしてこんなことに……」


 ふと、感動に水差すように隣で呟きがあった。

 見ればムイムイが愕然とした表情で立ちすくんでいる。


「ムイムイだったな」


「ひゃい!?」


「聞いた話では任務を放り出しての敵前逃亡、さらに中央の軍からも逃亡したそうではないか」


「あ。そ、それは……」


「いくら魔王であるセイバーが許可したからとはいえ、責任ある立場の者が率先して撤退命令すら出さずに逃げるというのはいかがなものか?」


「あ、うぁ……」


 魔王ギュンター自らに言われると、流石にムイムイも肝を冷やす。自分がどれ程大それた失態をしでかしたか理解したようで全身から瀧のような汗を零しだしていた。


「だが、中央軍に奇襲を知らせたことは称賛に値する。よって今回の逃亡については不問にしておこう」


「あ……ありがとうございますっ」


「だが、心せよ。部下や他の軍からお前の評価は完全に下回った。これを取り戻すのは至難であるぞ」


「あ……」


 ギュンターが罰せずとも彼女は同僚たちから蔑んだ目を向けられることが確定してしまっているのだ、それに気付いたムイムイが救われた表情から一転、再び絶望感に打ちひしがれていたが、もうどうでもいいとギュンターは彼女から視線を外し、空を見上げる。


「セイバーよ。頼むぞ。我等の命、貴様に託す。女神を……討ってくれ……」


 呟きが虚空に混じって消え去った。




「おー、キモッ!? 何その顔、生まれて来て後悔してないの?」


 無邪気な笑顔でフィエステリアに近づいて来たシシルシに、初っ端から失礼な娘だな。と思いながらフィエステリアが対応する。

 実質下手に手を出すとディアリッチオ人形に巻き込まれる形で殺されかねないので人形討伐に参加出来ないでいるのだ。なので暇になっているフィエステリアはシシルシの話し相手をしておくことにした。


「言っとくけど、これは改造手術受けた時からで生まれてこの姿じゃないからな」


「へー、あ、じゃあ赤いおじちゃんみたいに変身するんだ?」


「そういうこった」


「でも、そんな顔なのにチキサニと稀良螺を侍らしている、と。寝取り魔さんだね!」


「寝取り魔言うなし。俺だって何があってこうなったか理解できてないんだよ。つか既に妻子持ちだっつの。異世界戻ったら嫁連中にまた増やしたのかとか言われて追いかけられるんだぞ! 変なとこ折られたり水で穿たれたり吸血されそうになったり、俺、既にデッドフラグ立ちまくってんだからな! 人魚の血飲んでなかったら既に1万回くらい死んでるんだぞ!?」


「うわぁお。寝取り魔じゃなくてリア獣だったぜ。どんだけの女コマしてンだ!? 近寄んな性獣! オレ様は売約済みだ。それ以上近づいたらぶっ殺すぞ!」


 焦った顔でフィエステリアから距離を取るシシルシ。

 若干傷付くフィエステリアは溜息混じりに空を見上げた。


「セイバー、さっさと終わらせてくれ。なんか俺のデッドフラグが凄い勢いで立ち上がりだしてんだ……早く戻りてぇ……いや、戻るのも恐いな……」




「光の盾がまた!?」


「相手はディアリッチオの人形だもの。本物程の力はなくとも昔魔神を屠る前くらいの実力はあるんでしょ! 母さん、あっち、包囲抜けたのが!」


「若萌様、アレは私が!」


 萌葱と若萌の護衛に付いていたメロニカが羽を飛ばして撃墜する。

 落下した人形に萌葱の茨が襲いかかり、拘束して青い薔薇を咲かせた。

 それを地上迎撃部隊が総攻撃で撃破する。


「数は多いけどこのままならなんとかなりそうかな?」


「母さん、あの群れ見て良く言えますね。どう見ても∞増殖してますよ!」


「こちらの魔力が尽きるのが先か……セイバーさん。本当に、お願いしますよ」


「父さん……ううん大丈夫、父さんと母さんはちゃんと生還したもの、大丈夫、父さんを信じるわ」


「未来の娘が言うならそうなんだけど、なんかこう、自分とセイバーさんがくっつくとか言われても恥ずかしいというかなんというか……あれ? でもあそこで魔法撃ってるユクリさんセイバーさんの妻とか言ってたような? あれ? どうなって……?」


「母さん、光の盾を! 私のもそろそろ破れそうです!!」


「あ、そうね!」


 ふと気付きかけた疑問が若萌の言葉で吹き散らされる。萌葱は慌てて光の盾を張り直すのだった。

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