勇者VS魔神1
「なんと悔しきことかっ」
嘆きと共に、ディアリッチオは魔法を撃ち放つ。
「所詮私は女神の人形でしかないのかっ」
飛んできた魔法弾を魔剣レーヴァテインで撃ち払い、勇者手塚至宝が走り寄る。
彼女の姿はまさに英雄を思わせる白銀の鎧だ。額のサークレットも、竜鱗の靴もそのどれもが煌びやかでありながら防御力の高いモノが使用されている。
さらに手に持つのは魔剣レーヴァテインとさらにもう一つ。別の異世界で手に入れた魔剣ユーリリスを持っていた。
この剣はジャスティスセイバーを捜索していた際に見付けた剣であり、攻撃力もさることながら付加される風魔法がレーヴァテインの炎を助長し、必殺技をさらに高威力にするため、最近愛用しだしている魔剣である。
ディアリッチオの魔法を弾くのに、この二つの魔剣は丁度良い剣だった。
そのため、ディアリッチオは珍しく追い込まれる結果となる。
最強であるはずの自分と同等の力を持つ勇者。
ソレが目の前におり、自分を追い詰めようとしている。
ディアリッチオはその事実に驚きを隠せないでいた。
「大したものだ。その若さで私と同等の力を有するか」
「それなりに苦労はしたけどな。とりあえず、アンタ自分で考えるだけの知恵はあるんだよな」
「それは補償しよう。私の身体は女神の人形だが、私の人格は私のものだ」
「そうか。なら、転生出来るかもしれねーな」
「転生?」
言われ、ディアリッチオは初めて驚き眼を見開いた。
転生。その考えはなかった。
死んだらそれで終わり。そう思っていたのだ。
「転生とは、どうすればいい? 女神の呪縛から逃れられるのか!?」
言葉と行動が一致しない。驚き尋ねながらも魔力剣を作りだし至宝の一撃を受け流す。
近接戦闘に移行し、双剣で攻め寄せる至宝の連撃を、ディアリッチオも魔力剣を二本作り出し対応する。
攻守は激しく逆転し、どちらも防衛に回りながら相手の隙を付いて攻撃を繰り出す。
「あたしらの常識にな、輪廻転生っつーのがあるんだわ。生けとし生ける者全ては死した後に新たに生まれ変わるってな。幸い高位存在の神々があたしらの闘い見てんだ。あんたが死ねばそっちの世界に転生させてくれンだろーぜ」
「ほぅ、それは魅力的な提案だ。この身体が朽ちようとも精神だけが別の肉体を得るというのならば、ぜひとも体験してみたい!」
「そりゃよかった。倒すの躊躇う必要が無さそうだ」
至宝の一撃を払い、蹴りを叩き込むディアリッチオ。
至宝はこれをワザと受けて距離を取ると、双剣を構え直す。
「ならば私も願おう。私を倒し、私を救っていただきたい」
「ならば、その願いを叶えよう。勇者を名乗る者として、あんたを倒す」
ディアリッチオが片手を天へと掲げる。
炎が生まれ、火球と化し、その姿を一気に膨らませて行く。
対するように、至宝もまた、双剣を真上へと掲げた。
「ライトニング×2」
掲げられた二つの剣が紫電を散らす。
帯電した剣は片方は焔を纏い、片方は暴風を纏う。
二つを繋ぐは雷の魔法。
「生き残れ勇者! ジェノサイドアグニス!」
街一つ飲み込み破壊する凶悪な魔法を、至宝向けて打ち放つ。
勇者は対面したまま動かない。
戦場の魔族が、人族がその一撃に生唾を飲む。
当れば勇者は死ぬだろう。そればかりが周囲の全てが消し飛んでしまう。それほどの一撃だ。
絶対に死ぬ。皆がそう思った。
「フレアライトクロスッ!!」
だが、至宝も異世界で鍛え抜いた勇者。
その実力は、ディアリッチオの一撃に向け、迷いも戸惑いも無く打ち放つ。
二つの剣がクロスして、炎と風を纏った雷撃が迸る。
ライトニングとライトニングが螺旋を描き、その中心を風により加速された焔が駆け抜ける。
双方の秘儀が接触する。
巨大な炎球と、直線的に飛ぶフレアライトクロスが炎球を穿たんと突撃する。
一瞬の拮抗。
だが、直ぐに炎の中へと侵入したフレアライトクロスが炎球を弾き散らしディアリッチオへと吶喊する。
「なんと!?」
咄嗟に魔法障壁を張り巡らしたディアリッチオ。それでも障壁を爆散させ、彼にダメージが通った。
「くぅっ。なんとすばらしい。これ程の実力があるのか。私を越える存在がいるというのか……」
「はっ。あたし程度に何言ってやがる。あたしの知ってる島にはな。あたしなんざ指先一つで倒せる奴らがゴロゴロ居やがるんだよッ」
ダメージといってもかすり傷程度。ディアリッチオの戦闘に支障はなかった。
仕切り直しとでも言うように魔力を溜める。
至宝もまた、今の一撃で倒せるとは思っていなかったようで、既に戦闘態勢を維持していた。
「それは素晴らしい。ぜひともその島とやらを訪れたいモノだ」
「転生したら連絡しな。連れてってやるよ」
勇者と魔神の闘いは、まだ始まったばかりであった。




