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六人の勇者2

 王からの説明が終わると、俺達はとある一室に通された。

 木製の椅子が六つ円形に並べられており、どうやらここで話し合いをしろということらしい。

 一応兵士が数人部屋に入って来て隅の方に立っているので、監視が付いているのは確定らしい。

 勇者たちといえども見知らぬ一般人だ。そりゃあいきなり暴れられたり共同で反旗を翻されても困るという事らしい。


 幸いなことにステータスを確認されたりなどといった悪意ある状況にはなってない。

 奴隷化の首輪やらも貰わなかったので、この国はそれなりに安全な国かもしれない。

 俺達を呼び寄せる時点で善意ある国とは思えないけどな。


「ええと。とりあえず自己紹介、からでいいのかな?」


 ワクワクしているメガネ君が皆を見回す。

 不良君がけっと吐き捨てるが、すぐ隣にいた女の子に気付いて露骨にエロい顔になっていた。

 あいつは要注意だな。


「じゃあ、まずは僕から。冨加津とかつ大悟だいごです。漫画やラノベが好きなので異世界転移物のテンプレは任せてほしいですね。ああ、楽しみだなァ、初戦闘でゴブリンに追われた御令嬢助けたり、内政チートで無双して貴族に目を付けられたり、ああ、冒険者ギルドに登録に行ってヤバそうな奴に絡まれて倒したらあいつらAランクでアンタすげーとかなるのかなっ。楽しみだっ!!」


 皆、引いた目をして彼を見ていたが。分かる。ちょっと分かるよ大悟。俺も異世界何度か行ったから異世界とか憧れて、そして現実目の当たりにして泣き崩れるんだ。

 真実を知るまで俺は優しく見守っておくよ。


「あー。その、細かいことは良くわかんないんだけどさー。とりあえずー、家に帰るなら魔王? っての倒せばいいってことっしょ? オヤジ狩りみたいな感じでいいのかね? あ、私MEYで~っす」


 頭の痛い喋り方をしているのは派手な黒肌系ギャルの女生徒だ。

 紫色に染められた髪はなんといえばいいのか、とりあえず派手だとしか言いようがない。ラメでもまとっているのか煌めいて見える。

 何をどうしたらああいう髪型になるのか、そしてその髪型を表現できるような言葉が俺には思い浮かばない。


 とりあえず言えるのは、とても長い髪が首のあたりで左右に別れ、腰元付近でカールして半円を描いているストレートヘアーとでもいうべきだろうか? ごめん、俺も言ってて良く分からないんだ。 どうやったらあんな地面に反発できる髪型になるんだ?

 本当に意味不明な髪型だ。

 服もサイズの合ってない大きめのブレザーを着ており、スカートは大股開きで俺に見せつけているので正直目のやり場に困る。下着はピンクだった。


 顔は可愛い系だし背も小さいのに、どう見てもビッチギャルだ。

 ネイルアートもキラキラメイクで、デコったスマホをぽちぽちと操作している。

 正直、できるなら知り合いになりたくない部類の女性だ。俺には種族が違い過ぎる。


「次は俺か。あんまこういうの好きじゃねーんだが。浜崎玲人だ。よろしくな」


 と、女の子限定でにこやかな笑みを浮かべる玲人。

 彼の目的が透けて見えるせいかMEYと俺の左横にいる少女は完全無視だ。右隣の少女は怯えた顔をしている。一番背の低い彼女は小心者らしい。


「ほら、オマエだぞ?」


 そんな少女に声を掛ける玲人。

 ビクリとしながらも少女は俺のクラスメイトの一人と似たような感じでおかっぱ……というか前髪が揃っているパッツン型セミロングの少女だった。

 うーん。俺の場合、知り合いのあの女がちらつくせいで性格が一致しないというか……なんか変な感覚だな。とりあえず、胸がそれなりにデカいせいか玲人の喰い付きがハンパない。


「わ、私は……弓羅です弓羅ゆら矢鵺歌ややか


 凄い名前だ。キラキラネームだろうか? それとも……偽名?

 まぁいい。こういうときは偽名を名乗っていた方がよさそうだしな。

 俺も偽名にしておくか。……やはり武藤か。


 矢鵺歌の自己紹介が終わると、皆の視線が俺に向う。

 どうした? と疑問に思ったが直ぐに理解した。

 そういえば俺だけだな。赤いスーツ着てる奴。


「あー、その、武藤だ。武藤誠」


 言っててなんだが、ちょっと似合わないなこの偽名。

 ちなみに、俺の本当の名は河上誠だ。正義の味方ジャスティスレンジャーの赤担当、ジャスティスセイバーである。

 なぜ偽名で武藤なのか。といえば、俺のライバルと思っている怪人の名字が、武藤なのだ。

 今回は拝借させて貰った。


「武藤……?」


「何か?」


 不意に、隣から声が漏れた。見れば俺に構ってきていた女生徒だ。彼女は少し考えるそぶりを見せながらも、自分の番だと気付いて自己紹介を優先させた。


河上かわかみ若萌ももえよ」


 今度は俺が言葉を漏らす番だった。

 思わず驚きそうになって、ぎりぎり「河上?」と告げるに留める。

 黒髪が艶やかな少女はストレートに伸びた腰元までの髪を結い、いつの間にかツインテールにしている。

 右腕にブレスレット。なんとなく見覚えのあるモノに見えるが形は違う。しいて言うのなら俺の変身用ブレスレットに似てる気がしなくもない。

 左腕には弓の形をしたブレスレットをしている。

 冷めた瞳でこちらを向いた彼女は、何か? と不思議そうな顔をしていた。

 なんでもない。と答えて前を向く。


「とりあえず質問いいか武藤」


「ああ。なんだ玲人」


「いきなり馴れ馴れしいなオイ。まぁいいけど、それ、コスプレか?」


「これか? いや、俺は元戦隊ヒーローだ。これは強化スーツで怪人と闘うためのモノだ」


「は? 怪人? え? マジで言っての?」


「あはは。まこっち草生えるっ。ワロス~」


 なぜ笑う? 腹を抱えて笑いだしたMEY。涙まで滲んだようで指先で拭いながらまだ笑う。

 そして直ぐ横から探るような視線を向けて来る若萌。

 むぅ、やはりこの姿だと少々異質か。


「変身解除」


 折角なので俺も人の姿を……と思ったのだが、なぜか腕輪が反応しない。

 俺の姿もスーツのままだ。


「変身解除、変身解除……おかしい。解除できない?」


「そりゃそうだろ。バッカじゃねぇ?」


「浜崎君、それは言っちゃダメだよ。中二病っていうのは本人にちゃんと設定があるんだから。それをバカにしちゃダメだ。暖かい目で見てあげないと可哀想だよ」


 大悟、お前の方が酷くないか?

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