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外伝・迫る連合軍

「魔王を、討つぞーっ!」


 男の声に、無数の兵士たちが拳を突き上げる。


「魔族を、殺せーっ」


「「「「「「「「「「魔族を、殺せーっ」」」」」」」」」」


 兵士たちのボルテージは嫌でも高くなる。

 この地にいるのはエルダーマイアの神官兵。猊下も光子たち勇者と共に参戦しており、その隣にはレシパチコタンの有志たち。

 レシパチコタンの数は500にも満たないが、彼らの武器は一撃死の可能性すらある猛毒の矢である。まさに精鋭狙撃部隊といえるだろう。


 他にも小国から何百何千と兵士が来ているが、エルダーマイアの兵士と比べると練度は低い。

 また、勇者により無理矢理まとめられたこと。自分たちの代表が信也ではなく、失敗面で少し頭のおかしいとしか思えない、名偉斗なのだからやる気は低い。エルダーマイア兵とレシパチコタンだけがテンションが高い状態だ。


 南門を守る魔族軍の目の前で行われた名偉斗による鬨の声。しばらく声を掛けて気運を高めると、踵を返して魔族軍に視線を向ける。

 名偉斗はニヤリと笑みを浮かべて自慢の赤い槍を魔王軍へと向けた。


「さぁ、行け! お前の後ろにゃ勇者と女神が付いてる。魔王軍をぶっ潰せ!!」


 兵士達が走り出す。

 雄たけび上げながら近づいて来る軍勢に、魔王軍もまた、既に準備を終えていた。

 対抗部隊となった魔族軍を指揮するのはカルヴァドゥス。


「まったく、この状況でルーフェンの部隊が居ないのは痛いな。奴は奴で結構使えたのだが」


「居ない存在に何かを言っても意味ないわ。それよりそのルーフェンが集めていた武具の使い方を調べて使っちゃいましょう」


 告げたのはムイムイ。既に合流した彼女はルーフェンの代わりにカルヴァドゥスの副官的役割に落ち付いていた。彼女の側には蟻人族のベーが護衛として側に居り、カルヴァドゥスの方には秘書的な役割として一つ目一角の胸の大きな女性が立っていた。


「第一陣はホルステン、第二陣はミクラトルァ、第三陣はメイクラブだ。我々はここで陣を張る。絶対に抜かせるな! 人族の雑魚共に我等の力を見せてやれ。魔王軍に南軍ありと言わせてやれ!!」


 カルヴァドゥスは剣を引き抜き空高く掲げる。

 ソレをゆっくりと人族向けて振り下ろし、告げた。


「全軍、押し潰せ!」


 南軍の闘いが今、始まろうとしていた。




「遠いわねぇ」


 西を任された和美はネンフィアス軍と共に船に乗っていた。

 海上戦は全くやったことのないネンフィアス軍は、猛者だらけとはいえ海では新人兵士と同じであった。

 波間に揺られ気分を害し、吐き散らす者、寝込んで起き上がれない者。既に数百人に上る。

 無事な者を見つける方が難しい位である。

 しかも、真下から海魔が襲って来る。


「面倒だわ。本当に面倒。いい女が居るならともかく、ムッサい男ばっかり!!」


 叫ぶ和美は海面から飛び出した魔物を鞭で切り裂く。


「こんなので西門までいけるのかしら?」


 そんな彼女の疑問など、当の西門を守るトドロキにはどうでもいいことだった。

 彼もまた、自分の領地が戦に巻き込まれると知り、腹を括っていた。

 彼が指揮するのも平和ボケしてしまった新人と変わらない兵士たち。

 埠頭に大砲こそ設置して貰ったが、防衛力の不安は他の防衛部隊から見ても一番低い。


 しかも魔王からの援軍も無い。

 むしろフラージャ洞窟に敵を近づけないようにしてくれと言われた位である。

 命を掛けることも許されず。必ず生還せよ。と無茶も言われた。

 この状況で、本当に……海を見つめるトドロキの目に、無数の船が見え始める。


「さぁ、絶望の始まりか、はたまた希望への道か。全軍戦闘用意! 一隻たりとも上陸させるなっ」




 北門は今まで通りだった。

 ディアの森から引き連れられていた魔物によりノーマンデの兵が蹴散らされる。

 唯一の橋の上で、ノーマンデは今までのように足止めを喰らい、信也はソレを腕を組んで見守っていた。隣にはディア。


 ノーマンデだけでなく、メーレン、カーラン、レインフォレストなどの兵士も来ているが、軒並み士気は低く、敵に蹂躙される一方だ。

 早々に、信也は彼らだけに任せるのをあきらめた。このままだと千日手で相手に有利になるだけだ。ついでに言えばじっとしているのが信也の性に合わない。


「仕方無い。ディア、出るぞ」


 対する魔王北軍は、サイモンが指揮しており、ブルータース、メロニカ、そしてペリカが武将としてやって来ていた。

 さらにエルフ族からも数人、森を守るためにMEYと共に参戦した。その中にはラオラとその兄の姿もある。


「どうやら、勇者が出てくるようですね。突破されるとみた方が良いでしょう。全員、戦闘準備。ディアリッチオ様に気を付けなさい」




 そして、東門。ラガラッツとシオリアの元に、マイツミーアがやってきたのだが、こちらの人族は動きが鈍い。

 どうにも勇者が来ないらしく、各国の兵をまとめ切れていないようだ。

 特にコーデクラとルトバニアがメインであり、ハーレッシュ国も勇者に脅されての参加であるため士気は低い。そのためコーデクラとルトバニアのいがみ合いが発生していた。

 ラガラッツは森の先にある海の上にある木々を切り裂きすでに人族領との繋がりを断っているのだが、その対岸で人族同士のいがみ合いを見せられており、どうしたものかと呆れていた。


 そんな相手の呆れた顔を見せられているのはルトバニアの勇者大悟とソルティアラ。

 勇者永遠が来る手筈になっている日にちになっても彼が来ないのだ。

 業を煮やした大悟はソルティアラに一言入れて、自分で迎えに行くことにした。

 そして、彼は見たくなかったものを見ることになるのだが、この時の彼はまだ、何も知らなかった。

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