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外伝・神々の邂逅

「よぉ、女神様」


「あら。信也に和美。名偉斗と永遠は?」


 矢鵺歌はエルダーマイア近くの村に来ていた。

 もともと逃走先をエルダーマイアと決めて逃走していたのだが、やって来てみればなぜかエルダーマイアの国が消滅していた。


 まさにメギドの炎で焼きつくされたように、焦げた大地だけとなった国を見て呆然と佇んだことしばし、結局少し離れた村へと向かうしかなかった。

 簡素な村だ。正直あまりここにいる益は無い。

 しかも、エルダーマイアから運良く逃れられたらしい住民が直ぐ近くで野営をしており、村の人数は物凄い勢いで増えていた。


 早々に別の国に逃げるか。と矢鵺歌が旅支度を整え村から出た時だ。

 信也たち勇者パーティーと遭遇した。

 といっても信也と和美だけで他の二人は見当たらない。


「永遠はルトバニアに残ってる。名偉斗は別の街でオーダーした槍ができるまでそこにいるらしい。俺らはその間に各国を纏めようと思ってな。一斉に魔王軍にけしかける」


「私が考えたの。せっかくだから四面楚歌にして追い詰められた魔王城に私達で攻め込もうって」


「あんたの好きな魔王の絶望って奴だ」


「あら嬉しい。流石信也。私の喜ぶ事をよく分かっているわね」


「まぁ、な」


 気恥しげに頬を掻きながらそっぽを向く信也。


「ま、まぁ、アレだ。エルダーマイアの協力をと思ったんだが、国がディアの一撃で滅んでるみたいでな。今から戻るところだ。魔王領突っ切ると速いんだが、それは縛りプレイでやらないって決めたからな。これから遠回りしてネンフィアスに向う。ほとんどの国が賛同してくれはしたが、なぜかルインタとかコーデクラが首振ってくれねぇんだよ。レインフォレストもどうも芳しくない」


「魔族に肩入れしてるってよりはあの魔王がネンフィアスを暗殺する訳が無いって、ね。ジャスティスセイバーだっけ。あいつ人心掌握術でも持ってんのかしら?」


 そんなものは持っていないはずだが?

 矢鵺歌は首をひねる。詳しいステータスを知るならばアバターを捨てて女神に戻るしかないのだが、それは出来るだけしたくない。もう少し、臨場感あふれるこの大地で、奴らの絶望する姿を見ていたいのだ。


「じゃあ、これからあなた達はネンフィアスに向かうのね?」


「ああ。女神さんは? 一緒に来るか?」


「いいえ。エルダーマイアがダメでも身の置き所はあるのよ。じゃあね」


 勇者達が去って行く。

 矢鵺歌も村を出るため道具屋で必要物資を整え、さぁ、村を出よう。そう思った時だった。

 竜巻が、空を走って近づいて来た。


 そこに一人の男を見つけた瞬間、矢鵺歌はただただ呆然と立ち止まるしか出来なかった。

 また、あいつだ。あいつがまた、自分の前に現れた。

 恨みすら籠った憎悪を顔に出す。


『女神様。魔王軍が動きます』


 にっくき不幸の神に弓を向けた瞬間だった。

 魔王軍に潜り込ませておいたスパイから念話連絡が来た。


「今忙しい。後で聞くっ」


『しかし……いえ。了解しました』


 竜巻のせいで狙いが定まらない。チキサニの毒を塗った矢が相手に当る道筋が見えない。

 ええい忌々しい。

 不意に、竜巻が途切れた。


「消えた? いや、違う。落下した!?」


「うわああああああああああああああああああああああああああ――――……」


 狙いが定まったと思ったらこれだ。不幸にも竜巻が切れ、不幸にも自由落下。

 落ちる場所は……あの辺りか!?

 急いで弓を背中に背負い直すと矢鵺歌は走り出す。




「ぎゃんっ!?」


「ひゃぁ!?」


 そいつは、突然、何の脈絡も無く空から降って来た。

 地面に叩きつけられた男は花畑の中央に落下し、幾つもの花を吹き飛ばしながら地面を陥没させていた。

 それでも、死ぬこと無く生きていた。


「うぅ、不幸だ。竜巻の野郎。俺を運ぶだけ運んで放り投げやがった……」


 軽くへこんだクレーターから起き上がった男に、恐る恐る少女が近づく。


「あの、だ、大丈夫……ですか?」


 花摘みに来ていた幼い少女は不安そうに尋ねる。

 それに気付いた男は少女に顔を向けた。


「ひぅっ!? え、ま、魔族?」


「あん? 待て待て、俺は人間だ。これは動かなくなった場所を機械で補ってるだけでだな」


「きかい? よくわからないけど、その、怪我、してない?」


「おっとストップ。ソレ以上近づいちゃダメだお嬢ちゃん。俺に触れると不幸になるぜ」


 怪我の有無を確かめようと近づいて来た少女を掌で制し、男は立ち上がる。

 自分の身体を確認し、数秒。


「ん、身体機能オールレッド。また警報鳴り響いてやがる。不幸だ。さっさと死なせてほしいもんだぜ全く」


 溜息を吐いて背伸びをする。ストレッチをするために身体を捻った瞬間だった。

 目の前を矢が通り過ぎた。


「な、なんだ!?」


「ちぃっ、外したっ」


 射線を辿れば、そこには弓を構える矢鵺歌が立っていた。

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