表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/337

魔族少女戦1

 玲人と大悟のレベルが20を越えた。

 俺のレベルは33。若萌とMEYのレベルも33。矢鵺歌は31だ。

 ついに追い付かれてしまった。

 経験値の差は実質埋まってない訳だが、レベルで見れば並ばれた状態だ。

 もう少しレベルが上がれば矢鵺歌とのレベル差も無くなるかもしれない。

 つまり、それだけこれ以上のレベルに必要な経験値が多いってことだ。


 その分闘う敵の数や強さが必要になる。

 俺達は本日の闘いの最中若萌と二人でエルフの森偵察を敢行した。

 幸い、パーティー編成さえすれば少し離れるくらいは問題無いようだし、俺達の殺人者の二つ名が他の女子二名を遠ざける結果にも繋がったのでそこまで問題にはならなかった。


 若萌と二人で件の森に向ったのだが、結構遠い。自然、MEYと矢鵺歌との繋がりは切れてしまったが、二人同時だった御蔭で勝手に森の奥に行っただけと勘違いされただけで済みそうだ。

 もともと俺達の単独行動は勇者内でも目立つ方だったからな。


 エルフの森を周囲から観察。

 一日で行ける距離にあったのも驚きだが、その広大な森の広さは更なる驚きだった。

 エルフらしき姿はなかったが、西側に西大陸と繋がる場所を見付けた。

 丁度森が西大陸と横断するように生えており、その一部が海に浸かっている。


「凄いわね。木が海の中で生存してる」


「そう言えば日本じゃ見たことないな。海に沈んだ木なんて」


「それはそうでしょう。木が海水の中で育つわけないじゃない。根腐れ起こして死滅するわよ」


 ごもっとも。

 バカじゃないの? と暗に告げられた俺は何も言えなくなった。

 しかし、この世界だと現実に海に沈む森が存在しているらしい。

 その森は西大陸に続き、向こうでも広大な森になっているようだ。


 時折剣撃の音がそっち方面から聞こえている。

 おそらく魔族の襲撃を受けているのだろう。

 魔法の光も森の奥から見える。


「随分闘ってるみたいね。これで人間側からも戦争を吹っ掛けられる。踏んだり蹴ったりねエルフ」


「だなぁ。これ放置してたらエルフ滅びるんじゃないか?」


「何、弱者を助けたい?」


「正義の味方だったら迷わず助けるんだろうがな。あいにく今の俺は秘密結社ラナリアの冒険者ヒーローだ。情報という名の報酬次第で何でも助ける悪でしかないよ。悪徳企業の助けすらするんだ。ラナリアはもともと悪だからな」


「ふーん。じゃあダークヒーローね」


 ダークヒーロー……はは、ダークヒーローか。俺にぴったりだな。


「自分の助けたいモノを助ける自己満足のヒーロー。いいじゃない。正義の味方なんて大抵そんなもんよ」


 反論は出来なかった。俺自身、自己満足で助けるヒーローだったからだろう。

 悔しいことに俺は力を手に入れただけの一般人なんだ。全ての人のためになんて奉仕精神は持ち合わせていない。

 そもそもジャスティスレンジャーに入ったのも「君、正義の味方やってみない? 時給だすよ」っていうアルバイト感覚だったんだ。


 ジャスティスレンジャーを抜けてからもラナリアから給金が出たし。

 正義の味方というよりただの人助けの仕事をしてるって感覚だな。

 これじゃ正義の味方というより組織の味方だ。正義だなんて、言える訳がないか。


 がさり。

 不意に、目の前の叢が揺れた。

 無言でコバルトアイゼンを構える若萌。

 俺も拳を握り、相手に注視する。


「ハァ、ハァ……クソ、エルフどもめ……っ!?」


 全身傷だらけで現れたのはくすんだ白灰色髪の少女だった。紫色の肌に、破れた赤いブラのようなものと同じく赤いパンティ。ビキニ水着にすら思える服装だ。

 生身だったら下半身押さえて思わず見とれていただろう。スーツに入ってるせいで直ぐに我に返って警戒を最大限に引き上げる。


 少女には蝙蝠のような羽が背中に生えていた。

 左側の羽は途中で引きちぎられたように無くなっている。

 左腕も動かないようで、右腕で庇いながら直ぐ横の木に身体を預け、なんとか立った状態でこちらを忌々しげに睨みつける。


「ニンゲンか。クソ、我が命運もここまでか……」


 ふらりと右に倒れ、しかし右足でしっかと地面を踏みしめる。


「だが、タダでは死なん。我がアイテム、楽に取れると思うなよっ!!」


 ▽ 手負いの 魔族が 現れた!


 強制戦闘発生だ。

 魔族女の周囲に黒い球体が八つ出現する。

 翼を持った小さな球体は、魔族女の周囲を旋回し、突然俺達向けて襲いかかって来た。


「マリス・フェザー!? 追尾式の魔法弾よ誠!」


「ソレが分かってもどうにもならないだろ!」


 とにかく何か方法は……

 必死にマリス・フェザーを避ける。

 避けることはできるのだが、羽を持つ黒い球体は避けた先で旋回して再び俺に突っ込んで来る。


 セレスティアルフェザーを引き抜き切り裂く若萌はなんとかなっているが、俺は大ピンチだ。

 触れれば確実にダメージになるので触れられない。かといって素手の俺が魔法をどうにかできるわけもなし。完全に詰んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ