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開戦前の静けさ

「ふぅ……」


 マイツミーアとオプケ娘を両隣りに侍らせ、玉座に座った俺は息を吐いた。

 ギュンターは魔王軍の編成と士気上げにユクリと向かい、ラオルゥはルトバニアからの帰還組からの報告を聞いている。

 ルーフェン、ムレーミアは若萌に引き連れられてゴブリン達の編成を始め、用意でき次第出発するそうだ。


 モルガーナはすでに擬態を終え苺大福だっけ? と共にシシルシのいるルトバニアへと送られた。上手くいくことを願う。誰かに食べられるかもだけど。

 しかし、シシルシがカード化される可能性は高いのに、なぜ無事なのだろう?

 考えても仕方無いんだが、気になると言えば気になる。


「魔王陛下」


 謁見の間にムイムイが入って来た。その後をペリカとテーラと稀良螺が付いて来る。


「どうした?」


「チキサニ様の護衛の選抜が整いました。こちらのメンバーとなります」


 と、ムイムイ達の後から数人……見た顔だな。


「フェレ、ロバート、メデュパ、ポェンティムです」


「おい待て。お前らルトバニア組じゃねぇか。ラオルゥのとこ居たんじゃねェの?」


「これはこれは魔王陛下、お会いできて光栄にございます。ラオルゥ様はガンキュが居れば充分と言う事で、我々はチキサニ様の護衛となることと相成りました」


 ふかぶかお辞儀をするロバート。なんかディアを思い出すな。


「んー。ま、いっか。じゃあ稀良螺とテーラを含めてフラージャ洞窟へ向ってくれ。タイミングはチキサニ自身に任せる。いいかチキサ「ブッ」……」


 俺は無言でチキサニの襟首を掴んで放り投げる。

 慌ててフェレが受け止めた。


「さっさと連れて行っとけ」


「了解しました」


 連れ去られるチキサニ。何故かテーラとフェレに片手づつ拘束されて昔捕獲された宇宙人の写真に載ってたみたいな姿で連行されていく。

 そして一人残る稀良螺。

 不安げな顔で俺を見る。


「あの……」


「心配するな。お前の不安の種であるエルダーマイアについては任せてほしい」


「琢磨君達を……救って」


 それだけを告げ、稀良螺もまた、チキサニを追って去って行く。

 残ったのはムイムイとペリカとマイツミーアだ。

 彼女達は軍を率いて勇者戦に向うことになる。

 そういう運命らしい。黒の聖女に聞いた未来には、彼女達の働きがいるらしい。

 出来ればあまり戦ってほしくないんだけどな。


「ムイムイは第一部隊を率い南へ。ペリカは第二部隊と北、マイツミーアは第三部隊と共に東を頼む。撤退して来た各方面部隊と合流しながら敵を叩け。おそらく、いや、絶対に勇者と対峙することになる。無理はするな。絶対に勝てない存在だ。下手に闘おうとせず奴らが出てきたら即座に退け」


「ひ、退いていいの?」


「ムイムイの心配ももっともだ。奴らが魔王城に押し寄せるのはほぼ確定している。よって全軍が出払った後は本拠地を移動させる。場所はエルスターク。ロシータの屋敷を緊急の魔王城として使用する。撤退した部隊は王城に向わずここに集結せよ」


「「「はっ!」」」


 ムイムイとペリカが敬礼を、マイツミーアが俺から飛び退き二人に並んで同じく敬礼を行う。


「全員、自分の命優先だ。最悪味方を壁にしてでも生還しろ」


「あまりそれはやりたくないけど。了解です陛下」


「では、準備に取り掛かります」


「頑張りますにゃ!」


 ムイムイ達も去って行くと、一人、謁見の間に取り残された。

 再び息を吐く。


『どうしたよ相棒』


「そういやお前が居たな……いや、少し疲れたな、と」


『まぁ、武闘大会からこちら結構な急展開だったからな。いろんな事が一気に変わった』


「全くだ。心が休まる事が無かった。それに……」


 女神に勇者にディアのカード化。若萌の秘密に黒の聖女の勅令。

 未だに全部夢じゃないかと思えるほどの濃密なイベントの嵐だった。

 それでも、これは現実なのだ。頭が痛いが俺が何とかしないといけない現実なのだ。


「なぁ、ナビゲーター」


『ん? なんだ相棒?』


「俺は、正義の味方になれるかな?」


『もう正義の味方だろ。まぁ、俺には正義とかよくわからんがな。味方するのはいいけど結局正義ってなんなんだ?』


「こっちが知りてぇよ」


 ほんとに、正義って何なんだろうな? 人族にとっちゃ俺らが悪で、魔族にとっては人族が悪で。両方に正義がある。俺はそのうちの片方に肩入れして、己の正義の思うままに力を奮ってる。

 これでいいのかと何度も疑問に思ったりもするが、正義としての拠り所を揺らがせると自分の力が減衰してしまう。だから俺は俺が正義だと思うことにしている。


 でも、やはりまだ迷いはある。純粋に自分を正義だとは言い切れないし、相手が正しいと思うこともある。それでも俺は……俺の正義で敵を駆逐するしかない。

 それしか、できないんだ。


 さぁ、始めようジャスティスセイバー。

 女神に踊らされる世界を救うために、己の正義を貫こう。

 ラナリアの一員として、首領の勅令のままに、魔族の正義のために、俺は一人の剣となる。

 女神を倒すために……赤き魔王の降臨だ。



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