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魔王VS女神の勇者3

 それは悪鬼と呼ぶべきか、まさに獣としか思えない存在だった。

 闇の靄が噴き出したと思ったら、ジャスティスセイバーを包み込んでいる。

 フー、フーと荒い息使いをしながら、猫背気味に不気味な魔王がゆっくりと視線を敵へと向ける。


 次の瞬間、爆ぜた。

 地面が盛大に陥没し、土が空を舞う。

 一瞬前まで存在していたはずの魔王はその場から消え去り、土が放物線を描いて地面に落ちる時にはもう、眼前まで迫られたレシパチコタンの暗殺者が悲鳴と共に切り裂かれていた。


 回転斬で暗殺者の一人を切り裂いた魔王は地面に着地と同時に剣を捨てて腕を伸ばし、両側に居た暗殺者の頭を掴んでカチ合わせる。

 ゴッと凄まじい音と共に骨の砕けた音が響いた。

 力無く崩折れる男達がアイテム化していく。

 地面に落下したセイバーはいつの間にか消え去り、魔王の手に新たなセイバーが作られる。


「こ、殺せ! 怯むなッ」


 暗殺者たちが焦った声を出すが、それに反応した魔王が跳ぶ。

 矢の射線を縫うように避けて接近した彼は、指示を出した男の顔をアイアンクローで掴み取ると、地面に投げ捨て、セイバーを突き刺しトドメを刺す。顔面を破壊された男の身体がビクンと跳ねた。


 そこから先は、まさに野獣だった。

 暗殺者たちが必死に応戦するが、瞬く間に殺されて逝く。

 大悟も、そしてエルダーマイアの勇者たちも動くことすら許されない程の凶悪な暴走。

 呆然としている間に最後の暗殺者が魔王の腕で持ち上げられる。

 首を掴まれ持ち上げられた男が必死に身体をばたつかせるが、次の瞬間、ゴキャリと首が折れ曲がり、痙攣しながら動かなくなる。

 そして……暴走魔王は次の獲物に視線を向けた。


「ひぃっ!?」


 初めて意志を見せるように今まで人形のように壊れた目をしていた光子が悲鳴を上げる。

 かつて無い恐怖を感じて感情が蘇ったようだが、今戻ったのは彼女にとっては不幸だったかもしれない。

 ダンっと地面を蹴りつけ走る魔王。

 恐怖に身を竦ませながら、魔王を殺すという真名命令を忠実に守ろうとする光子の身体は既に詠唱を始めていた。


「逃げろ光子ッ!」


 十三が走る。しかしその速度では魔王の進攻は止められない。

 光子の頭にセイバーが降り下ろされる、その刹那。

 影が割り込んだ。


「はっ。随分とまァ凶暴な暴走剣士だな」


 鼻で笑って魔王の進軍を止めたのは、女神により選ばれ、この地に現れし勇者の一人。


「初めましてか魔王さんよ、俺は風見信也。お前を倒すために女神様に選ばれた勇者って奴だ」


 魔王のセイバーを剣で振り弾く。

 魔王はセイバー共々弾かれ、空中を回転しながら地面に着地する。


「おいコラテメェ! 俺のゲイボーグどこやった!? あれ折角作ったんだぞ!」


「名偉斗の失敗面、アレ木の槍を赤で塗っただけの奴じゃん。また作ればいいと思うよ」


「つかいちいち赤く塗るとかバカじゃないの」


 ぞろぞろと、森の間から現れる女神の勇者。


「あ、あんたたちは?」


 思わず聞いた大悟に、彼らはニヤニヤと笑みを浮かべる。


「クク、知りたいか三下君。俺は中原名偉斗。青の槍使いと呼んでくれや」


「ソレはただの失敗面と言えばいいと思う、僕は風見永遠。そっちの信也兄ちゃんの弟なんだ。カード使いって奴かな」


「私は蛭子和美。職業は……断罪者とでも言っておきましょうか。ああ、真名縛りは無効よ。私達は魔王を倒すためだけにいろいろチート機能貰ってるから」


 クスクスと笑う和美は綺麗な女性と言うよりはキツい顔の女性と言えるだろうか。サディスティックな笑みを浮かべて光子を見る。


「ふふ、可愛らしいお嬢さんもいるみたいだし、お姉さん、頑張っちゃおうかしら?」


「悪いがお前達は黙って見てろ。こいつの相手は、俺だ!」


 信也が告げると同時に魔王が跳ぶ。

 地面を穿ち、弾丸のように迫る魔王を、信也は迷いなく剣で受け止める。


「ハハッこれだ。こういう闘いに憧れてたんだ。そら魔王、もっと俺を楽しませろッ!」


 剣を押しだしセイバーを弾く。たたらをふむ魔王に一歩踏み込み返しの一閃。

 バックステップで回避した魔王が着地と同時に再び突撃。

 強烈な一撃を叩き込むが、信也はそれを難なく受け止める。

 今度は打ち合うことなくサイドステップで横に跳ぶ魔王。


 横に逃げると思わせフェイントでさらに剣撃が迫る。

 しかし、それも信也は軽く受け止める。

 その表情は真剣な顔から、徐々に面白く無さそうな顔へと変わっていった。


「なんだよこの攻撃。魔王ってぐらいだしもうちょっと強い斬撃して来いよ。なんかこう、萎えるな。つか魔王弱くね?」


「兄ちゃん、僕等チート能力貰ってるから、魔王のレベル5000くらいじゃん。MAXステータスの俺らと比べちゃだめだって」


「あー。そうか。チート過ぎるってのもちょっと考えものだなぁ。そら、よっ」


 セイバーを弾き、難なく魔王の心臓を穿つ。

 がっと声が聞こえたが、信也は気にすることなく魔王を貫いた剣を振りあげ、素振りの要領で振る。

 剣からすっぽ抜けるように刺殺された魔王の遺体が真正面の木にぶち当たって落下した。

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