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魔王軍逃走

「クソ、最悪だっ」


 思わず毒付く。

 走る俺の背後からは光子が迫ってきている。

 魔法で脚力強化しているらしく徐々に距離が詰まる。

 間もなく追い付かれるだろう。面倒臭い。


 まさかこんなことになるとは想定外もいいところだ。

 女神に聖女の予言がバレてるとは聞かされていたが、ここまで酷い……待て。

 若萌の奴、預言書が意味無かったと言ってたな。裏切り者がいるとも。

 だけど、女神がどんな行動を行うかは言わなかった。未来でこの場面を体験しているのなら言って来るはずじゃないのか? なぜあいつは言わなかった?


 もしも言ってくれてれば逃走経路も把握しておいたし、ディアに張り付こうとしたカードを切り裂くことだって出来た筈だ。

 ズオゥやゴルドン、ロロンも犠牲になる必要はなかった。

 まさか、いや、信じたくないが……若萌が、スパイ?

 ありえない。ありえてほしくない。でも、帰ったら確認しなくてはならない。何故この状況を教えなかったのか。


「魔王ッ」


 チッ。

 思わず舌打ちしながらセイバーを召喚して火炎魔法を切り裂く。

 やっべ、魔法だった。迫って来たから思わず剣振ったけど剣撃じゃなかった。

 運良く切り裂けたから良かったけど、光子は剣士じゃなくて魔法使いタイプだったな。


 ハンドフリーシールドを展開して防御力を高める。

 その瞬間、カンッとシールドが何かを弾いた。

 落下した物を見れば、矢が床に落ちている。


「クソッ外した!」


「下手クソめ。俺に任せろ」


 レシパチコタンのチキサニ暗殺部隊だろう。

 今この時に来てほしくなかった。

 ダメだな。弓矢相手じゃこのシールドは小さすぎる。


「行くぜ、ジャスティス。守るぜ、セイバー! ギルティーアーマー!」


 使うのは久しぶりだ。滅多に使わない正義力で纏う光の鎧。

 矢がシールドを逸れて突き刺さりに来たが、アーマーに守られ弾かれる。

 魔法攻撃もなんとか大丈夫そうだ。


 闘ってる暇はない。

 残念だがここは脱出優先でいいだろう。

 追っ手を無視して必死に走る。

 入口付近は逃げ出す一般人でごった返していたが、むしろこれはイイとばかりに人ゴミにまぎれる。


「クソッ、見失った」


「どこ行った魔王!?」


 変身を解除して紛れた御蔭でレシパチコタンの面々も、光子も俺が分からないようだ。

 逃げる一般人に紛れてそのまま脱出する。

 クソッ、覚えていろよ女神。このままじゃ済まさん。絶対にッ。


 物陰で再変身を行い魔王城へと向かう。

 馬車は若萌達が使ったらしいのでないのが地味に痛い。まさかこの逃走を見越して?

 いや、そもそも若萌が敵だと確定した訳が無いのだ。

 だが、今まで萌葱の娘というだけで無条件で信じていたが、あいつも信頼できるかどうかは分からないかもしれない。


『全員疑ってたら切りねーぞ』


 黙れナビゲーター! テメーが信頼できない代表格だろうが!


『セイバー、あっちだ。急いで向え!』


 なんだ? 急に真剣な顔に……何かあるのか? 

 最短ルートからは外れていたのだが、俺は言われるままにそちらに向かう。


「あ、陛下!?」


「ペリカ、テーラ、ホルステン、メイクラブ、ベー、パリィ!」


 どうやら逃走中だった本戦出場組に合流出来たらしい。

 珍しいナビゲーターがナビしやがった。


「陛下、来ないでくださいっ!」


「っ? どうした!?」


 来ないでと言われても行かない訳にはいかない。

 すると、ペリカが高速で飛んで来た何かを弾く。

 種?

 植物の種だ。


「ええいクソッタレ! なぜこいつが邪魔してくんだ!」


 ホルステンが毒づく。

 それもそのはず。彼らを足止めしていたのは、同じ魔族の一人。バロネットだったからだ。

 そう言えば、若萌がバロネットがやられたと言ってなかったか。

 そしてディアに起こった現象を鑑みれば……カード化されて敵の手に落ちたか!


 そうなると今のところ、いや、おそらくカード化したあの少年を倒さなければカード化は解除出来ないだろう。

 つまり、バロネットの救出は諦めた方が良い。

 後は、倒すか、逃げるか。

 今後を考えれば……


「行くぜ、ジャスティス。弾けろ、セイバー!」


 俺は正義力を溜めながら走り寄る。仲間、ではなくバロネットに。

 驚く皆を放置して、バロネットへと接近した俺は、迷いなくセイバーを突きだした。


「ギルティーッ、ニルカナイアッ!!」


 正義力で光り輝くセイバーがバロネットを貫く。

 即座に引き抜き飛び退く。

 思わず怪人を倒した時のように背を向け中腰で剣を振り切りポーズを取ってしまう。

 その瞬間、俺の背後でバロネットが爆散した。


 想定外の光景に、ペリカ達が呆然と口を開けて見守っていた。

 バロネット。すまん。だが、絶対に仇は取る。

 女神の勇者……この借りは、必ず返すッ。

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