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続・危機感しかない昼食会

「そういえば……皆さん不幸の神なんて噂話知ってます?」


 シシルシの話を遮るように、矢鵺歌が別の話題を提案してきた。

 皆居心地が悪かったようで、直ぐにそちらに話題を転換させる。


「おお、聞いたことあるな。我が国の悪徳代官と越後屋が結託して行っていた悪行を露呈させ売られかけていた娘を救ったそうだ。嵐と共に現れ、嵐と共に去る不幸を語る神だろう?」


 ハーレッシュ王がそんな話を聞いたぞ。とばかりに告げる。


「我が国にも逸話があるぞ。なんでも雨が一カ月も降らず干上がっていた村にハリケーンに乗って現れ、地中深くに落下したそうじゃ。しばらくすると地鳴りと共に地下水が噴出し、今では緑溢れる噴水湖になっているとか。アンゴルモアと名乗ったソヤツは住民がお礼を告げる間も与えず再びハリケーンに乗り立ち去ったと聞く」


 ルインタ女王、それ、乗ってたわけじゃなく攫われてただけだと思うよ。基本竜巻は乗り物じゃなくて自然災害だから。


「ふん。あの半身機械のまがまがしい悪魔か。皆も知っておろう。我が国の嘆きの洞窟を破壊し、凶悪な魔獣に乗りながら噴水に乗って地下より現れ竜巻に乗っていずこかへと消え去った悪魔だ。あの者、キマイラと思しき魔獣を我が神殿に落下させてきたのだぞ! 教会の先端に突き刺さったから良かったものの、少しでもずれればアレが神都を襲い我が国が壊滅していたところだ! どいつもこいつもええい忌々しいっ」


 若萌が言ってた嘆きの洞窟での出来ごとの結末か。そうか。あのレベル8000越えのキマイラは死んだのか。

 まぁ、不幸の神に触れられて死にたくないと暴れてしまえが不幸にも死んでしまうらしいからな。獣には心から死にたいと思って逆に回避するなんて芸当は出来ないだろうし。


「所変われば悪魔か。コーデクラでは竜巻と共に現れた神が空から魚の雨を降らし国に恵みを齎したのだがなぁ」


「ルトバニアではエルフのいた森からエルフを駆逐してくれた御蔭で魔王国との国境に砦を作ったぞ? まぁ、直後に和平を結ぶことになった訳だが」


 そのエルフたちは今ディアの森で幸せそうに暮らしてるけどな。

 こうしてあいつの所業を考えて見ると、結構な国々でやらかしているらしい。

 やはり、実際に見てはいないがあいつがこの世界に来てると思った方が良いな。皆にあいつの対処方法伝えといた方がいいだろう。

 万一出会って不幸押しつけられたらかなわんし。

 そもそもアイツ必殺技の責任転嫁で離れた相手に不幸押し付けることもできるからな。一応味方だからといってどんな不幸で巻き添え喰らうかわからんし。


「で、最新情報はどこの国なのかしら?」


「ネンフィアスにはねーのかその辺りの噂?」


「我が国に目撃例はまだないな。魔王国はどうだ?」


「いや、ないな」


 嘆きの洞窟で若萌たちが会っているが、エルダーマイアの前でいちいち潜入してましたがなにか? などと火に油を注ぐ必要はないだろう。


「我が国に、竜巻から落下して来た男なら保護している」


 レシパチコタン代表ウェプチが口を開く。

 おそらく奴だ。気付いた若萌がニヤリと醜悪な笑みで笑う。


「その男。ネンフィアスに連行する事は可能かしら?」


「……無理だな。彼に触れた男が不幸に見舞われ死んだ。何も無い空から突然岩が降って来て頭を直撃だ。男が俺に触ると不幸になると叫んでいたからもう、他の者は触れようとすらしない。そんな状態でどう連行すればいい?」


「どうとでもなるでしょっ」


 随分とアンゴルモアにご執心だな矢鵺歌。惚れたか?

 いや、逆か。怒りを静かに溜めこんだ目で今は居ないアンゴルモアへの復讐を誓っているように見える。


「そうは言われましてもな。そもそも国交もないネンフィアスに捕虜でもない男を連行する必要はないでしょう。それとも、侵略してきますかな?」


「貴方……っ」


 ぎりと唇を噛みしめる矢鵺歌。彼女が再びアンゴルモアと相対するのは難しそうだ。

 そもそもあいつが一所に居続けるとも思えないし、直ぐに竜巻で飛び去ることだろう。


「ふっ。まぁ確かに我が国とそこの小国に国交はないな」


「小国だとっ」


「だが魔国を通せば護送は可能であろう? なぁ魔王」


「貴様ッ! 我が国を小国と言ったばかりか無視するかっ!」


 ネンフィアス王、あいつなんか剣引き抜きそうな顔してるぞ?


「落ち付けレシパチコタンの王よ」


「ルトバニア王ッ、しかしこの男は我が国をっ」


「そもそも侵略国家のネンフィアスからすればどこも小国扱いよ。こやつは自分の国以外は占領するための国としか見ておらんからな。小国扱い程度でいちいち目くじらを立ててもしょうがないこと。貴様のような小国の王に言われたくはない。くらいの返し方で丁度良いくらいだ」


「我が国を小国と言うかルトバニア王。いくら魔王国と最初に同盟した国だからと、あまり頭に乗るなよ?」


 ネンフィアス皇帝、各国に噛みつき過ぎだ。

 魔族とは和平を結べたはずなのに同じ人族同士で争い出しそうだぞ。どうすんだコレ。俺、こんな食事会嫌だ。

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