最悪の結末
爆散にご注意ください
「あれ? なん……で?」
ずるり、若萌が離れた瞬間剣が引き抜かれ、大悟の身体が倒れ去る。
呆然とした顔の若萌は、自分が何をしたのか理解できずにカランと剣を取り落とした。
「ぶひひひひ、勇者を奴隷かぁ、これは初めての試みだがよい、ぶひひ、河上若萌、命れ……い゛ごっ!?」
続けて何かを言おうとした豚貴族は、しかしそれ以上の言葉を吐けなかった。
先に若萌から貰っておいたセレスティアルフェザーを貴族の首に突き刺してやったからだ。
予想通り過ぎて反吐が出る。
自分が何をされたか理解できずに倒れた貴族はかひゅーかひゅーと喉で息をする。
漏れ出た空気の音が、彼がもう長くないことを如実に語っていた。
何か叫んでいるようだが声が聞こえない。
致命的なことでも喋られたら大問題だしこのままトドメを差させて貰う。
呆然とする皆を放置して一歩前に出た俺は、躊躇うことなく剣を掲げ、倒れた豚に突き降ろした。
次の瞬間、現れたアイテム入手ダイアログを迷いなくYES選択で押す。
「い、いやあああああああああああああああ!?」
莫大な金と幾つかのアイテムを入手。そして絶叫を上げた奴隷少女に皆の視線が向った瞬間だった。
バチュン、と奴隷少女が弾け飛んだ。
返り血に濡れた玲人がへなへなと尻餅を付く。
何が起こったのか全く理解できない。なんだ……今の?
「……あ、大悟君」
ただのろのろと、思い出したように矢鵺歌が大悟のアイテム入手ダイアログのNOボタンを押す。
しばらくして、再びダイアログが出現。60と表示された文字がどんどん減っていく。
もう一度NOを押すと再び60に戻った。どうやら秒数を露わしているようで、1分経ったら自動的に死亡が確定するらしい。
「サダス、大悟様を教会へ、絶対に死なすな!」
「は、はいっ!」
「矢鵺歌さんも付いて行って下さい! 仲間が次に死んだ時どうすればいいか一人でも知っておいて頂いた方がいい。さぁ急いで!」
未だ夢から覚めやらぬ面持ちの矢鵺歌を連れて兵士の一人が大悟を連れ去って行く。
「勇者様方。ひとまずは城へ」
「あ。ああ。おっさん。今の、俺が貴族を殺したから奴隷は死んだのか?」
「おそらく。真名を使った命令で自分の死と共に爆死するように命令していたのでしょう」
なんだ……それ?
つまり、真名を知られればそいつの言う事聞くしか出来なくなって、死ねと言われれば簡単に殺されるってことなのか?
なんだ……それ?
「しかし、勇者様。躊躇なく貴族を殺されましたな」
「悪いがこの国に在籍する民衆ではないのでね。身に降りかかる火の粉は払うべきだろう。そもそも勇者にエルフ討伐させたい国のくせに奴隷にしたり同じ勇者を殺害させたりして許していていいのか?」
「……貴族、ですから」
貴族なら何してもいいってのかよ。ふざけてる。
「しかし、これであなた様は犯罪人となってしまいました」
「ん? 犯罪人?」
「はい、殺人を犯した場合殺人数という記録がステータスに出て来まして、どんなに隠そうとしてもこれを隠す事はできないのです。つまり、人を殺した記録は絶対に無くなりません。そして、冒険者ギルドや商業ギルドなど、表舞台の仕事の殆どが殺人者を受け入れようとは致しません」
「だが、襲われて反撃の際に野盗を殺しても殺人になるんじゃないのか?」
「無抵抗の人間を殺した場合だけです。真名を奪われて殺しを行った場合でも付いてしまいます」
つまり、俺も若萌も人殺しってわけだ。
未だに青い顔の若萌の肩を抱いて歩きを促す。MEYもさすがにこの場に留まる気はないようで、慌てて俺達の後を付いて来た。
残された玲人は腰が抜けているのか、慌てて俺達を追おうとして無様にこけ、兵士に背負われていた。
俺達はそのまま一直線に城へと戻り、いつもの会議室で復活した大悟と矢鵺歌が戻ってくるのをまった。
「うぅ、酷い目にあった……」
「全くだ」
風呂に入って来たらしい玲人と、大悟たちが同時に戻ってきて、ようやく今回の反省会が始まる。
事情を知っている兵士二人を護衛にして俺達六人はこれからの事について話し合う事にした。
最初の議題は真名と奴隷についてだ。
とりあえず、女性陣たっての希望で玲人と大悟には真名を使って命令し、若萌の真名を口にしないようにさせた。
応急処置ではあるが女性陣から言われた以上俺が止めに入ることは出来ない。自分たちが命令されることへの不満はあるだろうけど、その辺りの反論などは俺を含めない時にやってくれ。
「んじゃぁ、まぁ気を取り直して、あの貴族たちどうなったの。僕が若萌さんにその、殺された後で」
そして話は俺の殺人について移行した。
いや、俺は若萌を救ってアイツの奴隷にされるのを防いだんだけど、悪を倒しただけだぞ? なんで皆異物を見るような眼を向けて来るんだ?




