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武闘大会朝の部

「まぁ、隣に座ると良い」


 玉座と思える椅子に座ったルトバニア王の隣にある座席に座る。

 貴賓席と言う奴だろう。周囲にも王族用の椅子が幾つもあり、全ての王族達が座っていた。

 中にはウェプチやらネンフィアス王の姿も見受けられる。そして、ネンフィアス王の隣に座る矢鵺歌の姿も。


「居るわね、矢鵺歌」


「若萌、気を抜くなよ?」


 今回俺の隣に座るのはユクリであり、夫婦やら婚約者の位置となる。

 若萌はユクリの付き人のような役割となり、座ることが出来ないようで、彼女の側で佇むことになった。

 俺の方は稀良螺とムイムイが居るのだが、ムイムイの護衛対象は俺ではなく稀良螺である。

 そう思うと俺を守る奴実質……いなくね?


「ふふ、我が守ってやろうではないか」


 ああ、そうだった。俺の護衛として横に居るのはラオルゥとディアである。ついでにルトラも立っている。魔神三人が立っているためか俺もユクリも居心地が悪い。

 そしてルトバニア王の方には近衛兵が四人、その横にはソルティアラが座っており、護衛の一人が大悟である。

 大悟……立たされてやんの。


 先程部屋の一室で話をしたルトバニア王なのだが、大した話ではなくただの確認事項だったので直ぐに話が終わってしまった。

 で、どうせなら一緒に見るべきだ。みたいなことになったのでこの配置になってしまっている。

 今見学しているのは人族のみで闘っている決勝トーナメントだ。

 剣撃に魔法。様々なものが飛び交っているし、結構派手だ。

 それでも、平均レベル400ぐらいの闘いということもあり、魔族の練習程の激しさすらも無いように思えてしまう。


 全体的にレベルが足りんな。

 まぁ、今の人族にソレを求めるのは酷か。

 今までは70ぐらいが上限だったのだからこの闘いでも一般人からの驚きはかなりの物だ。


 午前中の間に決勝まで駒が進み、優勝者はなんとギーエンだった。

 エルダーマイアから勇者琢磨が出て来ていて決勝に来てたんだけど、ギーエンさん勇者に勝っちまったよ。

 ノーマンデ国王がよくやった! と思わず立ち上がって拍手していらっしゃった。隣に居たエルダーマイアの猊下さんが物凄く悔しげに唸っている。


「いやー、惜しかったですな猊下」


「ふん。まさかあれ程の逸材がノーマンデにいたとはな。勇者も未だ発展途上。すぐに追い抜くわっ」


 そう告げる猊下の側には、目から光を失った人形のような少女が一人。

 稀良螺はソレに気付いて胸を締めつけられたような顔をしていた。


「稀良螺……」


「大丈夫。私は平気です。でも、あの顔を見てしまうと……貴方に真名を奪われなかったら、私もあの横に居たのかと思うと居たたまれないですね。でも、それよりも……」


 彼女をどうにかして救いたい。

 そんな思いが透けて見える。でも、現状できるのは、あの猊下を殺す事だけだろう。

 それは、彼女の望むところではない。流石に人を殺してまで救いたいとは思わないのだろうな。俺とは違うんだ。俺なら……おそらく、いや、確実に、猊下を悪だと断罪すれば殺せるだろう。

 ただ、俺自身真名で縛っている以上あの少女を真名で縛っているからというだけでは悪だと認定出来ない。


「午後からは魔族の闘いだ。ギーエンの奴もエントリーしてるのかな?」


「魔王よ。人族からの参加者はギーエン、ゲド、大悟、伊丹十三、ネンフィアス王、青の槍使いだ」


 なんだ青の槍使いって? というか、ネンフィアス皇帝、まだ魔族と闘いたいのか。

 出場者が知り合いばっかだな。実力者だから限られるのかな? というか、ネンフィアス帝国のゲドさんが出場してんのは何故だ?


 これから一時間程の昼休憩があり、食事があるそうで、一般人は自分の場所に目印を置いて食事に向いだす。午後は魔族戦ということもあり、恐怖半分期待半分ということらしい。

 俺達は王族同士の会食らしく、会場を後にして廊下を少し直進した場所に用意されていた。


 屋台に向えないというのがちょっと切ないが、並んだりする必要が無いのがいいよな。ちなみに俺は今日も飯抜きだ。まぁこのスーツ姿の場合食べる必要がないようなのが救いだが。

 なので、俺の場所にはチキサニが来る予定なのだが……あいつまだ戻ってきてないんだよな。シシルシとどっか行ったきりなんだけど、どこに……あ、居るし。


 すでに食堂で待っていたシシルシとチキサニ。そこ、俺の席じゃねチキサニさん。

 マイツミーアが俺を見付けて苦笑いしていた。

 ルトバニア王がなんか言いたそうだったけど見て見ぬ振りしたぞ今。


「赤いおぢちゃんたちおっそーい。シシー待ちくたびれたっ」


「クアニ待ってた! 魔王、早く座る。クアニその上座る。オプケする」


「するな。アホか」


 席を立って促して来たので座ってやるが、その上に乗って来たチキサニの後頭部にチョップしておく。

 ブッ。うわっ、コイツ本当にやりやがった。


「赤いおぢちゃんくちゃい」


「シシルシさんよ、これは俺じゃなくてオプケ娘の臭いだ」


「クアニ臭くない」


 だったらするなよ。王族の皆様が笑えばいいのか引き攣ればいいのか分からず意味不明な顔をしてるじゃないか。

 あとシシルシ、若萌が座れなくて困った顔してるぞ。

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