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武闘大会会場入り

 周囲の人々が姦しい。それはそうだろう。何しろ今回行われるルトバニアの武闘大会には魔族が参加するという噂なのだ。恐いもの見たさに各地からいつもより多くの見学客が来ている。

 今回俺達と骸骨馬車に乗っているのは10人の出場者。人間側の魔族と闘いたい奴が六人も居たらしいのでこちらで用意する魔族はこれだけでよかったらしい。ペリカとハゲテーラを含め、中央軍からライジングウルフという種族のパリィ君。ホルステン、バロネット、メイクラブが出場予定。


 さらにゴブリン族からオーガのズオゥと猫人族からロロン、竜人族からゴルドン、蟻人族からべーが出場するらしい。

 魔王側での出場者は以上で、他に俺と若萌、稀良螺、チキサニ、マイツミーア、ムイムイ、ルトラ、ディア、ラオルゥ、ユクリが一緒に居る。

 ギュンターたちは魔王城でエルダーマイアの侵略やら何やらに備えるらしい。


 骸骨馬車を降りると人垣が出来ていた。

 ルトバニア兵たちがなんとか道を作って俺達を護衛する。

 おっと、ヤバいの居たぞ今。

 魔王覚悟。とか言いながら突っ込んできた男が俺の前でルトバニア兵に捕えられ連れて行かれる。

 本当に暗殺とかあるんだな……まぁ、魔王なんだから仕方無いっちゃ仕方無いんだが……


「来たか誠……」


「赤いおぢちゃんおっはー」


 闘技場に入ると、エントランスの受け付けカウンター横に大悟とソルティアラ、そしてシシルシが待っていた。

 久々に会うシシルシなのだが、報告で毎日のように話をしていたせいかそこまで離れていた感じがしない。

 てひーっと笑みを浮かべたシシルシは、俺の周囲を興味深そうに見る。


「赤いおぢちゃん。少し見ない間に女の子沢山だねー。はーれむ?」


「いや、なんか気付いたらこんな感じにな。こいつはチキサニ。レシパチコタンの巫女だ」


「話は聞いてる。魔王のコシマッ、チキサニです」


「こしまつ? 腰元で待つ人? んー、あ。お嫁さんだね!」


 ちょっと待てシシルシ。なんでそんな適当な推理で意味を当てるんだ? お前天才か。

 俺は後でチキサニから聞くまで全部理解できなかったぞ。オソマ以外。


「シシーはね、シシーなんだよ。よろしくね?」


「あなたピリカメノコ! ライバルですね! エアニ ウエネウサル!」


「よくわかんないけどシシーが案内したげるね、こっちこっち!」


「マイツミーア。スマンが……」


「はいですにゃ。彼女のお守はお任せですにゃ」


 シシーに連れられてチキサニが走り出したので護衛のマイツミーアも慌てて後を追って行く。


「王が待ってる。つい先日王族全てに来たアンタからの危険宣言について聞きたいそうだ」


「分かった。でも選手の方は?」


「大丈夫だ。そこの男が案内してくれる」


 見れば役員らしい腕章を身に付けた男がにこやかに立っていた。彼に着いて行けばいいらしい。

 選手として出場するメンバーは控室に向って貰うことにした。

 既に人族のみでの武闘大会は昨日のうちに予選を終えているらしく、本日は決勝トーナメントの16名が闘うらしい。その後、魔族を交えた闘いがあるそうだ。

 なのでメンバーの闘う順番は午後からであり、午前中は安全上の都合でずっと待機になるらしい。

 頑張れペリカたち。


 俺と若萌、稀良螺、ムイムイ、ルトラ、ディア、ラオルゥ、ユクリが大悟とソルティアラの後ろを歩く。

 勇者と王女の後ろを歩く俺達に行き交う人々が思わず二度見して来るが、悪の強いメンバーは稀良螺を残して素知らぬ顔で進む。

 稀良螺だけが庶民感情を前面に押し出し小さくなって恥ずかしそうにしていた。


「それで、ネンフィアス王たちは?」


「ああ。既に王族席で見学してるよ。昨日から来てたし、矢鵺歌も来てる。それと……エルジーから預言書について教えて貰ったけど、アレ本当なのか?」


「エルジー、もう帰ってやがったのか。まぁいいや。一応本当だ。ただ、どうも女神の先兵が部下に紛れこんでるらしくてな。若萌が配った預言書の写しに手を加えてあるらしい。戦争が起きた後になるが、向こうが罠に嵌ってくれると良いんだがな」


「戦争確定かよ。和平折角結んだんならなんとかならないのか?」


「したくても向こうが何かしてくるだろ。女神が居る以上この世界に和平は難しいな」


「矢鵺歌が……信じたくない事実だ。俺達は魔王を倒して世界を平和にするために呼ばれたんじゃなかったのかよ」


 大悟は本当にぶれないというか……利用されてるの気付いてないのか?

 王からもソルティアラからも女神からさえも。いや、気付いていても勇者で居続けるつもりなんだろうな。損な役回りだ。




 武闘大会会場のとある一室に、その女はいた。

 背後では剣を振るう一人の男。

 そして彼女の前には……


「ふんっ、ふんっ。ふふ。腕が鳴る。大手を振って魔族と闘えるのだからな」


「ユクリさんと闘っただけでは飽き足りませんか皇帝陛下?」


「ふっ。魔法特化の魔王の娘では満足に闘えんかったわ。やはりあのマイツミーアとかいう小娘並みの身のこなしを持つ魔族とガチバトル。それこそが我が望みよ。お前もやらんのか矢鵺歌よ」


「ええ。やる訳ないでしょう。しかし。彼らは気付いているかしら?」


 彼女の手には、数枚の羊皮紙。ディアリッチオが魔法で写した若萌が書いた文字がびっしりと書かれている。


「黒い聖女の予言。ふふ。私が女神とバレたのは残念だけど。まだまだアバターで楽しめそうね。うふふ。この予言書なんて全く役に立たないってこと、教えてあげなくちゃ。ねぇ、貴方達」


 矢鵺歌の目の前にいる者たちがニタリと笑みを浮かべた。

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