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奴隷と真名の意味

 国へと戻って来た俺達は、貴族街へと帰還を果たす。

 兵士達が今日も何事もなくて良かったみたいなことを門番と話し合い、今日の夜飲みに行く約束をしていた。

 こういうのを見ると兵士達の日常が垣間見れていいのだが、その周辺を歩く貴族がなんかゴテゴテした装飾でイラッとくるな。


 デブったおっさんが太鼓腹揺らしながら豪奢な服を着て従事たちを従えながら歩いていたり、豪華過ぎる馬車に乗ったご婦人がクジャク羽の扇子で仰ぎながら俺達の前を横切っていく。

 上流貴族っていうのはクソばっかだな。

 こんな金で着飾るくらいなら下町の下水整備にでも金使えよって言いたくなってくる。


「そろそろ夕暮だから貴族の方々もお帰りの御様子ですね。皆様。絶対に貴族とはトラブルになりませんように。貴族側によっては国王陛下といえども反論出来ない存在もおりますゆえ」


 貴族とトラブルになったら自己責任で頼む。と兵士が告げ、はぁっ? と玲人が怪訝な顔をする。

 うん、こいつが一番の問題児だな。

 貴族の物言いに一番に切れて問題起こしそうだ。


「くれぐれも、くれぐれもご注意ください。我々も一応兵士であるため貴族相手でも捕縛許可は頂いておりますし、勇者様優先ではあるのですが、上位貴族の方には国家転覆を何度でも出来る力を持つ存在がおります。特にあちらを歩いていらっしゃるご婦人。ネヴァスティアール家の奥様でありまして、彼女の機嫌を損ねた男爵家が先日取り潰しになったり、お茶会で無作法をした伯爵家の娘が修道院に入れられたなどという噂もございます。勇者様方であろうとも何がどうなるか分かりません」


 女のヒステリーは怖いってやつか?

 違う気もするが貴族に関わるのはあまり褒められたものではないらしい。

 俺としても貴族には関わりたくないのでそうそう問題は……


 次の瞬間、俺は思わず二度見していた。

 デブった豚のようなおっさんが下卑た顔をしながら手綱を引いている。その背後に手綱に繋がれた首輪をした少女が一人。

 服装はワンピースだろうか簡素な白い薄着一着、裸足で歩いている。


 どう見ても貴族と奴隷の図だ。

 奴隷である。

 この国は、奴隷制度もあるのか!?


「おお、奴隷だ奴隷。玲人、奴隷だよ!」


「きゃんきゃん喚くな。うるせぇんだよメガネ」


 テンプレ要素を見付けた大悟が思わず叫ぶ。

 辺りに響く声だったため、貴族と奴隷が歩みを止めた。

 いいモノ見つけた。といった顔で貴族がこちらに近づいて来る。


「ぶひひ、なんだそこのみすぼらしい男。奴隷に興味あるのか」


 先程注意されたと言うのに、貴族と関わることになった大悟があれ、ちょっとヤバい? みたいな顔しているがもう遅い。俺達はすでにこの貴族と関わってしまっている。

 貴族は醜悪な笑みで女性陣に視線を走らせ嫌な笑い声を上げる。


「ぶひひ、そこの兵士、この者らは罪人か何かかね? ならばワシが奴隷として買い取ろう」


「いえ、フィネガス伯爵様、こちらはエルフ族撃破のためこの地に来ていただいた勇者様方でございます」


「ほほぅ、勇者とな。それはすごい。ぶひひ。ぜひともお近づきになりたいものだ」


 そういいながら視線は女性陣で固定されている。

 そりゃあこの世界にとっては珍しい黒髪少女二人と変わった髪型で色黒のMEY。三人とも容姿は美人の部類にはいるので、男としては嫁にしたい候補だろう。

 そしてこいつは上流貴族。やり方次第で平民を奴隷に出来る実力者。

 そんな奴が勇者をターゲッティングすればどうなるか。……面倒事になりそうなのは確実だ。俺達三人の男は即座に理解し、そして女性陣を守るべくおっさんの視線を遮るように移動する。


「むぅ」


 華のある視界に突如割入る無粋な輩を見てしまい、貴族は面白く無さそうに唸る。

 悪だな。どうしようもないくらいに悪人だ。生かしておけば確実に俺達の害悪になる存在だ。


「貴族の方、奴隷ってどうやって手に入れるんすか!」


 って、こら。大悟の奴女性陣守ろうって気は毛頭ないらしい。

 おっさんもキラキラ眼で見上げて来る大悟にふむ。と考え。醜悪な笑みを向けた。


「ふむ。いいだろう。教えてやらん事もない。その代わり」


 ちょっとこっちに来い。と手招きして大悟と二人で内緒話をし始める。

 これは、マズいぞ。

 俺は若萌に視線を向ける。若干、いや、かなり青い顔をしている。


「若萌、セレスティアルフェザーを貸してくれないか?」


「え、ええ」


 周囲に見えないように俺はセレスティアルフェザーを受け取る。

 内緒話を終えたらしい大悟と貴族が嬉しげにやってくる。


「では奴隷の作り方を教えてやろう」


「は、はい、ぜひ」


「河上若萌、命令・・だ。こやつを殺せ」


 次の瞬間、若萌はアイテムボックスから一振りの剣を取り出す。


「ゲ・ヴァルトザーム・ドゥンケル」


 何かのスキルを唱えながら、大悟の心臓を貫いた。

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