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魔王軍報告会6

「女性として恥ずかしいと思わないんですかっ」


「恥ずかしがる意味が分からない」


 稀良螺は未だにチキサニに喰ってかかっている。

 チキサニは迷惑そうに告げるが、そろそろうっとうしくなっているようだ。


「デリカシーが無さ過ぎるんですよっ、そもそも……」


「イノンチプ」


「なんですって?」


 意味は分からなかったのだろうけど、罵声ってなぜか言葉通じなくても理解出来るんだよな。稀良螺もニュアンスで悟ってしまったらしい。火に油が注がれた。


「オソマ エパウシ!」


「また言った! この変態ッ」


「ムニン マッネ! イポカシ! イペウナラ! ウルキウワッテプ! ウトゥラポッケアイカプクル!」


「何言われたのか分からないのがまたムカツクッ!」


 立ち上がった稀良螺にチキサニも立ち上がり、二人揃って若萌の背後で取っ組み合う。

 チキサニの方が背が低いせいだろう、一方的に頬を両手で引っ張られている。


「もう二度と言わないでくださいっ、はしたない」


「オパタッチェ! エ オソマ! オソマオソマオソマ!」


「お・そ・ま・い・わ・な・い――――っ」


 ぎゅーっと頬を引っ張られるチキサニ。よく伸びる頬だ。しかも罵声が止まらない。

 うん。まぁいいか。とりあえずこいつ等は放置して報告を始めよう。


「じゃあ俺からの報告。和平交渉を各国と行って来た」


「うむ。ではそこの二人は放置してセイバーの報告を聞くとしよう」


 俺の言葉にギュンターが居住まいを正す。


「まずはノーマンデ。酒が好きな国柄らしい。大使館にはドヴェルグ系の誰かを送った方がいいだろう。また酒の流通が主な商売になる。ギュンター達の方で関税は任せるぞ?」


「若萌たちと相談して決めよう。しかし……ノーマンデと和平を結ぶことになるとはな。人族は敵と思ってた昔には考えられんことだ」


「それについては儂も聞きたい事がある」


「ふむ。では後にでも我が寝室で一杯どうだ?」


「付き合おう」


 ギュンターとネンフィアス皇帝がすっげぇ仲良いの。おっさん同士の飲み友か?


「それからカーランで暗殺されそうになったがマイツミーアの御蔭で暗殺は失敗になった。その事を相手に伝えて見るとその場で王を弑して新王と和平を結ぶことになった」


「あの国は王が傲慢だったからな。和平を結ぶことはないと思ったが、そうか、死んだか」


 ネンフィアス王が溜息を吐く。

 おそらく俺が怒って和平結ばなかったらこれ幸いと侵略に向っていたのだろう。領地を増やせなくて残念。といった顔をしていた。


「レインフォレストはなかなか面白い国だったな。俺の知ってる琉球王国に似ていた。ギュンター、あの国に行ったら是非アブラボウズを食べてくれ」


 どきんっと。女性陣の一部が背筋を正した。ん? どうしたねラオルゥくん。


「コーデクラからはアイドルをこちらから送ってほしいということだ。若萌、アイドルプロデュースとかできたりするか?」


「私にそんなスキルはないわよ」


「アイドル育成ですか? ゲームでなら私やったことありますよ。子供の頃ですけど」


 女の子用テレビアニメで幾つかやってる時期にその手のおもちゃを買って遊んでいたらしい。

 それ、アイドル育成したといえるのか?

 稀良螺がふふんと胸を張る。

 今気付いたけどチキサニから罵声が止んでる。涙目でアルカアルカ呟いてるぞ。そろそろ放してやれよ稀良螺。


「じゃぁ稀良螺とMEYさんを交えてアイドル系を組織してみるわ」


「え? 私!?」


「MEYさんなら流行とか可愛らしさとかあざとさを教えられるでしょ」


「あざとさって……」


 今まで借りてきた猫みたいにしていたMEYに話題が振られ、スマホ弄ってた彼女が強制参加になった。


「あとは、ルインタから商人の流通を女性限定。男人禁制にしてほしいらしい。あと大使は蛇型魔族に行って貰おうと思う。向こうで蛇は神聖な者らしい。あと美男子を数人見繕って踊りを覚えさせておいてくれ。ルインタの和睦に男性ユニットアイドルを組織する」


「了解した。若萌、コルデラ、悪いが手伝ってほしい」


 ギュンターの言葉に頷く二人。即決してしまったが会議しなくていいのか?


「レシパチコタンは要求に危険なものはなかったが、御覧の通り、チキサニが亡命させてほしいと言って来たので攫って来た」


「攫ったの!?」


 驚いたのは稀良螺である。

 俺とチキサニを見比べ、え、魔王ってこういうのが好きなの? みたいな顔をする。

 止めろ稀良螺。俺はそんな破廉恥娘好きではない。


 しかし、そんな思いを気付いていないチキサニはふっと鼻で笑って見せた。

 彼氏の居ない稀良螺を上から目線で見上げている。

 なんとも生意気な顔だ。稀良螺もイラッと来たのだろう。折角止めていた頬を引っ張る行為を再び開始する。


 でも、なんか柔らかそうだな。今度俺も引っ張ってみよう。

 本日のアイヌ語

イノンチプ=くそったれとかバカ野郎など愚弄する言葉らしい

エパウシ=~を頭にかぶる

ムニン=腐った・腐る

マッネ=女・雌

イポカシ=みにくい人

イペウナラ=食意地が悪るい

ウルキ=シラミ

ウワッテ=たくさんいる・繁殖する

プ=者・物

ウトゥラポッケ=一緒に寝る

アイカプクル=下手な人

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