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正義の味方の暗黒面

「ああ、やっと戻って来やがったか」


 俺と若萌が森から出ると、既に集まっていた六人の視線がこちらに向いた。

 大悟と玲人は長い間待ってたんだろう、苛ついた顔をしている。

 矢鵺歌とMEYは打ち合わせ通り先に合流できたようだ。しれっとした態度が何とも言えない。


「これで全員戻られたようですね。では城に戻りましょう」


 合計で9時間程護衛として待ちぼうけ喰らっていた兵士さんたちがようやくかといった顔で立ち上がる。

 護衛お疲れ様です。ある意味起ちっぱなしで何もしない仕事をさせられているようなもんだからな。辛い任務だ。


「で、お前らレベルどれだけ上がったんだ?」


「そっちこそどうだったの?」


「俺らは草原にいたからそこまで上がらねぇよ。15かな」


 それでも15レベルか。あと5レベルで20に達するな。

 となると、明日が最後のレベル上げか。

 一応、今のレベルは俺が30。若萌とMEYが29。矢鵺歌が27にまで上がっている。


 このレベルまで来ると必要経験値が物凄い高くなるらしく、俺のレベルがほぼ頭打ちになった。

 折角レベル差があったのに若萌達との差は1レベルにまで縮まっている。矢鵺歌もかなり追い付かれた。

 明日にはきっと皆同列になるんだろう。

 獲得経験値の差は、このレベルになると殆ど変わらなくなるようだ。


「で、結局お前らのレベルはどうなったんだよ! 20越えたんだろ?」


 まぁ、全員越えはしたかな。出現する魔物の関係でこれ以上は上がりそうにないけど。

 レベル27くらいからはかなりの数倒したけどあまり効果が無いというか、レベルが上がりにくくなった。正直皆疲労困憊だ。


 あのMEYですら結構頑張ってこれなのだから、おそらくこの周辺でのレベル上げはこれ以上無理だろう。明日の追い込みで1レベル上げられればいいかな、くらいだ。

 多分、2レベル上昇はムリだろう。

 帰ってから俺の部屋で作戦会議を行うことにすでに話が付いているので、明日の事はそこでいい。今はこいつらの言葉を躱してさっさと帰ることだ。


「とりあえず帰ろうぜ。今日は皆がんばったんだろ。食事しながらでもいいじゃないか」


「ふざけんなよスーツ男。お前食事に顔ださねぇだろが。そんなに食事風景見られるのが嫌か? それともレベルに付いて聞かれたくねぇのか?」


「食事は取る必要がないみたいなんでな。そもそもこのスーツが脱げない。食事自体できないんだ」


「ゴタクはもういいんだよなんちゃって正義野郎ッ。そろそろそのスーツ剥ぎ取るぞコラッ」


 大悟と二人きりで余程鬱屈した気持ちがあるんだろう。

 だからといって俺に敵意をぶつけてほしくないんだが。

 兵士達も空気が悪くなったのを察して動揺している。


「そういえばずっとスーツ付けてるけど寝るときどーしてんのまこっち」


 いや、だからスーツだが?


「さすがに脱いでるんじゃないのMEYさん。そうだよね誠」


「いや、だから脱げないんだって」


「設定はイイっつってんだろ。そら、ファスナーどこだよ。あれ? ねぇぞ? マスクの付け根もねぇし。どうやって着てんだ?」


 だから、脱げないってば。

 俺の身体をべたべた触りだす玲人。出来れば女性にして貰いたかった。

 あ、こら又下覗くな。そんな場所にもファスナーはない!


「クッソ、マジでねぇし。どうやって着てんだコイツ」


 MEYや大悟、矢鵺歌も俺の周りを見回して来るが、スーツの継ぎ目すら発見できずに首を捻りだす。

 だから、これはそういうもんだってば。なんで信じてくれないかな。俺は中二病じゃないんだぞ。本当の正義の味方だッての。


「でもさぁ、まこっち攻撃手段素手だけじゃん。本物ってなら必殺見せてよ必殺。そしたら信じたげるからさぁ。このままじゃただのイタい厨二病コスプレイヤーだよ」


 どこぞの中二病吸血鬼じゃないんだから。

 しかし、本物と証明しようにも能力ないしなぁ。封印された今の状態だとセイバーを作り出す機能すら使えない。


 ああ、一つ方法はあるか。あのハーレム怪人やら周囲に怒りを覚えていた時ゆらゆらっと黒い闘気みたいなのが全身に現れたんだよな。スーツも黒と赤の紋様色になってたし。

 ちょっと欝な気分になるけどやってみようか。


 欝になりそうな程の悪意を考える。

 前の世界に対する怒りと悪意と鬱屈を思い出す。

 すると、やはりだ。徐々に染まりだしたスーツに皆驚きで声を失っている。


「こんな感じでどうだ? ちょっと変則的だが、スキルの一つだ」


「闇堕ちじゃないか! すっげぇ、どういう機能つけたのそのスーツ。このコスプレ衣装ちょっと欲しいと思ったよ」


 大悟ぉぉぉっ!? だからコスプレじゃねぇっつの!

 結局、スーツの色が変わった程度では彼らの俺中二病説が覆ることはなかった。

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