各国の同盟事情6
ハーレッシュ国へとやってきた。
ここに来るまで小国三つに向ったのだが、皆快く受け入れてくれた。
まぁ、多少ビクついていたみたいだが、俺達が話が分かる存在であることを知ったことで多少なり険は取れたと思われる。
さて、このハーレッシュ国はというと、他の国々に比べると長閑な田舎町といった街並みで、城下町なのに牛車が走り、農家のおっさんが御者台に乗って藁を運んでいたり、粗末な服装の男女がゆっくりと歩いている姿が見られる。
田畑が段々畑になっており、丘の上というべきか、小さな山のように盛り上がったてっぺんに、日本風の城が一つ建っていた。
残念ながら石垣は存在せず、木造の五重塔といった城であった。
こうして各国を回ってみると分かるのだが、結構国々の特色が滲みでている。
馬車を城の入り口手前で止めて兵士に話を通す。
しばらくして国王自ら迎えにやってきたハーレッシュ国に驚きながら、案内されるまま俺達は食堂へと向かう。
ユクリ曰く、これだけ各国の食事が特殊だと、次の国への期待値が高まるというか、ついつい同程度の食事を求めてしまうな。
という感じで、会議中に出てくる食事を見比べるようになっているらしい。
その点で言えば、ハーレッシュ国は質素の一言に尽きる。
というか、むしろ国王が食べる食事とは思えない。
食堂もこれは食堂ではなくただの大広間というのだ。
畳張りの大広間に座布団が幾つか、その手前に黒い食台が一人づつ用意されており、そこに定食と呼べる食事が乗っている。
ご飯に味噌汁、鯛の尾頭付き、沢庵二切れに箸置きに置かれた箸一膳。
凄いな。見事に和風だ。
そして今までの洋風食材から見れば質素の一言に尽きる。
あ、刺身が出てきた。
凄いな。薔薇型に盛ってある。
「む、むぅ?」
しかし、箸の使い方すら知らないユクリ達は食べ方が分からず呆然と鯛の円らな瞳とにらめっこしている。
というか、これって鯛でいいんだよな。なんか肌が赤じゃ無く黄色いんだけど。
ラオルゥは箸を両手で一つづつ持って首を捻っている。どう使うか試行錯誤しているようだ。
俺はハーレッシュ王に胡坐をかいていいか尋ねてから、胡坐になってマイツミーアを太ももに乗せる。
後ろから二人羽織りするように箸を持ってまずは頂きます。
マイツミーアも戸惑いながら同じく手を合わす。
「作法は余り知らんのだ。不作法になるのは許容願いたい」
「いえいえいえ、滅相もございません。魔王陛下のやりたいように、我が国ではこのくらいしかお出しする事が出来ずお恥ずかしい限りで、お気に召していただければ恐悦至極にございまする!」
なぜか平謝りで告げられた。ハーレッシュは腰が低い。各所で別の国に付いて聞いた時に毎回口をそろえて言われていたが、確かに腰が低すぎる気がする。
これで王などと、気苦労が絶えないだろうに。
味噌汁を見る。普通のワカメと豆腐が入った味噌汁だが、異世界で見るとは思わなかった。
ところで、猫に危険な食材使われてないよな?
マイツミーアの口に持っていって食べさせて行くと、やり方を覚えたユクリとラオルゥが苦労しながら箸を使って……ああ、ラオルゥの奴箸投げ出して手づかみでいきやがった!?
ハーレッシュ王も苦笑しながら食事を始める。
食事している人物が西欧系ばっかりなのだが、食事は和風であるというかなり違和感のある光景。日本人俺だけだから気になるんだろうか?
にしても、鯛の尾頭付きか、かなり豪勢のつもりなんだろうな。
ユクリもラオルゥも気付いてないみたいだけど。
「これが和平交渉の書類ですか……」
食事を終えて少し、ハーレッシュ王に本日の要件である和平交渉用の書類を手渡すと、呟きながら書類に目を通す。
「え? あの、これ……間違いないですか?」
「うむ。間違いはないが、何か問題が?」
「い、いえ。これでは同格の通商条約と同じではありませんか。私はもっとこう、無理難題を押し付けられるモノと……美女を100人寄こせ、とか」
「いや、和平交渉なのにわざわざ相手を刺激する脅しにしてどうするよ」
「はっ!? いえ、申し訳ありません。決して魔王陛下がそのような愚考をなさるなどと思っていただけではなく周囲の国家との和平交渉の折には大抵そのような話がでてきまして、なんとか交渉を行うことでその辺りの条件は緩和していただいておりまして……」
緩和。ということは突っぱねた訳ではなく数人だけでも送ってるわけか。ダメじゃん。
腰が低いにも程があるというか、完全な弱小国家じゃねぇか。
こんなのと和平交渉しちゃって大丈夫か?
まぁいい。問題らしい問題にはならんだろ。一応注意してみておいた方がいいか? 周辺国に喰われかねし。
腰の低すぎるハーレッシュ王に辟易しながらも、無事に和平交渉を終える俺達だった。




