各国の同盟事情4
メーレン王国にやってきた。
会議室に行ったことはあるのだが、実際に街並みを見ると治安はそこまで悪くはなさそうである。
骸骨馬車を見た民間人が呆然とした顔をしているが、兵士が案内をしているので致命的な絶叫などは起こっていない。
ただ、ここでようやくテンプレというか、馬車前に飛び出す女の子がいて一悶着あった。
母親が物凄い青い顔をしていたし、兵士達が子供を殺そうとしていたが、俺が必要無いと子供を無事に帰すと、母親は娘を守りながら一目散に逃げ去っていった。
まぁ、それだけのどうでもいい話にしかならなかったんだけどな。
なんかめぼしい冒険者が飛び出してきて子供を守ったりなんてこともなく普通に城に付いてしまった。
謁見の会場も他の国と同じように食堂を使っての会食で、それなりに裕福そうな宮廷料理を振る舞われた。
おそらくだが無理して普段食べないような高級食材をこれでもかと使ってるんだろう。
包んで貰って帰りの馬車で食べることにしよう。
いつもの如く和平交渉を始めるに当り、既に各国での交渉で決まり切った定型文書を渡しておく。やはり青い顔をされるのだが、向こうに了承しがたいモノってあるのかな?
全部普通に了承出来るモノだと思うんだけど。
やっぱり魔族の奴隷解放が一番のネックなのだろうか?
「あ、あの、これは? 魔族が街に滞留する事の許可とありますが……」
「ああ、それは魔族の商人などが宿に泊る時に必要だと思ってな。街中に徹底して貰えると有難い。無理なら無理でいい。商人や冒険者がこの国には来ないというだけだ」
こういうと大抵黙る。今までの国もそうだった。
ネンフィアスは快諾したんだけど、やはり国内に魔族が来ることが恐いのだろうな。
それほど人族と変わらないと思うのだけど。あと、人族領に来て問題を起こすような奴は来させないつもりだぞ。そんなの人族領に送りだしたら魔国の首絞めるだけだし。
「これは、大丈夫なのか?」
「国王陛下、落ち着いてください。そこは許容範囲内です。むしろこちらが……」
書類を片手に話し合いを始める国王と宰相を見ながらマイツミーアを愛でる。
やはり癒され具合が違うな。この人肌温度と毛触りは絶妙過ぎる。
撫でていると揺れる尻尾が絡みついて来るのも癒され度に+補正である。
「では、ここは……」
「こちらで出せるのは……」
しかし、これから各国回るとして毎回会食と話し合いか。
なんかもう疲れて来たな。
ユクリに任せて城でゆっくりしようかなぁ。
「なぁ、セイバーよ。我は必要無さそうな気がして来たし、帰って城でゆっくりしていてはだめかね?」
俺と同じ思いだったらしいラオルゥが同じようなことを言ってきたが、万一があるので却下しました。
膨れたラオルゥは俺の腕に擦り寄りならば暇潰しをさせろ。などと言ってくる。ユクリもストレスが溜まり始めているみたいだし、少し寄り道してなんかストレス解消しとくべきか。
「では、このように」
「ああ、これなら問題は無いかな。あとメーレン王」
「ん、なんですかな? まだ……何か?」
警戒感を見せるメーレン王。これ以上まだ面倒事はやめてくれ。そんな顔をしている。
「ここからルトバニアに向うまでに素晴らしい景色か、凶悪な魔物等が出る場所などはあるかな?」
「ここから、ですか? ふむ……」
「それでしたらファハンの丘というのがありますな」
「ああ、絶景と言う噂だな」
詳しい場所を聞いてみる。どうやらファハンという一つ目の妖精が支配している場所らしい。
腕が胸から生えており、一本足らしい。一本だたらの亜種だろうか?
目撃証言も幾つかあるのだが、冒険者は悉く討ち取られているらしいので定かではないらしい。
曰く、顔の中央に目があったとか、頭の真中に剛毛の髪の毛が一房あったとか、肌が黒いとか、ねじれた剛毛のような羽で全身覆われているとか。
武器も持っているらしく、棘棍棒? 鎖棍棒? 毎回違う武器が確認されているそうだ。
というわけでメーレン国を出た俺達は一路ファハンの丘へと進路を取った。
丘と言うだけあって小高い場所にあり、かといって峠のような場所ではなく盛り上がった平原といった場所である。どの辺りが美しい光景なのかと思いながら馬車を降り現場に向かうと、成る程、と納得してしまった。
少し遠くに岩場の赤茶けた場所があり、その谷のようになった部分に沈む夕日がすっぽり収まるように沈んでいく。その姿は確かに絶景だ。
残念ながら今は昼間だったので、その光景を見るために野営することになり、結局数時間後にやってきたファハンという魔物を無粋だからという理由でラオルゥが爆散させた。
俺、そいつの容姿見ることすらできなかったんだけど……
仕方無いので沈む夕日を丘の上に座りながら、隣に侍るマイツミーアを愛でながら見送った。
ユクリは馬車の中ではしゃぎ疲れて寝ていたので放置しておいた。




