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各国の同盟事情1

「こ、これはこれは魔王陛下、ようこそ」


 本日和平交渉に向ったのはノーマンデ王国である。

 国王は若干青い顔で俺達を出向える。

 今回は若萌や矢鵺歌が居ないので、一緒に来ているのはラオルゥとユクリ。護衛にマイツミーアである。


 やっぱりペリカはハゲテーラの指導で動かせなかった。あいつ知らないこと多過ぎ。

 ムイムイも加わったせいで指導時間が分散してペリカの思った以上に指導が出来ていないらしい。

 コルデラは今若萌の代わりにギュンターの側で宰相のような役割をしている。


 ディアの奴はもう、動きそうにない。ルトラと共にエルフの居る森を改革中である。ほんと、楽しそうだったよ。もう少し魔木が欲しいですね。とかちらっちらっとルトラ見ながら言ってたのがちょっと気になったかな。ルトラ、頑張れ。


「ノーマンデも魔国と和平を結びたいとか?」


「う、うむ」


 固唾を飲みながら頷くのはノーマンデ国王。その側近には二人のおっさん。

 一人は宰相だと分かるんだが、もう一人はなんだ? 大臣か?

 その背後には護衛の兵が数人。

 皆、俺の膝上に乗っかっているマイツミーアが気になるようでちらちらと見ている。


 俺はノーマンデ国王に渡すべく、書類をユクリに渡す。

 ギュンターや若萌と共に動いていたおかげか、秘書的な役割は普通にこなせるようだ。

 ユクリから向こうの兵士に。兵士が安全を確かめ宰相に。宰相が内容を確認して青褪めながらも、国王に書類を手渡す。


「ま、魔王殿、こ、これは? ずいぶんと取り決めがあるようだが?」


「内容はネンフィアス帝国が結んだ我が国との和平内容だ。これを元に他国との和平交渉を行うことにした。前例がある方がいいだろう?」


 ニヤリ、俺がスーツの中で笑みを浮かべると、伝わったのだろうか? ノーマンデ王国も笑みを作る。ただし、その口角は引き攣っていたが。


「こ、この和平交渉には、その、魔族の奴隷の解放とあるのだが……」


「ソレは当然だろう? 我が国の民を奴隷として使う国と和平を結ぶなどありうるか? そちらとして考えてみてくれ。人間を虐げて奴隷として使っている魔族と和平など結べるか?」


「そ、それは確かに……」


「ネンフィアスは魔族の奴隷など居なかったらしいからな。二つ返事でOKだったよ」


 しかし、ノーマンデはそうはいかない。

 魔族領と戦争をしていたのだ。昔からの奴隷で手に入れた魔族たちや、その子孫を迫害している今の状況で奴隷を解放などすればどうなるか……下手すれば新たな火種になりかねない。


「しかし、急に解放とするのは……」


「何、別に即座にしろと無理難題は言わないさ。奴隷たちを魔族領に帰して貰えればそちらで解放させる。和平を行っている国に対して開放奴隷を嗾けるような悪はしないさ」


「ほ、他にも、これは?」


「ああ、そちらはネンフィアスの方が強く要望してな。魔族軍との合同演習を行いたいそうだ。月一くらいの割合でネンフィアス領か魔族領で行うらしい。その辺りは軍の総大将同士で話し合って決めることになっている。その要望は別に強制ではないよ。あくまでネンフィアスではこうだったという訳だ。ノーマンデにはノーマンデの要望や譲れぬものがあるだろう?」


 しかし、ライバル国であるネンフィアスが飲んだ要望を自分の国が飲まなかったというのはプライドが許さない。

 ノーマンデ国王はしっかりと要望書を読みながら二人の側近と話を纏めて行く。

 俺達はその話し合いが終わるまで暇なので、対面のおっさん三人を見ながらマイツミーアの背中を優しく撫でる。


 一瞬、マイツミーアから濡れた声が漏れた気がしたが、気のせいだろう。ユクリもラオルゥも全く反応しなかったし。

 向こうの兵士たちは相変わらずチラ見してくるが、顔が赤くなってるのは気のせいだろうか?

 というかラオルゥとユクリ、何かさっきより近くなってない?


「ふむ。では、こちらの要望と共に、飲めない要望を詰めて行かせていただくが、よろしいか?」


「いいだろう。交渉を始めよう」


 ノーマンデとの和平交渉が始まる。

 今回の活躍はラオルゥだ。

 前回ネンフィアスとの和平交渉で若萌に強制的に同行させられた時に習わされたそうで、交渉術を身に付けたらしい。

 褒めてみると胸を張ってふふん。と得意げに笑っていた。


 ただ、彼女は目が見えない状態なので相手の求める内容等は俺やユクリが読み上げる形になった。

 ラオルゥの場合、自分で見ようとすると対面に居るおっさん三人が破裂しかねないし。

 俺だって爆散はしたくないので彼女にはいつも通り目隠しをして貰っている。


 ノーマンデもネンフィアスに対抗したのか、殆どの要望が通った。

 奴隷解放など一部は時間が掛かるし、出来ないかもしれないと言われたが、取り組んでくれるだけでもありがたいとラオルゥが了承していたので彼女に任せた。


 あと、この国特有と言うべきか、ノーマンデ酒を買ってほしいと言われたので、ドワーフに卸すという契約を結んでおいた。ドワーフというかドヴェルグだっけ、魔族領にいるのは。

 代わりに魔族領の酒が欲しいと言っていたので、実は酒好きの国なのかもしれない。

 特使にドワーフ系のおっさんを連れて行けば結構仲良くできるかもしれないな。

 あとでギュンターに相談してみよう。

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