トラップモンスター3
「この森、見た目雑魚そうなのが多いんだけどぉ」
「トラップモンスターと言うべきでしょうか。ただの木だと思わせるエントとか、葉っぱに擬態するリーフリスとかも面倒な相手ですね」
俺達はしばらく森を探索していたのだが、この森の魔物は強力な上に擬態能力がハンパない。
にっちゃうつう゛ぁいなどそこかしこに存在するし、ドリアデスに誘われれば男は危険なようだし、エントや土遁サンショウやウィップナーガなどぱっと見そこらにある枯れ草やら蔦などに擬態した魔物も多い。
「居ます。前方フォレストタイガーです!」
青々と茂る叢にしか見えないが、保護色で潜んでいたフォレストタイガーを矢鵺歌が見抜く。
言葉と同時に矢を射ると、即座に飛び退いたフォレストタイガーが俺達でも見つけられた。
動く叢にしか見えないが、アレが虎の一種らしい。
攻撃されて潜むのを止めたそいつは俺達向って一気に駆けだす。
見る間に距離が縮まる。ターゲッティングされたのは若萌。
即座にセレスティアルフェザーを引き抜き斬り上げる。
フォレストタイガーの身体が真っ二つに裂かれた。
あの剣切れ味いいな。俺もセイバーさえあれば……
異世界召喚されて以来使えなくなったセイバーを夢想し、掌を開いてみる。
いや、ない物ねだりしても意味はないか。
「獣肉と虎耳? 使えそうなのはタイガークローかしら。でも接近戦用だし……」
入手アイテムを調べつつ、若萌がこちらを見る。
いるか? と暗に告げているようだが、俺は拳系ではなく剣士だ。
首を振っていらないと告げておく。
「街で売って換金するのがいいかしら」
「おー。そういえばウチらこの世界の金持ってないよねー」
「そういえばそうですね」
そして女子トークが始まれば俺に居場所はない訳で……はぁ、俺に少しでもエロ怪人みたいにこの女どもの話に加われる胆力があれば俺にも彼女出来たりするんだろうか?
は、今更だな。俺は俺だ。
「ん? おい、アレは敵でいいのか?」
「はい? どうしました誠さ……スライム?」
少し遠いが蠢く緑色の物体を見付けた俺が矢鵺歌の肩を叩くと、話を中断した彼女が目を凝らす。
じぃっと見ていた彼女は、突如ひぇっと声を上げて飛び上がった。
「に、逃げましょう皆さん、なんかヤバそうです!」
「矢鵺歌?」
「あれ、多分スライムじゃないです。もっとヤバい感じのです。ひ、人が、うわ、は、早く、早く森を出ましょう!」
突然戦意喪失した矢鵺歌に怪訝な顔をするMEY。
若萌は敵なら倒してしまいましょ。と自分の実力を疑っていない様子だ。
どうしたものか、この森の敵を放置して街の方は大丈夫なんだろうか?
いや、やっぱ無理だ。俺らにあれは対抗出来ないと思う。視覚的にというか生理的に無理!
蠢く緑色の生物は粘体で、無数の人が寄り集まった亡者の群れみたいな存在だった。
下手に近づくと取り込まれそうなので俺は即座に撤退を指示。
倒したそうだった若萌の背中を押して森から脱出する事にした。
気付いてよかった。結構鈍くはあったけど俺が気付かなかったら闘う事になってたんじゃないかな。
近くに来た時の視覚的ショックでしばらく隙が出来て、気付いた時には取り返しのつかない状態に……なんてこともあり得そうだし、危険だから近づかないようにしよう。
こっちの森は危険なので、森を出た先にあるもう一つの森に向う事にした。
時間的にはまだ半日以上余裕があるので、城で支給された昼ご飯を草原で食べておく。
休憩に戻って来た大悟と玲人がそれを見てわぁわぁと喚いていた。いや、二人は女性三人に囲まれた俺に何か言ってたみたいだが、俺は別にハーレムじゃないぞ。こいつ等俺に惚れてるわけじゃないし、そもそもの話俺は食事してないからな。食べれないんだよ。スーツ着たままだから。
まぁ、そのおかげか食べる必要が無いみたいだけどな。
この世界の神様は俺に何を求めているんだ。
食事不要よりも変身解除スキルを切に願う。
食事を終えた女性陣と別れを告げた大悟と玲人を見送って、俺達は再びパーティーを組んで森に向う。
凄い勢いでレベルが上がる。
やはり草原部よりも森の方が敵が強いらしい。
草原はおそらく騎士団とかが定期的に討伐していて危険な魔物を排除しているんだろう。
その分森が危険になっているようだ。
こっちの森もヤバそうなのが揃っている。
いきなり接敵したのがパワードカナブーン。素早い動きで俺達を翻弄し、強力なタックルを仕掛けて来る。
俺が一度受けたがスーツ越しに押しつぶされるかと思う程の衝撃を受けた。
まともに喰らうのは止めた方が良さそうだ。
囮をしたのは一回きりで、結局若萌の活躍で倒して貰う結果になった。
ああ、危惧してた通り役立たずになりだしたぞ俺。どうすんだよ……




