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外伝・VS災厄のキマイラ4

「嬢ちゃん危ねぇ!」


 何度も言われていたが、ギーレンは咄嗟に走っていた。

 今回の敵には敵わないから巻き添えを喰らわないように逃げておくべきだったのだが、アルティメイトキマイラのライオンヘッドから放たれたファイヤーブレスが矢鵺歌に向いているのに気付いてしまった瞬間、彼は思うより先に駆け寄り、矢鵺歌を付き飛ばしていた。


 自分でもヤッちまった。と思ったが、既に遅い。

 彼の目前へと迫る炎の息。

 回避など完全に不可能。ただただ悪夢の熱波に飲まれ、焼かれ、死に絶えるだけしか出来ない。


 だが、それは奇跡とすら呼べるタイミングだった。ギーレンのすぐ前の床に、魔法陣が現れる。

 炎が襲いかかる直前、何かがこの世界に出現した。

 そいつは目前に迫った炎を見て思わず叫ぶ。


「う、うおおおおおおっ!? 耐熱型シェルターシールド起動っ」


 ギーレンは呆然とそいつを見つめていた。

 そいつは男だ。

 半身を見た事もないゴテゴテとした鎧を着た。否、鎧に身体を侵食されたようなメタリックボディの男である。


「うっはぁ、ヤバかった。ロシータ共に置いてかれたからって座標軸適当にさっさと戻して貰うんじゃなかった。不幸だ。まぁ石の中に入る。なんてことにならないだけマシか」


 出現と同時に溜息を吐く男は炎を吐いて来た相手を見る。


「うげ、強大な魔物さんじゃないか。その上に乗ってんのは……戦隊ヒーローか何かか?」


「お願いします、手を貸してっアンゴルモア!」


 若萌はその姿を見た瞬間、そいつの名を叫んだ。

 名前を呼ばれた男は一瞬呆然としていたが、何かを勝手に納得したらしい。

 こちらに向けて歩いて来る。


「見知らぬ戦隊ヒーローッぽいのから名前呼ばれて助けてくださいか。知り合いの知り合いかなにかかな? まぁいいや。こっちの世界戻ってきて即行戦闘に巻き込まれてるとか、俺、なんでこんなに不幸なんだろうな」


 アルティメイトキマイラの前までやってきた半身機械のアンゴルモア。

 半身のメタリックボディは鎧と融合したわけではなく、この世界では未知の存在となる機械によるものだ。

 その男は別の世界で半身を機械に改造された不幸な男。

 若萌は知り合いであるかのようにそいつの隣に飛び降りる。

 男がアルティメイトキマイラの身体に触れると、アルティメイトキマイラに背を向け若萌に向き直った。


「で、あんたなんなの? 俺の知り合い?」


「この世界にジャスティスセイバーが来てるわ。その知り合いよ」


「あー。そういう関係? よろしく、俺は三神……」


「……なんなのよ」


 アンゴルモアと仮称される男の名が言われる途中だった。矢鵺歌が人を殺しそうな顔でアンゴルモアを睨む。


「イベント起きたところに毎回やって来て滅茶苦茶にしてっ! あんた一体なんなのよっ!!」


「へ? え? 俺?」


 肩を怒らせ近づいて来た矢鵺歌はアンゴルモアの胸元を掴み上げ引き寄せる。


「あ、おま……」


「なんで、あんたはっ! 私の思惑を悉く潰してくれるのよッ!!」


 しかし、アンゴルモアにとっては矢鵺歌こそがあんた誰? 状態である。

 若萌だけはどういう繋がりか分かってしまっているのだが、他のメンバーは突然アンゴルモアに詰め寄った矢鵺歌の行動が良く分からず呆然としている。


「あー、何かよくわからんが。御愁傷様?」


「ご愁傷様っ、じゃないわよ! 私が言いたいのは……」


「そうじゃねぇよ」


「……え?」


「そうじゃねぇ。俺に触れちまったなあんた。本当に、御愁傷様だ・・・・・


 矢鵺歌こと女神は知らなかった。この場では若萌だけが知っていた。

 アンゴルモア。別世界で不幸の神と呼ばれし男は、自身に触れた存在に、不幸を感染させる・・・・・・・・

 つまり、アンゴルモアに触れた瞬間、矢鵺歌は何らかの不幸がその身に降りかかることが確定してしまったのである。


「意味が分からないわ。それより、あんたは何者なの! なぜ私の邪魔をするの!?」


「いや、あんたの邪魔とかするつもりはねぇんだが、俺はふ……あらら、来たか」


 何かを言いかけた彼は、溜息を吐く。矢鵺歌の手をそっと放し、押し出すように遠ざける。

 その背後にいたアルティメイトキマイラが身体に力を入れて起き上がった瞬間だった。

 面々の悲鳴が響く。大きくアギトを開いたアルティメイトキマイラが、無防備なアンゴルモアの背中に噛みつこうとしたのだ。


「不幸の時間だ。俺も……お前もな」


 次の瞬間、あり得ない不幸は下からやってきた。

 地響きと共に地下であるはずのダンジョンがひび割れ、アルティメイトキマイラとアンゴルモアを巻き込むように水が噴き上がる。

 二体はそのまま天井部へと吹き飛ばされ、ダンジョンの天井をブチ破り水と共に若萌達の視界から一瞬で消え去った。

 呆然とする若萌と矢鵺歌、他の面々もただただ立ち上る水の柱が消える天井を見上げていた。

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