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六人の勇者1

初回なので二話連投。二話目です。

 石造りの冷たい部屋に、六人の男女が立っていた。

 その目の前には煌びやかな衣装を着た女性が一人。祈りを捧げるように六人を拝んでいる。

 その女の背後には十数人のローブ姿の誰か。フードを目深に被っているので男女の区別すら付かない。

 そんな奴らが目の前の女と同じように片膝付いて俺達に祈りを捧げている。


 隣を見れば、一体何が起こったのか全く分かっていない様子の男女が五人。

 俺を含めて六人だ。女が三人、俺を含めた男も三人。

 皆学生服やらブレザーやらを着ているが、各々の服は種類が違う。

 どうやら離れた場所から召喚されたようで、同じ服装なのは男二人だけだ。

 その男達も襟首に付けられた校章が違う。


「こ、これ、もしかして、召喚!? 小説や漫画みたいな、アレって現実に起こるんだ!?」


「ハァ? 召喚? つかなんなのコレ? コスプレ会場か?」


 男二人の反応は正反対だ。

 異世界と即座に気付いたのはメガネで背の低い可愛らしい少年。

 彼はひゃっほうとか声を上げて喜びを噛みしめている。

 逆にもう一人の男は金髪のヤンキー系少年だ。何が起こったのか全く分かってないようだが、周囲に可愛い女の子が居るのに気付いて鼻の下を伸ばしている。


「皆様の自己紹介等もあるでしょうが、ひとまずこちらへ。私の父に謁見していただきたいのです」


 ということは、この目の前の女性の父は国王か何かだろう。つまり必然的に目の前の女性が姫という立場の存在だと分かる。


「一ついいか姫さん」


「っ!? はい。なんでしょう?」


「俺は闘いの最中に召喚された。向こうに戻れるのか、戻った時時間の経過はどうなっているのか、教えてくれ」


 俺がいきなり姫と告げたことで驚きを露わにした姫は、即座にその表情を消し去り何でもないように取り繕う。

 しかも、なぜか妖しむような顔をし始めた。


「戻る方法は、父と宮廷魔術師の方にご質問ください。私は皆様を出迎え連れて来るように教えられただけでございます」


「……そうか。理解した」


「そこのコスプレさん、随分理解が早いようね」


 俺が謁見の間に案内してくれるよう姫を促し歩き出すと、直ぐ横にいた女学生が声を掛けて来る。

 振り向いた瞬間、なぜか既視感を覚えた。

 見覚えは無いのだが、どこか見覚えのある容姿に見えたのだ。


「ああ。こういうのは何度か経験がある。今回はそこの彼が舞いあがってるように異世界への召喚、魔王を倒さなければ元の世界に戻れない。という奴だろう。とりあえずは謁見の間に行って召喚された理由を聞くのが早い。どうせ後で俺達が話し合う機会も貰えるだろう。ただし、首輪や指輪など填めるだけで奴隷契約が履行される物を渡される場合もあるので注意した方がいい」


「そう。参考にさせてもらうわ」


 俺より少し背の低いその少女は、艶やかな黒髪をたなびかせ、俺より先に歩き出す。

 おい? と戸惑った声を上げると、振り向いた彼女は表情を変えることなく「行くのでしょ?」と不思議そうに聞いて来た。

 掴みどころがないというか、どこか懐かしいその所作は、まるで彼女を見ているようだった。


 戸惑いながらも、俺達が歩き出したことに気付いた他の異世界人たちが後を追って来る。

 不良系男もさすがにこの場所に一人いるのは嫌だったようで、やる気なさそうに俺達を追って来た。

 姫に案内されるまま、謁見の間へとやってくる。

 赤絨毯が敷かれた謁見の間は、何処の城も似たような作りなんだな。と思わざるをえない。

 しばらく待っていると、玉座の裏側側面から宰相やらなにやらと共に現れる国王陛下。


 玉座に座った国王は尊大な威圧感漂う偉丈夫だった。彼が座った椅子の左右に宰相と姫が並び、さらに外側を守るように四人の兵が立つ。少し離れた場所に宮廷魔術師だろう、魔術師っぽいおっさんが立った。

 玉座の後ろには王の側近と思しき者が四人程並んでいる。

 王の横にある玉座は空席のままだったが、おそらく皇后が座る椅子だろう。今日は来ないらしい。


「遠路遥々この国に来ていただき、まずは礼を申し上げる、異世界の勇者たちよ」


「あぁ? テメェらが勝手に呼んでおいてなんだそ……ふがふがふがっ」


 不良君が話を邪魔しそうだったので俺が口を塞いでおいた。

 ソレを見て不敬だ。と叫ぼうとした兵士を国王が咳一つで黙らせる。


「本日お呼びしたのは他でもない。この国の危機の為、誠に勝手ながら我が国を救える勇者をお呼びさせていただいたのだ。なんとか、力を合わせ魔王を討ち滅ぼしてい頂きたい。奴らが蔓延るせいで我が国はかつてない未曾有の危機に晒されようとしておるのだ」


 尊大なのか敬語なのかよくわからない言葉だ。普段から目上や気を使う存在がいないせいだろう。

 国王なりに俺達を自分より上に置こうと必死に言葉を選んでいる感じだ。失敗してるけど。

 それから俺達は、自分たちが呼ばれた理由と、やるべきことを国王から知らされるのだった。

 正直、いきなり呼ばれて敵倒して来いとか、やってられないよな。

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