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ネンフィアス帝国にいってみた4

「我が帝国の兵士達よ。魔王の側近がそなたらに稽古を付けてくれるらしい。相手はたった一人、全滅などという体たらくを見せてくれるなよ!」


 兵士達がネンフィアス皇帝の声を聞いてざわめく。

 目の前に居るのは猫型獣人の魔族。しかも女性体だ。

 たった一体の魔族なのである。

 加えてこちらはネンフィアス帝国精鋭兵の一個中隊である。負ける要素は見当たらないはずだ。


 むしろこれで負けるとあっては自分たちの実力の無さを国王に見せてしまうのである。

 それだけは絶対にあってはならない。

 だからこそ、相手がたった一人だからという理由で相手を見下す訳にはいかない。


 全力で叩き潰す。

 ネンフィアス皇帝の開始の合図と共に気合いの雄たけびが無数に上がり、男達がマイツミーアに殺到する。


「マイツミーア、手加減しろよー」


「うにゃぁっ」


 マイツミーアが声を発した。

 兵士達が認識できたのはそれまでだった。

 最初に殺到した兵士達がばたばたと倒れて行く。

 中途に詰めていた兵士達の頭上を黒い何かが走り抜ける。

 そして意識の途絶えた兵士達が倒れ伏す。


「なんだ!? 前方どうし……うわァっ」


「バカな! これ程の差が……ぐぅっ」


 後方の兵士に悪夢が届く。あまりにも凶悪な魔族の猛攻に彼らはなす術は無かった。

 まぁ、レベル差は3000以上な上に一人一人が皇帝のおっさん程の強さじゃないからな。

 これはどれほど手加減できるかの闘いになるだろう。


「負けん、このまま全滅などさせるものかっ!!」


 お、一人だけ猛者がいるな。巨漢の男がハルバードで爪撃を受け止める。

 強いかどうかは別として、かなり動きがいい。

 巨漢にしては素早いハルバード回しでマイツミーアの連撃を防ぐ。

 彼女が手を抜いているせいもあるだろうが、なかなかに良い動きをする。


「うヌゥッ!」


 一撃を弾き飛ばした次の瞬間、返す刀でハルバードの刃を下からマイツミーアに向ける。

 これを尻尾で柄に捕まって回避するマイツミーアは男の頭上を飛び越え、前方宙返りでくるくると回転しながら背後に着地、同時に振り向き剣舞でも踊るように剣撃が鳴り響く。


「ほぉっ! 我が兵にも骨のある奴がいる!」


 自分の兵士の実力知らなかったのかよ!?


「せぁっ!」


 横一線のハルバード。上半身を逸らして躱すマイツミーアの股間めがけて蹴りを放つおっさん。

 マイツミーアも両足を浮かし、男の顎めがけて蹴りを放つ。

 一度目は避けたおっさん、おっさんの蹴りはマイツミーアの支柱となった尻尾を蹴り飛ばすが、避けた先に来た逆足の一撃を喰らい昏倒した。落下したマイツミーアは身体を回転させて四足で着地と同時に飛び退き更なる被害を出して行く。

 尻尾が第三の足になるのか。獣人との戦いは気を付けないと俺も不意打ち喰らいそうだな。


 マイツミーアは強敵を倒すと、残っていた兵士達の殲滅に向う。

 たった一人で瞬く間に征圧していく姿は見ごたえのある劇でも見ているようだ。

 ネンフィアス皇帝も手に汗握りマイツミーアの動きを見ている。


「なんというしなやかさと強さ。我が軍の不甲斐なさよりもあの強さに納得してしまうな。言うのは悪いがユクリティアッドと闘うより、儂はアレと闘う方が勝てる気がせんぞ」


 ユクリがむっとするけどこれは仕方無い。何しろマイツミーアは白兵特化、ユクリは魔術特化なのだから、ネンフィアス皇帝にとってどちらが危険かといえばマイツミーアに決まっている。

 皇帝の剣である魔術打ち消し効果のある剣だってただの剣としてしか効果がなくなるからな。


「ラストですにゃ」


 猫パンチを喰らって倒れる兵士。

 そしてマイツミーア以外立っている者がいなくなった戦場で、ネンフィアス皇帝の「それまで!」という声が高らかに響く。


 五十人くらい居たのに全滅したよ。

 見どころのある兵士は五人くらいかな。

 まぁ、その全員が悔しげに顔を歪めているけど。特にあの巨漢のおっさんは地面に拳を打ちつけて悔しがっている。


 尻尾を足の代わりにして両足の蹴りが来ると理解できていればこうはならなかったとか、相手の攻撃手段を見誤った自身を恥じているようだ。

 しかし、ネンフィアス皇帝が仁王立ちして客席から見ていることに気付いたようで、一人、また一人とよろよろと整列し始める。


「全員、不甲斐なし。と言いたいところだが、我が予想以上に良く持った、特にラスレンティス、フローラモ、ロイド、オーガン、ゲド。お前達の闘いは眼を見張るモノがあった。ここで嘆く暇があるならば自分を磨け、城壁十周!」


 兵士達が声を揃えて返答し、即座に走って場外へと出て行く。

 マイツミーアにボロボロにされた揚句に城壁十周も鎧着たまま走るのか。可哀想に。

 しかも負けた側だからマイツミーアから経験値も奪えないと。踏んだり蹴ったりだな。


「いいのか、あれ?」


「構わんさ。しかし、マイツミーアだったか。ぜひとも我が妻に迎えたいモノだな」


「マイツミーアは俺のもんだ。やらねぇよ?」


「それは残念だ」


 くっくと笑うネンフィアス皇帝。本気なのかどうかわからんが、マイツミーアは絶対に渡さん。

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