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ネンフィアス帝国にいってみた3

「デッドリーハリケーン」


「ぬるいわっ」


 黒色の竜巻を発動したユクリ。それを気合い一閃吹き散らす皇帝様。

 いや、これ、本当にユクリのやつ手を抜いてんのか?

 なんか焦った顔してるぞ?


 レベル差約3000だよな? それだけの差がある魔法を打ち消せるもんか普通?

 あの剣、魔法打ち消しか何か特殊なスキルがあるな。だからどれ程のレベル差があってもユクリ相手に闘えてるんだ。

 ユクリも白兵戦をすることなく魔法しか唱えてないからな。

 相性の問題ってことか。それにしても……あのおっさん強いな。


「ぬははははは、どうしたユクリとやら。随分と焦った顔をしているな!」


「うぬぬ。ユクリ言うなっ。余の名はユクリティアッド。略して良いのは我が許した者のみだ!」


「ほぉ、それは失礼。だがどうするユクリティアッド? このままではじり貧だろう?」


「抜かせ! 人族相手だからこそ手を抜いてやっておるのだ!」


 叫ぶユクリだが、傍から見ていると負け犬の遠吠えにしか見えない。

 これはちょっと、もしかすると皇帝様勝利しちゃうんじゃね?


「どんな感じ?」


「お、矢鵺歌。どうもこうも見た通り、ユクリの魔法が全部切り裂かれてる。レベル差3000以上なのに凄いよな」


「本当ね。でも、拳一度当てれば勝てるんじゃない?」


「まぁ、そうなんだけど、ユクリの奴が気付いてるかどうか」


 ユクリさんはこれでもかと言うくらいに魔法でごり押しを行い、そのことごとくを皇帝様に撃破されている。

 しかも、あの皇帝何か狙ってやがるな。

 ユクリの隙を窺いだしたぞ。


「そろそろ、決着付きそうね」


「矢鵺歌もそう思うか?」


「え? 終わるんですか? 良く分かりますね」


 稀良螺は分からないか。経験不足なのかな?


「そら、皇帝が仕掛けるぞ」


 爆炎魔法を切り裂いた瞬間、ユクリの視界から皇帝が消える。

 次の魔法を唱え放ったユクリだが、その魔法が飛んで行った方向とは別の方向から飛び出す皇帝。

 驚くユクリが魔法を唱えるが全てを切り裂き肉薄する。

 それでも魔法を唱えようとするユクリ。しかし、その眼前に剣先が向けられた。

 後一ミリほどで突き刺さる。それ程に接近されれば、流石に魔法を唱えられる余裕は無くなるらしい。


「それまで!」


 誰も言わないので俺が代表して告げる。

 ネンフィアス皇帝はそれに気付いて剣を戻し、ユクリは負けたことに気付いて地団駄踏みだした。

 すごいなネンフィアス皇帝。これ、実戦だったらレベル差跳びこしてユクリ殺されてたんじゃないか?


「おお? なんだか強くなった気がするぞ」


 ネンフィアス皇帝は今回の闘いでレベルが2000程上がった。人類最強返り咲きである。

 ユクリ、どうすんだよこれ? いや、まぁいいんだけどさ。


「ぬあぁっ。この余が、余が負けるだと!? 人族などにぃっ」


「くあっはっは。魔法に頼り過ぎだ小娘。いやー、良い運動になった」


 余は満足じゃ。とでも言うようにネンフィアス皇帝は戦場から去る。しばらくすると来ないように告げていた兵士達に許可が出たのだろう。雪崩れ込んで来る兵士団が戦場へとやって来て、代わりにネンフィアス皇帝が俺の居る観客席へとやってくる。


「良い剣持ってるな」


「ふふ。やらんぞ魔王。しかし、白兵で来られていたらどうなったか分からんな」


「レベル差の問題があるからな。ユクリも加減出来ない白兵じゃなく魔法で戦ったんだろ」


「ふむ。手加減されてはいた訳か。これでは勝ったからと浮かれられんな」


 頭をがしがしと掻きながら俺の隣に居たエルジーの横に座ってくるおっさん。

 むわっと汗臭い匂いがここまで来た。

 と言っても俺はスーツ着ているので問題無いのだが、マイツミーアが凄く迷惑そうな顔をしていた。


「どうだ魔王よ。こちらの王が実力を見せたのだ、そちらも少し運動せんか?」


「あんた、その為にあの兵士呼びこんだな」


「どうであろう?」


 ニタリと笑みを浮かべた皇帝に、溜息を吐く。


「手加減苦手なんだが?」


「むぅ、それは困った。兵士どもはやる気に満ちているのだが……」


 それは俺のせいじゃないだろ。


「にゃ。でしたらにゃーがやりますにゃ」


「おお、マイツミーアが珍しくやる気に……」


 そういえばこいつは結構な戦闘狂だったな。東の護衛の時も出来れば激戦地に向いたいとか言ってたし。


「力加減に気を付けろよマイツミーア。お前のレベルもかなり高くなってるからな」


「了解ですにゃ」


 俺の膝から降りたマイツミーアが場内へと回転しながら落下する。しゅたっと地面に付いた時には、入れ替わるようにユクリが空を飛んで俺の元まで戻ってきた。


「悔しいぞセイバーっ」


「いや、俺に言われてもな?」


 なぜか無遠慮に俺の膝に飛び乗ってくるユクリ。マイツミーアの代わりに俺の膝上に収まってしまった。やめて、角が邪魔だ。


「むぅぅ、スタンウィップをあそこで使っていれば……」


 悔しかったんだなぁ。でもいちいち俺の前で首振らないで。角が邪……痛ぇっ!?

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