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ネンフィアス帝国にいってみた2

「さぁ。始めようか」


 兵士用の闘技場だろうか? コロシアムとドーム球場の中間位の円錐型建物に案内された俺は、観戦用の客席に座っていた。膝元にはマイツミーア。右隣にエルジー、左隣に矢鵺歌と稀良螺。

 観戦者は他に居ないので広々としてなんだか落ち着かない。


 闘技用の地面に居るのはユクリとネンフィアス皇帝。あいつ自分で戦うのかよ。

 宰相達が若萌たちとの会議でいなくなった御蔭でこの人止められる人が居なかったせいらしい。

 何人か実力のある兵士は居るらしいのだが、そいつらは見学すらさせて貰えず皇帝だけが戦場に居る。


「良いのか? 仮にも王だろう?」


「ふん。相手の実力を知れる良い機会だ。儂自ら体験するに決まっておろう」


「ああもう、この筋肉は……まぁよい。魔族の実力知るが良い」


 そう言えば、俺、ユクリの実力全く知らないや。

 そもそも真名命令で一度も戦わずに勝利した訳だしな。


「ところでネンフィアス皇帝よ。空はありや? なしや?」


「好きにせよ。貴様の全力を見せて貰いたい」


 服を脱ぎ去り上半身裸になったネンフィアス皇帝。鍛えあげられた筋肉は、気合いと共に盛り上がる。

 手にするのは巨大なトゥーハンデッドソード。なれど彼はソレを片手で握り込む。

 さぁこい。とばかりに剣先をユクリに向けた。


「スピーディア。オフェンディア。ディフェンディア」


 対するユクリは右と左の掌を胸の前で対面させ、呪文を唱え出す。両手の中央に出現する緑黄色の光がユクリを包み込む。

 さらに赤い光、青い光を同じように作り出し自身を包む。


「補助魔法か。詠唱速度はかなり早いな。ウチの魔法部隊に見習わせてやりたいわっ」


「マリス・フェザー。ヘルザレイド。コキュートハンド」


 無数の羽の生えた暗黒球、黒き奔流、闇色の腕が地面から出現する。


「さぁ、準備完了。死ぬなよネンフィアス皇帝!」


 空中に浮かびあがったユクリが特攻する。

 ほぼ同時にネンフィアス皇帝の足元に出現するコキュートハンド。足を掴んで逃げ場をなくし、そこへマリス・フェザーとヘルザレイドの連続攻撃。


「ぬるいッ」


 ぬぅんと気合いを入れると赤く放電する皇帝の剣。

 一振りで殆どの魔法を吹き散らし、ユクリ向けて赤電の斬撃が飛ぶ。

 旋回しながら回避したユクリは無数の雷電を纏い、雷撃を打ち放つ。


 凄いな。魔法ってこうして見ると派手だよなぁ。俺、こんなのと闘わずに勝ったんだなぁ。

 真名を使わずユクリと闘ったらと思うと、なんかもう敗北必死だったんじゃないかと思う。

 絶対勝てないだろ。対戦時のレベル差もあり過ぎたけどさ。


「シェ・ズルガ!」


「烈空破斬!」


 風の魔法を剣で吹き散らす。

 この皇帝。何気に強いな。ステータス見たら稀良螺と殆どレベル差無かったし。こいつ実力隠してやがったみたいだが人類最強クラスだぞ。まぁ、今は俺の隣に居るエルジーが一番だけどな。


「正直、ネンフィアス皇帝の実力を見ることになるとは思いませんでした」


 戦慄するエルジーに視線を向けると、なぜか話しかけてくるエルジー。

 あ、もしかして俺が振り向いたから感想言わなきゃみたいに思っちゃった?


「今はお前の方が強いだろ」


「そういう問題ではありません陛下。今までこの国の存在は謎に包まれておりました。ネンフィアス皇帝の独裁はかなり強引であるのに彼が弑されることなくこの年まで皇帝で居続けている。秘密は彼自身の実力が他の兵士達を圧倒していたから。さらに強引ながらも勝機を逃さない鼻の良さも彼を皇帝たらしめる実力なのでしょう」


「独裁をするならば他を圧倒しておかないと代わりはいくらでもいるからな。唯一つとなれば彼を失うのを恐れ、多少の暴走は大目に見られるんだろうな」


「はい。周辺国が恐れる理由も良く分かりました。ネンフィアス帝国は危険です。今は北の隅に居るので問題はありませんが、侵略を繰り返す事で我が国と国境が近くなれば……」


「随分気の遠くなりそうな話だな」


 北側だけでもノーマンデ、カーラン、レインフォレスト、メーレンなどなどかなりの国があるんだぞ。東側のルトバニアに隣接するまでどれだけの期間がかかることか。そうなるまでにいろいろと対策もできるだろうし。


「私も嘆きの洞窟でベヘモートとか巨大魔獣と闘ったりしましたけど、本格的に魔族と闘ったことはないですね。最初の戦闘も不意打ちと物量で勝ったようなものですし」


 稀良螺からも声が漏れる。

 矢鵺歌は……ありゃ? いつの間にか矢鵺歌が居なくなってる?


「稀良螺、矢鵺歌は?」


「え? あ、さっきトイレに行くって出て行きましたよ」


「いつの間に。気配感じなかったぞ?」


「お二人で話ししてた時じゃないですかね? あの、ところでユクリさんってレベル4200程になってましたよね? 互角に見えるんですけど?」


 そういえばそうだったなよな。ネンフィアス皇帝が凄いのか、それともユクリが手加減しているのか、なんか普通に良い感じの闘いになってるぞ? これって逆に凄い事なんじゃないか?

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