ネンフィアス帝国にいってみた1
「良く来た魔王!」
ネンフィアス王国に到着すると、ネンフィアス皇帝に手厚く持て成された。
俺自身は食事は出来ないということで他のメンバーには食事をして貰ったが、俺はネンフィアス皇帝と話し合うだけにした。
別に変身を解いてもいいんだけど、できるだけ変身はしたままにしておきたいんだ。通常状態だと暗殺される可能性も高いし。
「まぁ、和平交渉と言っても元々我が国と魔国には敵対する理由が無いのだがな」
「良く言うよ。取れる場所は味方の領地でも奪いそうな癖に」
「ふふ、この態度だからよくそう思われるようだがな。儂は別に領地拡大出来ればそれでいいとは思っておらんぞ? まぁ、味方だろうが儂が治めた方がいい土地があれば頂くことにしているがな」
予想通りじゃねェか。
快活に笑ってんじゃねェよ。
俺の皮肉に血相変えた宰相さんたちが戸惑ってんじゃねェか。
ネンフィアス皇帝は俺を見ながら肉をほおばり、ニヤリと笑みを浮かべる。
どうやら何か面白い事でも考え付いたらしい。
このおっさんはどうも苦手だ。
「魔王よ。せっかくだ。魔族の実力ってのを見せちゃくんねぇか」
「実力? どういう事だ?」
「ウチの精鋭どもとガチバトルしてくれや。もちろん、殺しはなしだがな」
この人は是が非でも魔族の実力を確認したいらしいな。
いいだろう。ユクリさんの実力でも見せておこう。
「ユクリ、相手してやってくれるか?」
「まぁ、魔族といえば余かラオルゥ様かマイツミーアしか来とらんようだしな」
後は若萌、矢鵺歌、稀良螺、エルジーだからなぁ。結局ディア来なかったから馬車で行く羽目になったし。
時間が掛かると知った若萌がブツクサ言ってたけどギュンターに諭されて渋々ここにやってきた。
そんな彼女は食事を楽しんでいるようで、この中ではエルジーと二大巨頭でテーブルマナーが綺麗だ。王族であるはずのユクリよりもしっかりしているぞ。
隣の稀良螺と談笑しながら話す姿はどう見ても貴族令嬢だ。
逆にテーブルマナーが全く無いのがマイツミーアだ。
一度も会食など行った事が無いそうで、俺の隣でユクリと共に暴食している。
皇帝様が別に構わないと言ってくれたので窘めることなくこのままにしている。
「では食後の運動と行こうか」
「それはいいけど皇帝陛下、和平交渉についてはどれくらいの要望をご用意で?」
「それについては宰相どもと相談してな。無理そうなものをいくつか用意しておいた」
待てや。無理そうなもの用意してどうする。
宰相さんから従者に、そして従者から俺達に配られた資料に目を通す。
成る程、確かに無理な要求が幾つかあるな。
「成る程、では交渉を始めても」
「構わんよ。その辺りは宰相とやってくれ。その間に儂は魔族と対戦を行う事にする」
「そう。ならセイバー、私……ラオルゥでこちらを対応させて貰うわ」
「は? 我はセイバーと……痛い痛いっ。耳を引っ張るな阿呆っ」
「良いから来なさいラオルゥ。あなたに参加して貰うのには訳があるのよ。さ、早く早く」
「全く、若萌は魔神相手に容赦がないな我の反撃は恐くないのか?」
「なんで恐がらないといけないのよ。ラオの癖に」
ちょ、若萌さん、ラオって、そんな略したらラオルゥでも流石にお怒りに……ってあれ? ラオルゥの奴呆然としてるぞ?
「も、若萌よ、その呼び名は……」
「ほら、その辺りの説明も含めて、行くわよラオ」
「し、仕方無いな。我が呼ばれてやろうではないか」
満更でもない顔で付いて行くラオルゥさん。宰相と若萌が居なくなったのだが、俺達の食事はユクリとマイツミーアが喰い終わるまでは暇になった。
「そう言えばセイバーよ」
「何だ?」
「何か言いたい事があるんじゃねーか? そんな顔してるぜ?」
「ああ。まぁ、これは構想の段階なんだがな。嘆きの洞窟に三人程同行させて貰えないかと思ってな」
「あん? 同行? そりゃ、儂側の兵士たちに紛れて魔族を連れて行けってことか? いや、流石にそりゃ飲めないだろ。容姿でばれるだろうし、向こうは魔族と人族を識別する術を持ってやがるぞ」
「同行するのは魔族じゃなく勇者だよ。先程居た若萌と、ここに居る矢鵺歌と稀良螺。この三人だ」
「勇者……ふむ」
顎に手をやりしばらく考えるネンフィアス皇帝。
メリットとデメリットを考えているようだ。
しかし、メリットはあまりないと思う。要は面白そうかどうかだと思うんだが。どうだろうか?
無理そうだったら別の方法取るべきだろうか?
そんなことを思っている時だった。
おもむろに顎をさする手を降ろし、こちらを射抜くように見る。
「成る程。奴等の鼻を明かす意味でもそれは面白そうだ。いいだろう。口車に乗ってやる」
よし、狙い通り。




