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トラップモンスター1

「というわけで、今回は二人一組で行う事にしたわ」


 俺と若萌がパーティーを組んだ状態で、大悟と玲人に告げる。

 女性陣が結託した以上、何も言えない二人は顔を見合わせなぜこいつと!?

 といった顔で若萌を睨む。


「そう言われても、女性同士がイイと二人が言うし、私は誠とレベル上げると一昨日から言ってたでしょ。必然的にあんたたちが余っただけよ。嫌なら他の二人に交渉したら?」


 これで大悟は諦めた。

 大人しいオタクな彼が女性に意見など言える訳がないのだ。

 だが、玲人は果敢にアタックする。

 しかし結託した女性は強かった。


 軽いイジメだ。男差別である。

 アレが俺だったらおそらく立ち直れないだろうな。

 悪態付きながら踵を返した玲人が草原に向って行く。

 一人で戦うようだ。慌てて大悟が後を追うが、彼も不安なようでたびたび女性陣に視線を向けていた。


 ……おかしいな。勇者たちの亀裂がどんどん広がってる気がしてくる。

 俺、本格的にやらかしてしまったんだろうか?

 二人が見えなくなるのを見届け、俺達のパーティーに入る矢鵺歌とMEY。


 一応残り二人に発見された時に言い訳出来るように四人ともが森に入って姿を消しておく。

 出て来る時は二人を先に返して俺達が後から出てくれば問題無いだろう。パーティー編成は女性陣に任せれば問題無いと思うし。


「来たわ」


 初めて現れたのはマルマリオン。アルマジロが少し巨大化したような魔物だ。

 アルマジロと違うのは魔法を使って来ること位で、そこまで強い訳じゃない。

 ただ、丸まると物凄い硬い。


「速射!」


「槍の練習にはいいかしら」


 早速立ち向う矢鵺歌とMEY。しかし、あまり効果が無いようだ。


「ビ・ハ」


 逆に若萌の魔法の方が効果があるらしい。

 魔法に弱い生物か。

 若萌の魔法を皮きりに魔法攻撃にシフトした三人の御蔭でマルマリオンは即行撃破。


 次に現れたのは人喰いカズラ。植物系モンスターらしい。

 矢鵺歌がいなかったら多分MEYが引っ掛かっていただろう。

 そもそも矢鵺歌がいなければMEYがこの森に入って来なかったかもしれないという可能性はあるけれど。


 蔦を引きちぎるだけで倒せたので俺でも充分戦えた。

 ただし、カズラ部分から洩れでる液体に触れると溶けるようで、地面が溶解する臭いが臭かった。

 当然ながら俺は臭いをかぐことはなかったが、女性陣には不快な魔物だった。


 酷い臭いといえばスローイングコングもだろう。

 自分の糞を飛ばして来るのだ。アレはさすがに悪夢だった。

 飛んで来る汚物に思わず悲鳴を上げたのは男でも仕方無いと思う。


 遠距離の矢鵺歌が居てくれて本当によかった。近づいて汚物塗れにならなくて本当によかった。

 あの魔物だけは二度とごめんだ。

 あとは二股蛇とかソードモンキーとかウッドボアとか様々な魔物を撃破した。

 ただ、よくよく考えるとゴブリンとかオークなどはいなかったなぁと思う。


 あの辺りのファンタジー系魔物なら普通に現れても良さそうなんだが。エルフは居るのにドワーフやコボルトの類は一体も見掛けない。

 ホネミノムシという周囲の骨を自分の蓑にする魔物や、地面と一体化していた陸ナマズなどは居ても、知性的な魔物の姿があまり見られない。


 人型の魔物も、時折現れるドリアデスくらいだろうか?

 人を誘惑する生物らしいのだが、女生徒とよくわからないスーツ人間しかいない俺達のパーティーには誘惑相手が居ないと思ったようで諦めたようだ。遠目に見つめるくらいで近づいても来なかった。


「ふーん。戦闘って血なまぐさいけどこのくらいなら運動にはいいかも」


「そう言いながら一番参加してないじゃないですか」


「えー、だってメンドイし、基本矢鵺歌と若萌で片付くじゃん。硬い敵とか動きの鈍い敵を私とまこっちが倒してるくらいだしぃ。リーチ的に言えばまこっちのが参加して無くない?」


 ……反論できない。

 実際問題、パーティーが充実すれば充実する程、俺の役立たずさが際立ち始めた。

 スキルや魔法が使える他のメンバーは遠距離だろうが物理耐性を持つ魔物だろうが普通に対処できるのだが、近接以外で俺が戦える魔物はなかなかいない。

 結果、矢鵺歌や若萌に任せることになってしまう。


 本来なら俺が引っ張るべき立場なんだ。戦闘経験は俺が一番あるはずなんだから。

 なのに俺は……闘う時すら殆ど無くて、指示を与える隙間もなくて……

 これで元戦隊ヒーローリーダーだってんだから笑えるよな。


 ああチクショウ。パーティー組めば組むほど自分の無能が際立って来る。

 どうしたらいいんだ。

 頭を抱えたくなりながらもなんとか首を振るだけにする。

 こんな想いをわざわざ皆に見せつける意味はない。


「あれ? にっちゃうじゃん。なんでこんな危険な森にいんの?」


 あっとMEYが目ざとく見つけたのは、茂みの奥から現れる黄色いにっちゃう。

 それを見た瞬間。いつかどこかで聞いた思い出話がフラッシュバックした。

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