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魔神の庭のエルフ達5

「なるほど。理由は理解しました」


 ディアさん呼びました。

 館の方で多少頭を冷やして来たらしく、一応話を聞く体勢にはなっているが、その顔から険は取れていない。

 話し次第では長老だけじゃなく俺まで魔木化させられかねない怒りがあるように思う。


「しかしながら私が譲歩する必要性が見当たりませんな」


「だろうな。自分の土地に不法入居したうえに家が動かせないから出られないとか言われてもな」


「そ、そんなつもりは……」


 俺の言葉に長老が青い顔をする。

 でも事実そんな状態だろエルフは。


「だが、ディアさんや」


「何でしょう魔王陛下?」


「庭の森に精霊樹だっけ? それがあるというのもある種ステータスじゃないかな?」


「ふむ……確かにあの木は滅多に存在しない樹木。我が庭に存在すると言うのは確かに、いえ、しかし景観が……」


「どうせ寿命はまだまだあるんだろ。だったらアレがあっても違和感のない庭にすればいいんじゃないのか? 切り倒したり除去するんじゃなくて、精霊の木を景観の一部にしてしまうんだ」


「ふむ……そう言われると消し去るのが惜しくなってきますな。しかしエルフは不要では?」


「逆だよディア。精霊樹とエルフをセットに考えるんだ。彼らの営みがあってこそバチッと填まる森にするんだよ」


 俺ら、一体何の話してるんだっけ?


『もはやエルフを生かすために意味不明な事言ってないか誠君よ。いやいいんだけどさ俺は』


「エルフと精霊樹をして景観となす……森に潜む魔物も景観とする。ふむ。ふむっ。これは……」


 お、どうやらディアの感性に触れたっぽい。

 顎をさすりながら何かしらを考え出すディア。

 彼の答えが出るまで長老の顔が青くなっている。

 脂汗大量過ぎないか? 倒れないでくれよ?


「ふむ。良いでしょう。百歩譲ってエルフを外観の一部として捉えましょう。しかしながら今から改革をしてどれ程の時間が掛かる事か」


「それもまた一興。なんて思えないか?」


「既に完成しておりましたからな。この景観を変えるというのが我慢なりませんな」


 ふーむと考えながらディアはその場で飛翔していく。

 空普通に飛んじゃったよ。魔神すげぇ。いや、俺も確か普通に飛翔できたな。

 森から飛び出た辺りで周囲を見回したディアがゆっくりと降りてくる。


「どうだ?」


「ええ。タイダルネクツァの遺骸に生えし聖樹。その湖の畔で生を謳歌するエルフ達。構想は少しづつですが形になりつつあります。ふむ。これならば問題はなさそうですな」


 新たな景観を思い浮かべ、ディアがニヤリと笑みを浮かべた。


「生と死のコントラスト、光射す神秘の泉。聖樹を守るように配置された木々。聖樹に近づく不埒モノどもの成れの果ての魔木を泉の近くに、エルフ共に世話を任せれば……ふふ。そうか。それであるならば……」


 おお、あのディアが凄いワクワクした顔してるぞ。まるで天空の城を手に入れたあの人のような満面の笑みだ。うん、どう見ても悪役顔だな。


「森については詳細を詰めてまいります。エルフ族にはここでの生活を許可致しますが、景観から逸脱し過ぎる行為は禁止します。これについては後日煮詰めた詳細を説明いたしましょう。ああ、なんと心躍ることか。久しく感じていなかったこの感情。素晴らしい。ああ、素晴らしい。魔王陛下。私は今とても熱意に燃えておりますぞ。ククク、ハーッハッハッハッハ」


 高笑い浮かべながらディアさんが瞬間移動で去って行く。

 エルフの長老さんは何が何やら理解できてないようだ。


「あの、結局どうなったので?」


「エルフがこの森に居ることは許可が出たみたいだ。ただ、ディアが考える景観から逸脱しない生活をするように、と言う事らしい」


「で、では、移動する必要も殺されることも?」


「おそらく無いだろう。制約があるとしても日常生活に支障はないと思うぞ。木を切ったりする時はディアにお伺いした方がいいだろうけど」


「それは構いませんが……若い者たちが納得してくれるかどうか……」


「ふむ……そうはいっても……あ」


 どうしたものかと考えていた矢先だった。

 ズズンと音が聞こえた。

 何かと向き直れば、エルクスの攻撃を矢鵺歌が避けた拍子に後ろの木が破砕されてしまったようだ。


「決まったな」


「は?」


「命令するぞエルクス・レフェンティス・モーハン。お座りッ」


 俺は即座に真名を奪ってエルクスを無力化する。

 さらに念話でディアを呼んだ。

 俺に呼ばれてなんですか、今忙しいのですが。と不満げにやって来たディアさんに現状を指差しで教えてやる。


「エルフの若者共はディアの実力を知りたいらしい。幸いにも問題を起こした奴もいやがるし、ちょっとやっちまっていいんじゃないか?」


「ええ、ええ。そうですな。あの木は別に切り倒す予定でしたから問題はありませんが、エルフ共に暴走されて日々地形を変えられるのは甚だ不本意だ」


 ビキリ、ディアのこめかみに青筋浮かんだのは気のせいではないらしい。

 その日、エルフたちの脳裏にディアの実力の一端が刻まれた。

 あと、聖樹の近辺に魔木が一つ追加されたとだけ言っておく。

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