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外伝・今日のシシルシさん21

「ふぅ……そろそろぶりっ子すんのも飽きてきたな」


 不意に、シシルシはそんな事を呟いた。

 部屋にいるのはフェレだけだ。

 そんなフェレもシシルシのベッドで眠っているためシシルシの声を聞いている存在は皆無であった。


「そうだ。ハルツェは邪魔だから消すんじゃなくて、俺様のストレス発散に使ってやるか。なんか面白そうだし、あいつの反応おもしれぇからなぁ。クク。そうと決まりゃ画策しねぇとだよなぁ。どうしようかなぁ。ふふふ、クックック」


 黒い笑みを浮かべながらシシルシが動き出す。

 魔神が密かに動き始めた事を、この時はまだ、誰も知らない。




「と、いうわけでぇー、ハルちゃんちょっとオハナシいーい?」


「え? あ、あの、どういう訳? え? あの?」


「にしし。シシーいいこと思いついたんだよ」


 貴族院で授業と授業の間に、シシルシは早速ハルツェを呼び出す事にした。

 他の皆が付いて来ないように内緒の話ーっとミンファとドーラに告げておく。

 意味が分かっていないハルツェは嫌な予感だけは覚えたようでシシルシに警戒感を覚える。


 しかし、逃れる術はなさそうだったのでコクリと頷く。

 そしてシシルシの案内の元、空き教室に向う事にした。

 何人か気になって付いて来ていたので、気配察知を行ったシシルシは、邪魔者を排除するように「秘密なの~」と告げて帰す。


 気になりながらもシシルシに嫌われたくはないようで、皆がハルツェだけを残して帰ってしまった。

 声が聞こえないくらいに人がいなくなったのを確認すると、戸惑うハルツェを放置して、椅子を一脚ハルツェの前に持って来ると、シシルシが座る。


「あの、シシルシ様、何か?」


「んー、ちょっとねー。ハルちゃんてさぁ、シシーがどういう存在か感づいちゃってるでしょ?」


「へ?」


 何でもない風に言われたが、つまりはシシルシの本性に気付いている事についての話だ。

 夢か現かわからないが、この前排除すると言われたばかりだ。

 思い出した瞬間身体が震えだす。もしかして、ついにハルツェを殺しに来たのだろうか?


「だからさぁ……」


「ひぅ……」


「ハルツェ相手なら本性見せてもいいんじゃねぇかと思ったんだよ俺様は」


「ひゃあぁっ……って、え?」


「クックック。いやぁ、猫被りも結構面倒でよォ、時々無性にこの口調に戻りたくなんだわ」


「え? あ、はぁ」


 シシルシの豹変に怯えていたハルツェだが、なぜか殺意も敵意も感じさせないシシルシに戸惑いを浮かべていた。


「あ、あの……秘密を知ったから、殺す……とかじゃ?」


「はぁ? いやいや、ハルツェ殺して俺様になんのメリットがあるんだァ? やろうと思えば国ごと消せる俺様が、たかが人間一匹抗った程度で邪魔だと思うと思ってンのかァ。随分と自分を高く売ってるみてェだなァオイ?」


 くっくと楽しげに笑うシシルシに、今更ながら魔族の恐ろしさを痛感するハルツェだった。

 彼女にとってはハルツェが怪しんだりしたところで全く意味は無く。むしろ本性が露呈したところで困ることなどないのである。


「いいかハルツェ。テメェは俺様を怪しんで、自分だけでもどうにかしなけりゃ。みてぇに思ってるみてェだがな。むしろ逆だ。俺様の本性暴露したけりゃすりゃぁいい。それでどうしようもならなくなったら、全て消す・・・・だけだからな」


 ごくり。気付いた時にはハルツェの喉が盛大に鳴っていた。

 ハルツェは自分が対抗していつかは本性を暴けば何とかなると心のどこかで思っていた。

 でも、違うのだ、自分が暴露したとしてシシルシは毛ほどもそれを恐れてはいない。

 むしろ邪魔になれば周囲ごと消し去ればいいと思っているのだ。


 つまりハルツェが何かしら行動を起こす事で被害を被るのはシシルシではなく、周囲にいる人族、下手をすれば国そのものである。

 ハルツェは今、シシルシの秘密を握っているわけではなく、人族の命運を握ってしまっていたのだ。その事に気付いて全身に悪寒が走った。


「良い事教えてやるぜェハルツェ。俺様はな、魔族領で魔神と呼ばれてんだ。魔王すら恐れる存在の一人って奴な?」


「な、なんでそんな方が……?」


「ンなこたぁどうでもいいんだよ。重要なのはお前は今、俺様がどういう存在か知ったっつーことだ。さぁ、どうする?」


 どうする? そんな事言われてもどうしようもない。

 シシルシが魔神で俺様口調だと伝えたところで、誰が信じ、誰がシシルシに敵対しようというのだろう。

 そもそもシシルシが何しに来たのかもわからないのにシシルシが猫を被ってるから怪しいと思っただけのハルツェの言葉では、トリアットを動かすくらいしか出来ないだろう。

 動かしたが最後、諸共に滅ぼされるだけなのだが。


「わ、私に、何をさせる気ですか?」


「んー。そう来たか。ふふ。そうだなァ。本音で喋れる奴はなかなかいねェンだよ。丁度良いから話し相手になれ。質問くらいには答えてやってもいいぞ?」


 くっくと笑うシシルシは深淵の覗く瞳でハルツェを射抜く。

 彼女が何を考えているのかは分からないしハルツェに何をさせたいのかもわからない。

 ただ一つハルツェに分かるのは、自分は今まで以上に危険な秘密を抱えてしまった。それだけだ。


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