ガールズインザルーム
「あの、よろしいですか?」
部屋に戻り、ベッドに腰掛けていると、ノックがした。
入室許可に「どうぞ」と告げた瞬間現れたのは、弓羅矢鵺歌。
この子が俺のもとへやってくるのは予想外だな。何しに来たんだ?
「あの、明日から私もパーティーメンバーに入れていただけませんか?」
「え? いや、でもだな……」
「正直あの二人とレベリングするよりも貴方達とした方が強くなれると思うんです。レベル20になればこの国の兵士たちは私達と北のエルフの森に向かわせるって、さっき聞きました。それまでにレベルを上げておかないと、不安で……」
どうやら彼女も不安に思っていたらしい。でも、この状況で彼女までレベリングすると結局全員パーティーを組むってことになってレベル20になるのが早まるだけなんじゃ?
「え。エッチなのはダメですけど、それ以外なら、その、何でもしますから。な、なんなら一緒に寝たり、そのキスまでなら……」
「俺はどういうふうに見られてるんだ……」
思わず頭を抱えてしまう。
しかし、なぜこの世界に来た女性はこう男相手に何でもしていいとか言って来るかな。俺がスーツ脱げないからいいモノの、大悟や玲人にそんな事言おうものなら何されても文句は言えないぞ?
「矢鵺歌、女の子が何でもしていいなんて言葉は今後言うな。男にそんなこと言ったら本当に何されても文句が言えないからな。とりあえず、レベリングに関しては俺の一存では難しい。パーティーメンバーが……」
「こっちはオッケーよぉ。ねぇ若萌」
「私達全員が20レベルを超えた時点なのだから、一人残せば他のメンバーのレベル上げは問題無いと思うわ。私は別に気にしないわよ。誠が決めなさい。貴方が始めたことに私達が乗っかっただけだし」
そう言いながら、MEYと若萌が部屋に入ってくる。一応、俺男なんだけど、普通に無遠慮に、ノックも無しに入ってきたなこいつら。
「あー、そうだな。まぁ矢鵺歌なら強くなったからって暴走はしないだろ」
その点男子二人はちょっと妖しい。力に振り回されて何するか予想が付かない。特に玲人とか玲人とか玲人とか。魅了魔術で無双しようとかしかねないし。
というか、矢鵺歌との話を女子二人に聞かれてたのか。変なこと言わなくて良かった。
「ところでぇ、明日はまた別の門に移動すんでしょ。ヤバい魔物とかいるらしいじゃん。森とか入っちゃって大丈夫?」
「問題無いわ。とりあえず今の危機は情報が足らな過ぎること。少し遠くにあるらしいエルフの森に向うのは今聞いたけど、そのエルフが魔族なのかどうかも私達は知らないわ。亜人は魔族みたいな風潮だけど、こちらに攻めてきてるのは西大陸の魔族であってエルフがどうこうの噂は聞かないの。この前出会った兵士のヘストンさんによれば亜人排斥が酷いそうよこの国。他の国は亜人と共存して魔族と闘っているとか言っていたわ」
ヘストンが誰かは知らないが、若萌は俺よりよっぽど精力的に動いて情報を集めていたらしい。
「とりあえず、私が聞いた話から推測すれば、エルフの森に住んでいるのは魔族ではなく亜人。どうもこの国はそのエルフたちを排斥して魔族に対する防衛拠点をエルフの森に造りたいみたい。私達はその為のエルフを倒す武器にされるみたいよ」
「えー、何ソレ。チョーブラック企業じゃん」
「ついでに言えば、エルフの平均レベルが20前後らしいの。だから私達が平均的なエルフと闘えるくらいになってから侵攻するそうよ。ただ、時間はそうないらしいから、今必死に私達のレベルをあげようとしてるみたい」
なんだか面倒なことになってきたな。
「逃げること、できないかな?」
「私としてはそのエルフ戦の時に戦闘に紛れて逃げるのがイイと思っているわ。他の国に逃げるにしろ魔族側に逃げて追っ手を撒くにしろ、それは好きにすると良いわ」
私は逃げるけど。と意味ありげに俺に視線を送る若萌。どうやら一緒に付いて来てということらしい。
別に付いて行くのは問題無いし、この国は妖しいということには賛成だ。
彼女は情報からの推測だし、俺に関しては完全なカンでこの国に居るのが嫌だって思ってるだけなんだが。
「ふーん。脱走かぁ。でもここから出ても身分証明されないといろいろ面倒そー。でも闘いとか正直パスだしぃ……どうしようっかなぁ」
「……」
唇に手を当て虚空を見上げるMEYと俯き加減で考え込む矢鵺歌。
そんな二人を放置して、若萌が俺に視線を向ける。
「誠。いろいろ伝えたいことはあるけど、その辺りは落ち着いてからにするわ。今は、この四人でレベルを上げるために明日のことを相談しましょ。出来ればあの二人に悟られないように」
まぁ、二人と四人で組むってなったら煩いだろうな。
絶対に自分たちを退けモノにするなとか言って来そうだし。
だったら六人パーティーで皆で森にとかになっても不思議じゃない気もする。
と言っても、実質俺が何か言う事はない訳で、俺の部屋で俺を無視した女性陣の相談会が開かれ、俺だけがカヤの外にされていた。
なぜだろう。どっかのハーレム怪人の幻影が俺の肩を叩いた気がした。
やめろ武藤。俺はお前とは違うんだ。




