魔王国会議3
「東と南の魔将は入れ替えた。東にラガラッツ、シオリア、ケーミヒ。他の生存している魔将は全て南だ」
「随分と思いきった変更だな。だが、ゼオラムが居ない以上ミクラトルァが指揮するというのはよい案だと思う」
「そうね。セイバーにしては良い選択だわ」
オイコラそこのギュンターと若萌。言い方。それはまるで出来の悪い子供がテストの回答解けたみたいな言い方じゃないか?
「まぁいい。俺が慰問で行ったのはこのくらいだ。後は各魔将を中心にルトラと闘って貰いレベルを1500以上に引き上げておいた」
「報告は受けているわ。魔神を使うことでレベルを上げる。よくもまぁこんな奇策をおもいついたものね」
「我にはルトラ様をこのように扱う方法など考えにも及ばなかった。おそらく我が魔王のままであればエルダーマイアの侵略を許していただろうな。そう思えばやはりセイバーに魔王を譲ったのは間違いではなかった」
一人、自分の行いに納得するギュンター。ユクリが呆れた顔をしているが、本人は気付いていないようだ。今、娘の心が静かに離れた気がするよギュンター。
「セイバー、この件に関し、改めて礼を言う。我等魔族を救ってくれて、ありがとう」
「よせよギュンター。一応これでも魔王だからな」
面と向かって言われると恥ずかしすぎる。
俺は話題を切りかえるように全王国会議の話を伝えることにした。
「ぜ、全王国会議だがな。ディアと共に参加して来た。見ていたから知っているかもしれんが一応報告をしておこうと思う」
「うむ。聞こう」
「まず、人族は嘆きの洞窟に向ってレベルを上げることで一致した。これから全国の有志が集うだろうな。大悟も向うらしい」
「ふむ。だがあそこはレベル1000までの魔物しか居ないはずでは? 我等には意味の無いものであるし、人族がそのレベルに達しても我が軍を脅かすものでは無くなったのだろう?」
「ああ。だが人族の最高峰が集まる場所になるからな。若萌、矢鵺歌、ついでに稀良螺、どうだ? ネンフィアスの軍に紛れて向ってみる気ないか?」
「私達が……ですか?」
「ちょ、あの、私捕虜……なんじゃ?」
「一応、大悟やらエルダーマイアの勇者が来るはずだからな。勇者同士というのであれば問題はないと思う。流石に俺は魔王として顔を売ってしまってるから行けないけどな。あと稀良螺は真名を縛られてるのは向こうも承知してるから、連れ戻そうとはしないと思う。へたすりゃ暗殺されかねないからもし向うなら矢鵺歌か若萌と一緒にな」
「あ、暗殺……」
ああ、想定はしてなかったか。魔王に真名を奪われた勇者だからな。何の命令を受けているか分からない状態で自国に取り戻す気はないと思う。
嘆きの洞窟に入ったらほぼ確実にエルダーマイアが激怒するだろうし。
刺客が送られてくる可能性は高い。
とりあえず、洞窟に入るまではネンフィアスの鎧でも纏って貰う事にしよう。あの皇帝なら喜んでこの話に乗ってくるだろうし。あとは勇者であるこの三人次第だな。
どうするかと視線を向ければ、若萌はむぅっと考える素振りを見せている。
「そうね。この機会に人族の強い相手を見るのは面白そうね。矢鵺歌さんはどうする?」
「私……? そうね。若萌さんが行くなら行ってもいいかな」
「そう。じゃあ三人で行ってみましょうか?」
「え? あの、私も?」
「同じ勇者の三人に会える機会よ。せっかくなら活用したらいいわ」
稀良螺が捕虜の扱い……とか声を漏らしていたが、真名を縛ってしまえばこんな状態でも充分なので問題はないと思う。
「勇者だけなのよね?」
「人に近いってことでラオルゥ辺りなら一緒に行っても問題無いと思うけど、どうする?」
「ふむ。面白そうだが我はセイバーの側に侍っておこうかの。ユクリに見せつけてやろうではないか我等のラブラブっぷりを」
くっくと笑うラオルゥに膨れるユクリ。あの、俺の起ち位置って今どんな感じになってるの? 本当にモテてるの? 遊ばれてるの?
「それと、これからの俺の予定だが、今回の会議で決まった和平を結ぶ国を順に回ることになる。最初はネンフィアスに行くことになるので一週間ほど暇になる。この機にディアと一緒にディアの領地探索に行こうと思う」
「我も行くぞ!」
早っ。ラオルゥが思い切り手を上げる。
ディアが何かを言おうとしたが、それを制した形だ。
珍しくディアがひくりと頬を引き攣らせていた。
「ラオルゥ様が行くなら余も! 余もセイバーと行くぞ!」
「折角だしユクリも連れて行ってあげたらいいじゃない。護衛はペリカさんでいいのよね?」
「馬鹿野郎。マイツミーアを忘れんな! 彼女は俺の必需品だ」
「ふにゃぁ!?」
若萌の言葉に思わず返した俺に、マイツミーアが赤面する。
いや、これはただ彼女をモフるためというかだな。
理由は理解しながらも若萌は溜息を吐く。
「まぁ、誰を連れて行くかは後で皆で決めると良いわ。他に話はある?」
他に? えーっと、ああ。あの言葉を伝えておくか。




