魔王国会議2
「トドロキ将軍より船舶等の強化に固定砲台が必要とありましたのでそちらの配備のため職人を西方面に向かわせましたが、魔王陛下の指示通りということでよろしかったですか?」
「ああ。港をもう少し警備増加しといた方がいいと告げておいたからな。その防備だろう。問題無い」
「では、私からは以上です」
スクアーレが立ち上がって一礼すると、頷き言葉を引き継ぐ若萌。
「ありがとうスクアーレ総司令官。では次に私から、ギュンターと共に魔族領の見直しを始めたわ。魔族の視点だけだとどうしても実力主義になってしまうから、軍団としての協力体制や相性のいい魔物同士の連携、治癒師の育成などに力を入れてるわ」
「あの、魔物同士の連携? ってなんです?」
思わずっといった様子でハゲテーラが質問する。
他の魔族娘たちも疑問だったらしいが、この辺り物おじせず話すのはハゲテーラの特権だな。
「魔族の方にはなじみないかしら? 例えばゴブリン。機動力が無い彼らをウルフの背に乗せる。とか、ドラゴンの背に魔族を乗せるドラゴンライダー。他にも機動力のある魔族と剛健系魔族の連携、とかかしら。言葉で聞くより実際に見た方が早いわよね。会議が終わったら中央軍の練習風景でも見て行くと良いわ」
相手との相性があるだろうし、考え方の違いもあるだろうがなかなか面白い部隊にはなってそうだ。若萌の軍団に対する考え方が分かる軍団編成なんだろうな。
見るのがちょっと楽しみだ。
「各魔族の暮らしに関しては今まで通り、区画整備をして各種族ごとの隔離化を進めつつ種族ごとに住みやすい環境になるように調整中よ。中央は共同区域にして全種族が過ごせる場所にする予定。ただ、各種族の際立った特性のせいで中央の共同区域はどうしても数種の種族が向えない状態になってるのよね。何かいい方法ないかしら?」
「その向えていない種族ってのは?」
「イグニート族。炎で出来た種族で寒さに弱い魔族よ。居るだけで周囲の温度を上げるの。数百度位」
それはもう無理に共同区域に向かわせる必要無くないか?
「ブリザーガ族。氷で出来た種族で熱さに弱い魔族よ。居るだけで周囲の温度を下げるの。触れると確実に凍傷になるわ」
氷と炎かよ。どっちも出会わせちゃいけない系だな。
「海生魔族もまだ来れないわね。一応道の側面に濠を掘ってそこを通路にしてしまう計画があるけど、まだまだ時間はかかるわ。他にもいくつか際立った種族は居るけど、どの種族もどうしも他の種族と一緒に出来ない特性があるわね」
「無理に一緒にする必要はないんじゃないのか?」
「そういう種族程他種族との会話を望んでるのよ。共同地に向えるのはいつだ。と何度も言われてちょっと辟易してるわね」
「面倒そうだな」
まぁ、俺はその辺りは関知する気ないから他人事で済まさせて貰おう。
「フェンスでも作って不用意に近づかないようにすればなんとかならないか?」
「そうね……現状はそのくらいしか手はないか」
溜息を吐く若萌。かなり各種族との折り合いで苦労してるようだ。
「あと、東と南の魔将たちの移動は正式に認可しておいたわ」
「それは良かった」
じゃあ、あとはセイバーよろしく。と促され、俺の発表の段になる。
「じゃあ、とりあえず慰問を行った事で思った事とやった事からかな。既に報告があった通り西の防備が余りに手薄だったのでトドロキに指示して港に大砲の設置をさせておいた。北はペリカの姉であるメロニカがサボってたので呼び寄せて魔将として働かせたのと、アウグルティースが裏切りを働いていたのでディアが魔木化させたってところか。あとディアの森に怪しい場所があるらしいから会議が終わった後で一緒に見に行く予定だ」
「魔木化?」
稀良螺が気になったようで確認するように聞いて来た。
「ああ。魔木ってのは魔族領にのみ生えてる木でな、ほら、人の顔みたいな模様の枯木があるだろ」
「あー、確かにありましたね。あの気味の悪い木……ん? 魔木化? え、じゃ、じゃぁアレって……全部魔族が木にされた……」
「全部ではありませんが私の魔法の一つですね。レジストされやすいので自分の半分くらいのレベルがある相手には掛けられませんが……」
え? それってディアさん、ラオルゥとシシルシ以外全員魔木化出来るってことですか?
流石に聞き捨てならない話を聞いてしまった皆が青い顔になった。
「ディア。とても言いにくいんだが、せめて主要なここの面々だけでもレベル四、五千くらいにあげられないかな?」
「ふむ? そのレベル帯でしたら私と数回模擬戦を行えば可能かと思われますが。そうですな、会議の終わりに少し遊びましょうか?」
おお、珍しく乗り気だ。こいつは気分屋だからな。気が変わらない内にレベルを上げさせて貰おう。パーティーさえ組んでればレベル上がるし、ペリカたちに頑張って貰うとしよう。
『うわ、こいつディアと闘わずにレベル上げる気だ』
悪いかよ。俺は流石にディアとは闘いたくないぞ。規格外過ぎるっての。




