全国王会議4
絶対に魔族など我が国に入れない。
そう告げるエルダーマイアは俺を睨み、ネンフィアスとノーマンデが火花を散らす。
メーレン王が青い顔で見まわしているのだが、彼では止められないだろう。
「面倒ですな。陛下、なんでしたら私が滅ぼして来ましょうか? 我が領地の問題に直結するのならば遠慮は要りません。働きますよ?」
「ふむ。まぁ、わざわざお前が出るまでもないよ。嘆きの洞窟には入る必要も無いし、入ったところでレベルが上がる奴もいないだろ」
「まぁ、それもそうですな」
納得するディアと会話していると、ルインタ女王が首を捻る。
「魔王よ。洞窟に入ってもレベルが上がらない、とはどういうことか?」
「ん? ああ、皆は知らんか? 先日南の領地にエルダーマイアからの奇襲があってな。魔将が七名死んだのだ。レベル700の兵での奇襲だったからな。俺が南に慰問にいたからよかったが、それが無ければ南側は落ちていただろうな」
「だ、だったら、レベル上げは必要なのでは?」
今までだんまりを決め込んでいたハーレッシュ王が怖々告げる。
自分も会議に参加していることを周囲にアピールするつもりらしいが、皆気にしてないようだ。
弱小国は哀れだな。
「いや、俺も奇襲で反省してな。聞けば嘆きの洞窟で出現する敵は1000レベル程だそうではないか。だったらそれ以上の敵を倒せれば更なるレベルアップができよう? なので今、魔族兵はルトラを倒す事で1500程を平均レベルにしている最中だ」
「「は?」」
バチバチと火花を散らしていたネンフィアスとノーマンデが思わずこちらに視線を向けた。
「南領は既に兵士に至るまで1500を越えている。魔将だけはもう少しレベルを上げさせたがな。統率のために多少突出している程度で実力はルトラに届かない程度だ。今は北側でレベル上げが開始されているんじゃないか?」
北と聞いてノーマンデが真っ青になった。何しろ北で攻め寄せている兵士たちはノーマンデのモノなのだ、敵が急激に強くなったとなるともはや大敗北しか想像できない。
「ああ、そう青くなるなノーマンデ。北側は領地から先へは攻め込まないように一応指示はしている。この会議が終われば和平交渉に向う国だ、押し返して占領などといった悪の行為はしないさ」
「そ、そうかね?」
青い顔になりながらも必死に何の感情も抱いてないと言った顔で頷くノーマンデ王。ネンフィアス皇帝が彼の顔を見てくっくとニヤついた笑みを浮かべる。
「まぁ、そう言う訳で、別に嘆きの洞窟に行ったところで今更レベルが上がる訳ではないんだ。行くとすれば本当に実力を見せに行くか、遊び感覚だろうな」
「成る程。では……おお、イイことを思いついたぞ」
ネンフィアス皇帝はニタリと笑みを浮かべる。
「な、何を思いついたんだネンフィアス皇帝」
嫌な予感を覚えたルトバニア王がかすれた声を出す。
顎をさすりながらネンフィアス皇帝はさも名案といった様子で告げる。
「武闘大会を開こう。ほれ、毎年やっていたアレがあるだろう。魔族にも参加させてみようではないか」
「馬鹿を言うな! そんなことをすれば魔族が上位を占めるだけだろうが!」
「いやいや、そうではなくてだな。魔族は魔族で闘い合うんだ。腕に覚えのある人族は乱入してもいいが、人族の大会と分けて、午前の部人族、午後の部魔族でな。なぁ、ルトバニア王?」
「ぐっ。確か、今年の大会開催所は我が国だったか……」
「魔族と和平を行った国、魔族も大会参加、ふふ、良い宣伝ではないか? 我等は魔族の実力を知れるしな。いかがだろう魔王? 実力を隠す必要が無いと言うのならば、参加するのもよいのではないか?」
「なるほど……ディア、どうだろう?」
「面白そうではありますが、私は参加いたしませんよ? 私が出ては結果が分かり切っていますからな。あと同じ魔族同士で潰し合うわけにも行きますまい、殺害は禁止にして魔将を数人連れて行ってやれば良いでしょう」
「人族枠を入れて……そうだな、合計16名のトーナメント戦位にしてみてはどうだろう」
「となると、人族枠をいくら取るかだな。そもそも立候補があるかどうかも分からんし。とりあえず10名程魔族領で募るか」
「人族が六人も立候補するとは思えませんな。12名募っておきましょう」
放置されてしまい悔しげに呻くエルダーマイア猊下。
なんか可哀想になって来たな。でも狂人であるのは確かだしな。とりあえず向こうの勇者をどうするか考えとかないと……あ、そうだ。どうせネンフィアスが嘆きの洞窟行くんなら向こうで勇者と合うだろうし、こっちも勇者をネンフィアスに同行させればいいんだ。
勇者なら魔族とは違うしな。ネンフィアスの兵士に紛れさせればとやかく言われないだろう。
とりあえずギュンター達と相談だな。




