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不和の種

「ようやくレベル11だ。テメェはどうなんだ大悟?」


 会議室で、俺達はいつものようにレベル報告を始めていた。


「ふっ。今日は一緒にレベル上げたからね、昨日と変わりなく一つ下のレベル10さ」


 草原に出現する魔物のレベルは森の魔物より低いようだ。


「矢鵺歌さんはどうだった?」


「13」


 手短に答える矢鵺歌。彼らはあまりレベルが上がらなかったようだ。

 そんな三人がこちらに視線を向ける。


「おい、ヒーローモドキ、テメェらはいくつになった?」


「俺か、俺は……」


「私達のレベルを知ったところで意味があるの? 二パーティーに分けてレベルを上げると了承したのは貴方達でしょ。こちらはこちらでやらせて貰う。それでいいんじゃなかったの?」


 俺の言葉を遮り、若萌が告げる。

 苛ついた顔になる玲人がギロリと睨むが、若萌がソレに怯むことはない。

 むしろレベルの差もあるのだ、争っても若萌が勝つに決まって……


「イイのかよ? チャームアイ使って魅了してやりゃいくらでもテメェを好きにできるんだぜ? あとで泣こうが喚こうが、いいんだよなぁ?」


「脅し? 気に入らないからズルを使って楽しいの? 下衆ね」


「テメェ!」


「ストップ、玲人ストップ!」


 立ち上がった玲人を慌てて大悟が座らせる。

 俺達が自分たちのレベルより上か下かを何故そんなに知りたいのか、そして何故そんなに隠したいのか。そのすれ違いが俺達の中を急速に悪化させていた。


 俺の取った方針は間違っていたのだろうか?

 皆でパーティーを組んで森でレベル上げた方が良かったのだろうか?

 でも、それだとレベル20なんて直ぐに超える。

 そして次のステップに向うだけだ。


 この国はなぜか信用できない。

 俺の勘が告げるのだ。

 ここはラナリア以上に信用も信頼も出来ない国だって。

 だから、少しでも皆より強くなって、俺正義の味方として皆を守らなきゃいけないって……


「いいじゃんレベルくらい教えてあげればー。あんたたち雑魚に構ってられないっていっちゃえばいいじゃーん。負け組の遠吠えウザ」


「ンだとテメェ?」


「MEYってば勝ち馬に乗るの得意なんだよねー。その御蔭で漁夫の利? 得ちゃってるし。あたし何もしてないのにレベル25~」


 あ、言いやがった。

 あの熊のあとも何体か戦ったのでMEYと若萌のレベルは25、俺は27になっていた。

 なのに俺のスキル全然増えないの。

 力も強くなった気がしないし、矢鵺歌なんて速度強化とか、大悟は筋力強化とかのスキルを手に入れたらしく、動きや攻撃力が上がっている。


 俺だけただのスーツ男なのだ。

 レベルが上がって何かが変わったといった感じが全くしない。

 どれだけレベルをあげようと俺だけ彼らから取り残されているような気がしてくるのは気のせいだろうか?


「25!? おい、どうなってんだよ! 同じ狩り場で何をしたらそんなにレベル差が出るんだよ!」


「いや、私動いてないから知らないし。あんたたちも見てたっしょ。開始地点で足のネイルアートしてたっつの。あたしは闘うより可愛い優先だっしぃ」


「言ってろクソ女。くそ。つーことは他の二人もそれくらいか。一体何と闘ったんだ?」


 さっきまでの怒りが吹き飛んだようで、頭を掻きながら玲人が聞いて来る。

 若萌は言う気はないらしい。

 どうしたものかと考えたが、敵の名を告げるくらいはしてもいいかもしれない。


「エクスプベアだ。他の魔物もだが森の中は草原より強い敵がでる」


「だ、だったらなんで? 皆でパーティー組んでれば今日でレベル20全員が越えたんじゃ……」


 戸惑いながら矢鵺歌が聞いて来る。

 俺は答えに窮し、思わず若萌を見るが、彼女はぷいっとそっぽを向く。

 答える気はないらしい。気のせいか俺に対してまで不機嫌になっている気がしてくる。

 やはり言うべきじゃなかったかもしれない。


「悪いがそれを言う気はない。第一、お前達は俺に干渉しない。そう言ったんじゃなかったか?」


「そりゃそうだけどさ誠」


 正直、大悟の言いたいことも分かる。

 でもレベル上げに関しては完全に俺一人でやりたかっただけの自己満足。

 他の皆がレベル上げるまでに自分のレベルを上げられるだけ上げておき、最悪の事態に備えることだ。


 最悪の事態。

 何故そんなモノに備えるか、あるかどうかも分からないのに?

 簡単だ。いつも、いつも俺は力が足りずに知恵が足りずに失敗してるから。

 皆よりも強くなければ皆を守れない。


 ここじゃ俺は正義の味方にはなれない。そしてスキルも覚えない。力も多分、皆が同じレベルになった時には俺が一番役立たずだ。

 だから、だから皆を守るためには、俺が強くならなきゃいけないんだ。


 でも、俺は、やっぱり気付けていなかった。

 若萌やMEYとパーティーを組んでいたことで二分された俺達に、不和の種が発芽し始めていたことを。

 武藤、俺じゃやっぱり、主人公は無理そうだ……

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