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外伝・国王陛下お確かに6

 ごくり、誰ともなく王たちの喉が鳴る。

 魔族だけではなく魔神が出てきたという事だけでも驚きだが、その実力がどれ程か、想像もつかなくなっているようだ。


「ひ、一ついいかねルトバニアの」


「なにかねハーレッシュ王?」


「魔王の元に集っている魔神は四柱いるといいましたな。それはつまり、神殺しと呼ばれるディアリッチオも……?」


 戦慄の顔で告げるハーレッシュ王。その言葉で各国に緊張が走る。

 神をも殺した魔神が復活。それは今までにない災厄が現れたともいえる。下手を打てば、魔王よりも危険なモノが解き放たれたということだ。


「そのディアリッチオのことで各国の王に報告がある。北の、魔族と戦争をしているのはどこだったかな?」


「それは私だろう。ノーマンデだ」


「実は先日魔王が北の戦場を見に行ったそうでな。そこで魔将の一人が人族を引き込み魔王暗殺にディアリッチオを使おうとしたそうだ。どうやら北の橋近くに森があるそうでな。そこがディアリッチオの領地に当るらしい。ああ、ロバート、すまんがこれを各王に」


 用意していた羊皮紙を魔族であるロバートに手渡すルトバニア王。ロバートから各国の世話係に渡された羊皮紙が王達の元へと届く。

 どうやら地図らしい。それも、魔族領の簡略地図である。


「これは……」


「北側に街が一つ。そこから上へと黒い境界線が引かれておるな。この地帯は……もしかして」


「うむ。それがディアリッチオの領地になるそうだ。ここに無断侵入した場合、ディアリッチオの怒りに触れる。と魔王領に交換留学させているものから聞いておる。その場合、侵入した人族の国をディアリッチオ自ら破壊しにくるそうだ。ムーラン国滅亡の話は記憶に新しかろう。アレは魔神ではあるがルトラによるものであったが、それでも一国が滅ぶのだ。ディアリッチオが本格的に攻め寄せれば人族の国は軒並み滅びかねん」


 呆然とする国々の王を見回し、ルトバニア王はさらに話を続ける。


「幸い、ディアリッチオは魔王に従っておるわけではないらしい」


「何? だが魔王の元へ四柱が揃っていると」


「人族が魔王になったのだ。興味を覚えたのだろうな。他の魔神たちも下に付くというよりは面白そうだから付いて回っているということらしい。つまり、彼らと直接敵対しなければ人族の危機には繋がらないというわけだ。そなたらにとっての脅威は結局魔王であるということだな。魔神は無視した方がよかろう」


 魔神とは天災のようなものだ。相手をするだけ無駄なのならば、彼らの怒りを買わないようにすればいい。結局魔族を撃滅するのに彼らを相手取る必要はないのだ。要は魔王さえ撃破すれば彼らも興味を失い自領に引きこもるだろう。あとは手を出しさえしなければ魔神が出てくる事はない。


「ちなみに、魔神の一人、シシルシが我が国にいる」


「なんと!?」


「交換留学の一環でな。まさか魔神が来るとは儂も思っていなかったが、今は貴族院に入学しておるよ」


 曲者であるがな。等という言葉は言わずに飲み込む。

 なんなら別の国に向わせてしまいたいところだが、下手な国でアレが暴走して自国に不利に働くよりはいい。アレはどんな動きをするか全く想定できない存在なのだ。遠くで何かされるより近くに居て貰った方がいい。ただし、近過ぎるとそれも問題になるので貴族院に居てくれる程度がちょうどいいのだ。


「それより……」


 さて、ここからだぞエルダーマイア。先程我が国を嵌めようとした報い、受けて貰おうか。

 言葉を切って、ルトバニア王は全員を見回す。

 まだ呆然としたまま地図を見ている王たちも、ようやく変化した空気を察してルトバニア王に視線を向けた。


「実は魔王領の現状の話も結構我が国に来ておりましてな。南の戦場で魔将が七名撃破されたそうだ」


「おお。魔将を!? 七人もか!」


 ざわつく王族。その顔には誰だやったのは! という喜色が浮かんでいる。


「南でありますゆえエルダーマイア教国でありますな。なぁエルダーマイア猊下」


「う、うむ。そ、そう……だな?」


 ニタリと笑みを浮かべたルトバニア王に何かしらの危機感を募らせ呻くように言葉を絞りだすエルダーマイア猊下。


「その時、攻め寄せた人族兵の平均レベルが、700だったそうですな」


「700っ!?」


 ルトバニア王の言葉に一斉に視線が集まるエルダーマイア猊下。

 なぜそれを!? と驚くエルダーマイア猊下に更なる爆弾が投下される。


「ついでにその場に、出てきたそうですな。四人の勇者が。我が国の、ではなく、貴国の勇者がな」


「お、おい待て、勇者だと!? エルダーマイアが勇者召喚をしたと言うのかルトバニア王!」


「それだけではないですぞネンフィアス皇帝。我が国の勇者はこの者なのですが、今ようやくレベル50を越えたところでしてな。前回の会議で散々勇者に頼るなど、と言われていたのですが、確かエルダーマイア猊下も一緒に儂を扱き下ろしておりましたな。勇者を召喚するなど外道にも劣るとかなんとか……」


 にやにやと笑みを浮かべるルトバニア王。逆にエルダーマイア猊下の顔は青を通り越して土気色に変わっている。


「そちらの勇者たち、レベルが800を超えていたそうですな。一体……いつ召喚されたので?」


「そ、そそそ、それは……」


 レベル差で察した各国の王。つまり、エルダーマイアはルトバニアよりも先に勇者を召喚しながらも今まで隠していたのである。その事実が、今、明らかになったのであった。

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