配置変更
「この度は、真名を開放していただきありがとうございます」
本営にやって来た俺たちは、全てを察したシオリアにお礼を言われた。
こいつ頭はいいんだよな。
だから未だに胡散臭さはあるんだよ。もしかしたら今の状況もコイツの手の打ちなんじゃないかって思ってしまうんだよな。
「さて、とりあえず真犯人のムレーミアと実働だったレーバスは魔木化したわけだが、こいつらの世話は中央の誰かに任すとして、シオリア。実情はどんな感じだ?」
「人員不足がさらに加速しました。何せ十二いた魔将が三人に減りましたからね」
溜息を吐いてホルステンとケーミヒを見る。
今後の打ち合わせもあるのでこの二人もまだ付いて来て貰っているのだ。
「陛下、流石にこの戦力低下は捨て置けないと思うのですが」
「だろうな。ディア、悪いんだけどギュンターと念話頼めるか?」
「了承しました。……繋ぎました。どうぞ」
脳内に回線が繋がったようで、ギュンターの声が聞こえてくる。どうやら若萌とユクリに衛生兵について説明中のようだ。
「すまんがギュンター少しいいか?」
『ほぁっ!? お、おお? あ、ああジャスティスセイバーか。どうしたね?』
今凄い声出したな。ほぁっ。だってよ。
俺はギュンターに事のあらましを説明する。
まさか南でそのような事が起こっていると知らなかったギュンターが驚いていたが、若萌の方が先に意見を告げて来た。彼女にも念話が繋がっていたらしい。ユクリに伝わってないのはワザとだろうか?
『セイバー。丁度衛生兵を増加させる話をしていたの。急いで数人回そうか?』
「いや、今はイイ。ディアの御蔭で負傷者は殆ど居ない。急ぎで必要なのは転勤届けだ。東に居るカルヴァドゥス、ルーフェン、ミクラトルァ、バロネット、メイクラブたちを南に移したい。これからディアと転移で彼らを移送するので書類の方を頼む」
『了解。でも東の守りがラガラッツだけになるわよ?』
「あ、そうか……」
少し考え、シオリア達を見回す。
「シオリア、それと二人のうちどちらかでいい、任地を東に変更してくれ」
「え? 私が居なくなると書類が……」
「書類については後任となるカルヴァドゥスとルーフェンに任せればいい。向こうの方が人数は居るんだ。なんとかするさ。ディア、早速ラガラッツ以外をこっちに連れて来てくれ。説明がしたい。兵士の移動は後で発布すればいい。今は魔将が手早く必要だ」
「では行ってまいります」
ディアを送り出して、俺はホルステンとケーミヒに向き直る。
向こうはラガラッツがいるので書類などについてはシオリアと共同すればいいだろう。
あとはもしもの時の実働部隊。
「そうですね。では俺が行きましょう。今回の闘いで部下の殆どを失いましたし、向こうで部下を再構築しますよ」
「ではケーミヒとシオリアだな。ホルステンは引き続きこちらを任務地にしてくれ」
「そりゃいいですけどよぉ陛下。なんつーか、カルヴァドゥスとかルーフェンだっけか? 殆どあったことねーんですが、そいつらの下で俺働けるんすかね?」
「基本は今まで通りだろ。闘いたい奴等ばかりだ。脳筋なお前なら話は合うだろ」
「そうっすかね。って陛下、今何気に俺をけなしませんでした?」
「気のせいだろう?」
ディアが魔将達を引き連れやってくる。
彼らにもあらましを説明すると、カルヴァドゥスもルーフェンも仕方無い。と言った顔で了承した。
ルトラを使ってレベルを1500程度まで上げる事を提案するとルーフェンが狂気じみた笑みを浮かべながら再度の忠誠を誓って来たが、恐かったので曖昧に頷くだけにしておいた。
これで南の防衛も問題は無くなるだろ。
人数が多かったせいで溜まっていた書類も、ルーフェンと彼の部下が協力してさっさと済ませ、カルヴァドゥスがシオリアと共同で確認。
二時間とかからず終わりそうだ。
その間にホルステンとケーミヒにミクラトルァたちの案内を任せ、俺はマイツミーアを愛でて時間を潰す事にした。
その横では仲良くなったのだろう、矢鵺歌と稀良螺がガールズトークをし始め、興味を覚えたラオルゥやペリカ、ハゲテーラがこれに参加していた。
何気にディアがその一団に参加していたのが驚きだ。あいつガールズトークに付いて行けているのか!?
数時間後、引き継ぎを終えたカルヴァドゥスたちとシオリアたちの任地が交換された。
兵士達には悪いが移動は自分たちで……え? ディアさんやってくれんの? やった。ありがとう。
ディアが大規模瞬間移動を披露して兵士を入れ替えしてくれました。一家に一人、ディアは便利すぎるな。さすが最強の魔神様だ。
兵士の勤務地変更も終わり、シオリアとケーミヒ、兵士数百名を東に送り込み、俺達は中央へと戻ることにしたのだった。
ちなみに、ディアはルトラによるカルヴァドゥスたちのレベルアップが終わり次第後から戻ってくる事になっている。
なので相変わらず馬車の中は女性率が高かった。稀良螺増えたからむしろ女性率上がったし。




