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爆裂熊・前編

「グアァァァァァッ!!」


 上空から振り下ろされた一撃を横っ跳びに避ける。

 立ち上がった熊の一撃が木に直撃した。

 普通なら幹が圧し折れ巨木が倒れるだけのはずだったが、叩き落としの一撃を喰らった木は爆散した。


 飛び散る木片を見た俺の身体がぶるりと震える。

 あんなもん食らったら確実に死ぬぞ?

 四足になったエクスプベアが俺に視線を向ける。

 無事だった獲物を見付けて再び立ち上がる。


 二足歩行になった熊に咄嗟に武器を構える。

 城で貰ったショートソード。

 大したモノじゃないのは見れば分かる。

 おそらくあの分厚い熊肉を貫き奴の命を奪う事は難しいだろう。


「ガアァッ!!」


 横薙ぎの一撃、咄嗟にしゃがんで避ける。

 直ぐ横の樹木が圧し折れ爆散した。

 さらに殺気。咄嗟に前に飛び込むように前転。

 遅れて繰り出された振り落としの一撃が地面を破裂させる。


 くそ、今のレベルで敵うような生物かこれは?

 エクスプベアの側面に回り込んで俺は剣で斬りつける。

 浅い。というか殆ど切り傷すら付かない。


 ただただ相手の怒りを煽っただけらしい。

 空気を震わせる怒りの咆哮を迸らせ、エクスプベアがギロリと俺を睨む。

 咄嗟に距離を取ろうとしたが、悪手だった。

 一足飛びにエクスプベアが距離を詰めて来る。


「んなろっ」


 背後にあった木を蹴りつけ斜め右に飛び去る。

 ぎりぎり真上を薙ぎ散らす腕を回避して、地面を転がる。

 エクスプベアの体当たりを喰らった木がベキベキと折れながら周りの幹を折って倒れて行く。

 途中で他の木々に受け止められて中途半端に倒れて止まった。


「ガァッ!」


 間髪入れずに飛び込みの一撃。

 エクスプベアの攻撃を転がり回避すると同時に飛び上がる。

 真下を薙ぐエクスプベアのベアクロー。

 少しでも判断を誤れば死んでいた。


 獲物がちょこまかと逃げるのでイラついたらしいエクスプベアが再び咆える。

 周囲の木々が怯えるようにビリビリと震える。

 なんっ、だ? 物凄い悪寒が。


 悪寒が示すままに俺は必死にその場から逃げだす。

 マズい。なにかわからないかマズい。

 叢に飛び込みさらに逃げた次の瞬間。


「GAAAAAAAAAAAAA―――――――――――ッ!!!」


 エクスプベアが咆哮と共に何かを吐き出した。

 真っ直ぐに飛んだらしい見えない攻撃は、エクスプベアの前方にあった木々を根こそぎ吹き飛ばし爆散させて行く。

 化け物か!?


 咆哮というよりハウリングボイスといったところか。音波による攻撃で震わせた周囲を爆発させる一撃らしい。

 正直こんな魔物が街に出現したら滅びかねないぞ?

 必殺の一撃を放ったエクスプベアが立ち上がり鼻を動かす。


 どうやら俺が生きてるかどうか確認しているのだろう。

 直ぐに見つけたエクスプベアが憎々しげに唸るその刹那。

 ヒュンと風が切り裂かれる音がした。


「グガアァァァァッ!?」


 寸分違わず目に突き立つ一本の矢。矢鵺歌が助っ人に来たのか?

 一瞬勘違いしたが、違う。今ここに居るもう一人は若萌だけだ。

 上空に視線を走らすと、一本の木の上で弓を手にした若萌が矢を引き絞っていた。


 片目になったエクスプベアはしばらくその場で暴れて目の痛みを何とかしようとしていたが、直ぐにこの矢を放った敵への怒りに思考が染まったらしい。怒りの咆哮と共に立ち上がると若萌を探しだす。

 しかし、その時には既に場所を移動した若萌が逆の目を狙っていた。


 ヒュンッ。空気がしなり一本の矢が空気を切り裂きながらエクスプベアへと飛んで行く。

 まるで誘導でもされているようにエクスプベアの目に突き立つ矢。

 両目を潰されたエクスプベアが更なる痛みに咆え猛る。


「ビ・ハ!」


 光の魔法がエクスプベアを襲う。

 絶叫が轟く。しかし、ダメージはそれ程でもないらしい。

 手当たり次第に暴れ回ったエクスプベアの一撃が、周囲の木々を爆散させて行く。

 ちょっとした広場が作りだされるが、ソレを止める力が俺には無い。


 スーツの力で強くなっているだけの俺ではあの凶行を止められないのだ。

 そして、ついにエクスプベアの一撃が若萌がいる木を爆散させた。

 「きゃぁ!?」と叫ぶ若萌が空中に投げだされる。

 考える暇などなかった。


 即座に足を動かし落下してくる若萌をキャッチする。

 勢い余ってダイビングキャッチになってしまったが、なんとか若萌を無傷で助け切れた。

 しかし、声に反応したエクスプベアがこちらに近づいて来る。


「マズい……逃げろ若萌!」


 若萌を立ち上がらせた俺は彼女を押し飛ばすように前に出る。

 正義の味方として思わず前に出たが、正直こいつは軽く死ねる相手だ。

 でも、ここで二人して終わるよりは若萌を救えたという事実があるだけマシか。


光のニンプスプファイル


 だが、俺の背後からその呪文は紡がれた。

 若萌は逃げることなく迫るエクスプベアへと魔法を紡いだのだ。

 いや、魔法……なのかこれは?

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