マイツミーアは恥ずかしい
「ほ、本日はよろしくお願いしますにゃ」
次にやってきたのはマイツミーア。
椅子に座って俺と対面しているのだが、背中に隠した尻尾がパンパンに膨らんでいるのは隠し切れていないらしい。
緊張しているのがまるわかりなのはさっきと一緒だな。一人きりだからより緊張しているらしい。
「まずは、これからの任務に関してだ。他の皆にも聞いているんだけど、和平を結んだだろ。戦をまだし足りない魔将は北か南の戦地に向かって貰おうかと思ってる。だから、戦地を変えるか、ここで警邏任務に着くか、領地に帰って少し療養するか、どうしたいかを決めてほしいんだ」
「え? い、いいんですかにゃ。そ、それでしたら戦地変更をお願いしますにゃ。魔将になってさぁ頑張るぞって思った矢先に和平が結ばれたので他の皆には悪いと思いながらも戦に参加したかったんにゃ」
「ということは、マイツミーアもハゲテーラと同じということか? それにしては教養が身についてるな」
「それはその……」
そっと背後で教養訓練中のハゲテーラを見て、声を潜めるマイツミーア。
「ハゲテーラはハゲルラッシュ将軍の愛娘でしたから、かなり甘やかされてましてですにゃ。戦闘力はありますが教養は……」
「なるほど、やっぱそうか……」
俺とマイツミーアは同時にハゲテーラを流し見て溜息を吐く。
「しかし良かったよマイツミーア」
「うにゃ?」
「君が俺への叛意を持っている訳じゃなくて安心した」
「は、叛意なんてそんにゃ。滅相も無いですにゃ」
両手を顔の前で振りながら違う違うとジェスチャーするマイツミーア。猫顔なのでなんかほんわかとしてしまうのはなぜだろう?
「と、ところでマイツミーア。一つ頼みがあるのだが」
こほんと咳を一つして、俺は小声でマイツミーアに語りかける。
「な、なんですかにゃ魔王陛下。にゃーでよければなんなりと」
「その……モフら……げふんっ。顎を撫でさせてはくれまいか」
「顎?」
意味が分からず聞き返すマイツミーア。少しして想像してみたのだろうか?
なぜか顔を赤くした様子の彼女はボンっと噴火したように眼を回して慌て出した。
「だ、ダメですにゃ、そんなのはダメですにゃっ。恥ずかし過ぎて死んでしまいますにゃぁっ」
そうか、ダメなのか。いや、恥ずかしいってことは別に問題は無いけど恥ずかしいから嫌だって解釈でいいのか? つまり、押せ押せで行けば、モフれる。
というかもう、モフりたい。
「つまり、ここでは無理だが二人きりであれば問題は無い……と?」
「あうあうあう……で、ででででもですにゃ、ほ、ほらにゃーは魔物顔ですにゃ。そんな陛下を満足できるような存在ではないですにゃ」
「俺は……お前をモフりたい」
「ひゃうっ!? あ、あぅあぅあぅ……」
何かがおかしい。そう思いながらも目の前にあるモフモフに俺のテンションは少しづつ上がっていく。
『お前、そっち系だったのかよ。いや、まぁ別にいいんだけどさ……』
「わ、わかりましたにゃ、にゃーも覚悟を決めますにゃ。任務終了後に、陛下の天幕に向いますにゃ」
「ありがとうマイツミーア」
「しょ、しょれれはしつれーしますにゃっ」
俺の言葉に慌てたように天幕を飛びだして行くマイツミーア。よっぽど恥ずかしかったようだ。
『いや、彼女の態度おかしかったろ。顎モフるの、多分別の意味あるぞ』
これでモフれる。モフモフ天国が待ってる。もふもふもふもふもふもふもふもふもっふもふもふもふもふもふ。
『だめだこいつ聞いちゃいねぇ。というか途中ふもっ……いや、気のせいだろう』
「むぅ? どうしたセイバー。なんだか様子がおかしいようだが?」
「はっ!? い、いや。何でもないぞ。うん、なんでもない」
「どうしたんですかラオルゥさん?」
ラオルゥの言葉で我を取り戻した俺が自身を取り繕っていると、矢鵺歌たちも近づいて来た。
先程のマイツミーアとの会話は聞かれていなかったようだ。
流石にずっと近くにいたエルジーだけは聞いていたみたいだが、俺が何をしようとしているのかは分からなかったようだ。
ふふ、ついにモフモフを手に入れた。武藤、俺は手に入れたぞぉ――――っ!!
ふぅ、思わず心の中で叫んでしまった。
『テンション高くてウザいなセイバー。むしろキモい』
うるせぇ。でも今は怒りすらわかねぇぜ。
モフモフ、もふもふ、mofumofu。
『うわぁ、もう手が付けられんぞコレ。諦めよう、セイバーはもうダメだ』
何故かナビゲーターにダメだしされながらも次の人物を待つ。
っと、気合いを入れ直さないと。モフモフの前に仕事だ仕事。
俺は両手で頬を叩いて気を引き締める。
次はミクラトルァだったか。闘いたいとか言ってたし、別戦地に連れて行くのが一番だろうな。とりあえず結果は分かってるけど聞くだけ聞いとこう。




