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魔王領慰問団14

「ああ、魔王様。間もなく祖国へ帰れると聞きました。息子が、生まれたんです。もう1年も前ですが」


「そうか。もうしばらく辛抱して貰う事になるが、引き上げた際はしっかりと顔を見せてやれ」


 兵士達を慰問しながら俺とペリカは陣地内を歩く。

 前方の方には森が見える。エルフの森だ。

 魔族側のそこには、斥候が時折出入りしている以外、魔物すらも出てくる気配はなく、人間は一人たりとも姿を見せようとしていない。


 俺らも移動の際にこっち方面に出てたら魔族の総攻撃に遭って殺されてた可能性もあったんだよな。そう考えると運が良かった。

 特にムイムイに会えた御蔭で遠回りに迂回して魔族と鉢合わせしないように移動出来たのが大きい。

 ムイムイにはかなり世話になったからな。そのうちお礼でもしに行くか。

 何の菓子折り持ってこうかな。


「傷だらけの兵が多いですね。私の居た戦場とは全然違います」


「そりゃそうだろ。こっちはサイモンも居なけりゃディアの森も無いんだ。デスサイズベアをけしかけられない分兵士が頑張るしかないさ。その分死傷者が多くなるのは仕方無いだろ」


「回復魔法を使っていないのですね」


「魔力の無駄を極力減らした結果です。時間が立ち過ぎて回復出来る状態では無くなってしまいました」


 エルジーの言葉に応えたのは、ルーフェン。笑みを浮かべるホビット種の男が、いつの間にか俺らの背後に立っていた。


「ルーフェン。もしかして暇なのか? さっきからずっとついて来ているが?」


「おや、バレましたか。実は魔王陛下のお耳に入れたい事がございましたので丁度良いかと追ってまいりました」


「ん? 個別面談の時ではダメなのか?」


「その時の参考にしていただきたいと思いまして」


 そういって近づいて来たルーフェンは、俺の耳元に顔を寄せ、囁く。

 暗殺しに来たのかと思ったが普通に注意喚起するだけだったようだ。

 胡散臭い顔をしているが一応信頼してもいいのかもしれない。


「実は、カルヴァドゥス殿はまだ戦を求めているようで、和平を結ばれた魔王様に反乱を画策していらっしゃるようです」


 ルーフェンの言葉に、なるほどっと思わず同意しそうになった。

 あのおっさんなら普通にやりかねん。


「ふむ、ソレをいうということは、それなりの確信があると見ていいのか?」


「はい。賛同している魔将はミクラトルァ、マイツミーア、バロネット、メイクラブの四将。私とラガラッツは諌める側、ハゲテーラはどちらに付くかまだ分かっておりませんが、父親は諌める側でした」


 魔将は開戦派が多いのか。あ、そうだ。アレ、せっかくだから持ってきといて貰おう。丁度使える。俺はふと考え付いた名案を実行すべくディアに念話を送っておく。

 直ぐに了解の念話が届いた。


「兵士の方は?」


「開戦派が3割でしょうか? 残りはもう帰りたいと。あるいは重傷を負って闘うどころではないようです。残念ながら回復魔法が間に合わず手足を失ったりしている者も多いのです。衛生兵が少なすぎました」


「魔族の回復魔法使いは少ないんですよ。皆、他人を癒す魔法を覚えよう。なんて滅多に考えない人が多いので」


 隣で聞いていたペリカが補足する。

 成る程、衛生兵が少ないと聞いてあのギュンターが把握できてなかったのかと疑問に思ったけど、把握しててもどうしようも無かったってことか。

 回復魔法使える魔族は必須だな。

 ギュンターと若萌に伝えておこう。いや、ギュンターのことだからこの機会に育成に着手してる可能性はあるな。


「魔王陛下。会談の準備が整いました。あちらの本営にお越しください」


 しばらく皆で見回っていると兵士が一人走ってきた。

 もう整ったのか?


「それではまた面談の折に」


 ルーフェンは話は済んだと一旦別れる。

 胡散臭さはカルヴァドゥスよりルーフェンの方がするのだが、今回は白と見ていいだろう。

 一応動きから怪しげなところが無いか探ったのだが、ただただ胡散臭いだけだった。


「えーっと、変わった方ですね」


「胡散臭い魔族というのです」


「同感だ。エルジーはどう思った?」


 ペリカの感想に珍しくエルジーがツッコミ入れたので、折角だから意見を尋ねる。


「そうですね。ルーフェン殿からは我が国の宰相などに類する胡散臭さがあります。今回戦争の画策という面では白とみてもいいでしょうが。もっと遠くを見据えた何らかの画策はあるのではないでしょうか?」


『同感だ。アレは要注意人物だな。何かしらのピースが揃った瞬間馬脚を現すラスボスに近い感覚がある』


 お前が同意してどうするよナビゲーター。だけど、俺もそう思う。

 あいつは注意しといたほうがいいだろう。けど、しばらくは多分使える。有能であることはたしかなのだから、上手く使えばそれなりの活躍をしてくれるだろう。

 どの程度使うかが問題ではあるけど。

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