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魔王領慰問団12

 俺、河上誠ことジャスティスセイバーは今、東の前線基地へとやって来ていた。

 といっても幾つかの天幕が存在するだけの場所であり、今は暇そうにしている兵士達が帰還命令を待つだけの場所でもある。


 東側にあるルトバニアとは一応形なりの和平が結ばれてるからなのだが、一気に暇になったことで持て余している体力の発散どころがないらしい。

 それでも、今まで闘いに明け暮れていた兵士達にとっては生を感じられる日々が送れているようだ。


「えーっと、来といてなんだけど、集まりいいなお前ら」


「当然でございます魔王陛下。我々は魔王陛下のご来臨を歓迎いたしておるのです。何しろ母国に帰る事叶わずと思っておりましたゆえ。戦争をしばらくといえども終わらせていただいた事、感謝の意を絶えません。疲弊した兵士達の中には恋人を母国に残したものや家族と別れて来た者もいます。彼らのいち早い帰還を、是非に」


 偉丈夫と言える巨体でガチムチ系のケツアゴ魔族がにこやかにほほ笑む。

 ここ、東方八騎将軍を率いる八騎将のリーダー、カルヴァドゥスである。

 戦に向えば連戦連勝。と聞こえはいいが、殆どが防衛戦で相手が諦めるのを待つのが彼の常道だ。


 なのでこの東側が膠着状態になっていたのは彼の御蔭であり、彼のせいでもあった。

 もっと積極的なリーダーであればあるいはエルフ族の森を占領出来ていたのは魔王軍だったかもしれない。

 しかし、彼は守備的だったため、人族がエルフに戦争を仕掛けた時も様子見で数体の魔族を偵察に向かわせただけだった。


 だからエルフの森は人族に奪われ、砦が築かれてしまったとも言える。

 防衛戦が多いので兵の疲労が多いのも事実だ。

 相手を撃退して土地を蹂躙する事でストレス発散を行う事も無く、ただただ指定の位置を守って、次々来る敵を迎え撃つだけ。ストレスは溜まるし敵は倒しても倒してもやってくるしで発狂する兵士が多かったようだ。


「では、ご紹介いたしましょう。我等八騎将右から、私、カルヴァドゥス、ルーフェン、ミクラトルァ、マイツミーア、バロネット、メイクラブ、ハゲテーラ、ラガラッツです」


 待て。いろんな意味で待て。容姿へのツッコミもあるんだけどその前に名前。なんだよメイクラブって。いや、それよりもハゲテーラ、その名前で可愛らしい女の子なのは可哀想過ぎるだろ。

 カルヴァドゥスの紹介された順に容姿を見て行く。

 カルヴァドゥスのおっさんはまぁ、お偉いさんって感じの将軍ルック。肌色ではなく赤みがかった肌なのは、彼が火山帯出身だからだろう。炎熱への耐性があるらしい。


 ルーフェンという名前の男は優男。糸目でにこやかに俺を見返している。

 緑色の髪にこっちは普通に肌色の人物だ。

 服装も緑の装備であり、どこかエルフのように見えなくもない。種族はホビットという存在らしい。俺が魔王に成った時に東方から来ていた唯一の魔将様である。


「お久しぶりでございます魔王陛下。まずは和平をルトバニアと結ばれた事、我々はとても喜んでおります」


「そりゃよかった。が。お前は少し違うようだな?」


「おや、分かりますか? その辺りは後日ゆっくりと。今は必要ではないかと」


「ふむ。まぁあとで魔将一人一人と時間を持って要望などあれば聞こうと思っているからな。その時にでも聞かせて貰おう」


 ルーフェンが頷くのを待って隣を見る。

 ミクラトルァはライオン型の魔将だった。尻尾が蛇になっているのと、背中に蝙蝠型の翼がある。

 しかも人語を理解して喋る。流石は魔族。


「正直、俺も言いたいことはある。暴れたりねぇ。だが、皆が疲れてるのも分かってるつもりだ。後で個別に話せるらしいから、ここでは何も言うことはねぇ」


 言葉悪いなぁ。いや、まぁいいんだけどさ。

 これ、ディアだったら魔木にしててもおかしくないんじゃないか?

 ペリカとエルジーが気圧された顔をしているが、ペリカはこいつと同じ魔将だからな。恐れる必要無い同階級だぞ?


 矢鵺歌とラオルゥは暇そうだな。なんなら先に探索しててもいいんだぞ?

 そんなことを思いながらマイツミーアを見る。

 ヤバい、モフモフ少女だ。

 猫の獣人少女がそこにいる。しかも上半身全裸であります。


『うおお、全裸なのに毛だらけで地肌が見えねェ』


 黙ってろエロナビ。

 ナビゲーターの言うとおり、彼女は猫娘ではあるが、殆ど二足歩行の猫寄りの女性だった。年の頃はおそらく十代後半くらいの容姿。胸が膨らんで見えるものの、その全てが黒い毛並みに隠されている。

 縦縞の眼をくりくりっと動かし、ネコミミがぴくぴくと動く。緊張しているのはパンパンに膨らんでいる尻尾を見ればまるわかりだ。

 猫顔の鼻付近に生えている髭がひくひくっと動いている。猫の髭って確か抜いたら大変なことになるんだっけ? 方向感覚失うとかなんか聞いたことあるな。


「ま、マイツミーアですにゃっ! ほ、本日は魔王陛下とお会いできて、こ、光栄でありますにゃっ」


 見事な語尾だ。思わずモフりたくなる。あとで顎の辺り撫でていいか個別面談の時に聞いてみよう。モフらせてください。

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