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外伝・今日のシシルシさん5

 シシルシは一人、王立図書館へとやってきた。

 貴族街に存在するここは、一応建前は国民全てが利用可能。と謳っているのだが、実質訪れるのは貴族くらいである。

 何しろ下層民は識字率が高くなく、本自体を読めないからで、少しだけ読める平民も、貴族だらけのこの場所に来れば要らない衝突を招いて殺されかねないので好きこのんで来る平民も居ない。

 稀に準男爵やら要職狙いの平民が怖々やってくるくらいだ。


 その大半も、図書館の利用金を取られると聞いて引き返す事が多い。

 誰がたった一度の利用のために1000ルトバニアルという金を注ぎ込むと言うのか。

 一応何も無ければ返ってくるとはいえ、そんな大金を払える平民がまず居ない。


 貴族にすればただの端金はしたがねなのだけど、平民にはあまりに高い壁だった。

 そんな図書館に、シシルシは王様から頂いた入管許可書を掲げて素通りする。

 王様からは金払わなくていいと言われているので普通に掲げながら中へと入ったのだが、何故か司書に止められてしまった。


「だ、ダメです。ここは入館料1000ルトバニアルなので、勝手に入っちゃダメよお嬢ちゃんっ」


「えー!? 髭のおぢちゃんがコレ見せたら入れるっていったよーっ」


 むーっと顔をしかめながらシシルシはもう一度許可書を掲げる。しかし、連絡が入ってきていない様子のお姉さんは王族の印も知らないらしく、戸惑いを露わにしている。

 上の人に聞こうにも本日はお姉さんに任せて皆出ているそうだ。

 あ、これはダメだな。本能的に察したシシルシは腕組んでうーんと唸る。別にこちらは正規の手順で入っているから問題は無いのだが、ここで無理に通ると目の前の人の良さそうな女性に罪が掛かるだろう。


「あ、そうだ。あいつ連れて来よう」


 ぽんと手を打ち図書館を出る。

 一度城へと引き返し、とある部屋へと強引に侵入した。

 丁度これから甘い一時を過ごそうと熱烈なキスをしていた大悟とソルティアラが突然の乱入者に視線だけを向けて固まっていた。


「ぬ、ぬわぁっ!? シシー!?」


「な、か、鍵は? 鍵がかかっていた筈ですわっ!?」


「え? 掛かってた? あ、ごっめーん。壊れちゃってるや」


 てへっと額にこつんと拳を当てるシシルシ。

 呆然としていた二人は慌てて離れて衣服を整える。


「な、何か用かシシー?」


「図書館に行ったらね。お金いるって」


「それはおかしいですわ。王族の許可書を渡されておりませんか?」


「新人の司書さんみたいで戸惑ってたよ。だから、一緒に来るかお小遣いほしーなぁ」


 上目遣いに大悟を見る。

 気分が高ぶっていた大悟は思わずうっと呻き、ソルティアラが溜息を吐いた。


「分かりました。何を見に行くのか気になりますし、私がご一緒致します」


「あ、そ、それだったら僕も」


 シシルシは二人を引き連れ図書館へと舞い戻る。

 が、司書がいつの間にかお姉さんから優しげな瞳のお兄さんへと変わっていた。

 お姉さんのことを訪ねて見ると、帰って来た上司にシシルシのことを聞きに言ったら逆に要人を追い返したとお小言貰っているらしい。


 どっちにしても怒られるのか。シシルシは困ったように頭を掻きながらあまりひどいことにならないように寛大な処置を求む。と青年司書に告げて三人で入館する。

 魔族であり、気に入らないモノは即殺なシシルシであろうとも、何の罪も無い存在が理不尽を被るのを見るのはなんとなく気に入らないのだ。


「それで、何を調べるんだ?」


「んー。数百年前にあった勇者の伝承?」


 シシルシの覚えている話を考えると、ラオルゥが居た時期と重なるうえに、彼女は勇者と一緒にいたというから、調べる時期や目的のパーティーは直ぐに分かるだろう。

 問題はそこに彼の名が書かれているかどうかだ。


 当時の王族たちからいって秘匿されてしまっている可能性は高い。

 ダメ元の捜索なのだからそこまで期待はしていないシシルシは英雄伝承のある場所を司書に聞いて図書室内を歩く。

 蔵書は無造作に置かれており、一応それなりに似た書物が固まっているのだが、かなり見づらい。

 探すのも一苦労で、目的の本が見当たらずに焦っている貴族が結構見受けられる。


 魔国の本は若萌が気に入らないと言う理由で兵士達を使って整理させていたが、こちらでもするべきだと思う。後でソルティアラに提案して見ようか? 

 ディアリッチオに連絡を取ればどういうふうに整理すればいいか若萌に教えてもらえるので直ぐにできるだろう。

 ただそれすらも面倒だし、どうせ図書館に来るのはこれが最後だ。なので結局放置する事に決めるシシルシだった。


 目的の本を見付けだし、適当なテーブルに向うと椅子に座る。

 シシルシの体躯だとテーブルに鼻が隠れるくらいの高さになるので、本が見えない。

 仕方無くソルティアラに座って貰い、その太腿に座ることで高さを嵩増しするのだった。

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