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生殺しの夜

「ふふ。どうしたの?」


 しなだれかかるように寄りかかってきたMEY。

 悪どい笑みが見えるが、女性特有の柔らかな体をスーツ越しに感じて思わずうっと呻いてしまう。

 その漏れ出た言葉で彼女は効果ありと踏んだらしい。さらに身体を押しつけて来る。


「わ、わかった。パーティー組んでもいい。だからそんなに寄って来るな」


「あらあら~、そういうこと言いながらも身体はしっかり反応……あら?」


 俺の下半身をさわっと掌で触れ、MEYははて? と首を傾げる。


「ちょっと、スーツ脱ぎなさいよ?」


「いや、俺スーツ着るスキルはあるけど脱ぐスキルまだないんだ」


「は?」


 そう、確かにMEYのエロ攻撃は男である俺にとっても有効打だ。

 通常ならばこのままMEYに逆レイプされて言いなりにされていたかもしれない。

 幸いというべきかスーツが脱げない御蔭でその類の攻撃は全て無効化できるわけだが。


 といっても、さすがに自分で処理も出来ない状態はあまりにも蛇の生殺し。

 俺だって若い男だ。欲望だって人並みにある。

 MEYみたいな可愛い娘に迫られて欲情しないわけがない。


 ただし、それを解消する術を全て封じられているだけだ。

 MEYもそれに気付いたようで、うわぁと少し同情にも似た顔をする。が、少し考えふふっと悪どい笑みを浮かべた。


「まぁ、別にエッチなことじゃなくても相手は誘惑出来るしぃ。今回の目的は既に達したみたいだから、これだけにしとくわね」


 Chuっとスーツ越しに頬にキスされる。

 驚く俺を放置して、MEYは鼻歌交じりに部屋から出て行った。

 そして、入れ替わるように若萌がやってくる。


 俺の部屋から出てきたMEYを横目に流し、部屋に入ると同時にじと目でこちらを見て来る。

 別に悪い事をした気はないのだが、なぜか脂汗が流れた。

 若萌は部屋に入ってくると、ベッドに座り俺を見る。


「MEYさんといたのね」


「あ、ああ。俺らのパーティーに入れてくれってさ」


「ふーん……」


 気の無い返事は気のせいか気温を下げる効果があった気がする。


「そ、それでだな、明日は三人でパーティー組んで……」


「シたの?」


 沈黙が流れた。

 いや、別にしてないと普通に告げればいいのだ。

 そんな若萌に遠慮する事は何一つ無いのだし、彼女がガールフレンドになったわけでもないのだから。


「スーツ脱げないんだから出来る訳もないだろ」


「ああ。そう言えば脱げなかったんだっけ。ふーん」


 少し、空気が和らいだ気がする。


「脱げればシたんだ?」


 しかし再び空気が凍りついた。


「す、する訳ないだろ。罠だってバレバレだし、下手に相手するとMEYから離れられなくされそうだ。す、する訳ないじゃないか。あは、あはは」


「……まぁ、いいわ」


 じぃっと信用してない視線を向けていた若萌だったが、不意にその視線を緩和する。


「少し調べてみて分かった事があるの。私達の召喚された理由。魔王についてなんだけど」


「ああ。魔王な。なんだ?」


「東西二つの大陸に別れてるらしいの。それで、魔王が居るのが西大陸。私達がいるのは東大陸。といっても広いこの世界はまだまだ未到達地区が多いらしくて、この二大陸以外にも沢山の大陸があるみたい。この大陸に関しても日本と大差ない面積みたいだし、隣の西大陸とは干潮時に歩いて渡れるくらいの近さよ」


 北海道くらいの大きさの西大陸、本州くらいの大きさの東大陸。

 魔族は西で人族が東。住み分けられていたらしいが、魔族が少しずつ侵略を始めているらしい。

 というのが人族に伝わるこの世界の情勢。


 人族領は幾つもの領地に分かれているのだが、この国は西大陸に近い場所にあるらしく侵攻の影響がモロに来るらしい。

 直ぐ近くの北の森にはエルフ族が住んでいて、今はそこからエルフを追いだす戦争をしている最中だという。

 亜人族は全て敵の魔族として認識されているらしい。


 しかし、魔族側からすれば亜人族も侵略相手の敵でしかなく、人族と魔族両方から敵対される亜人族は今、一番割りを喰らっている種族であるそうだ。

 そして、魔族への反撃を行うのに丁度良い城の設置場所がエルフが住んでいる森なのだとか。


 ここを人族が取るか魔族が取るかで侵略と防衛の攻守が入れ替わるらしい。

 王様は俺達勇者を早急にレベル上げしてこのエルフの森を人族領に加えたいらしい。

 エルフの平均レベルが20ぐらいなんだと。

 ちょっと、キナ臭くなってきたな。


「誠も気になるみたいね。そもそも勇者として召喚された私達がエルフ族を攻撃するかどうかといわれれば否でしょ? なのに彼らは得意げな顔で勇者様がやって下さると信じて疑わない。私が闘うのは苦手だと遠回しに言ってみても、どうせ最後には嫌でもやってくれるさ。と気になることを言っていたわ」


「可能性があるのなら、真名だろうな」


「でしょうね……ちょっと、ヤバいかも」


 これから来るであろう強制戦闘を思い浮かべ、俺達は不安げな顔で見合うのだった。

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