表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/337

魔王領慰問団6

 矢鵺歌とラオルゥに四騎将を探らせるようにして、俺はエルジーと共にサイモンの采配を見守る。

 とりあえずは二人に動いてもらってエルジーに知らせないようにすることにした。

 ディアに連絡して、二人と念話できるようにしておいたので離れていても報告は聞ける。


「そろそろ天幕に戻りましょう。私がおらずとも問題はありませんので。では、後を頼みます」


 兵士たちに告げて踵を返すサイモン。あの男達がサイモンの代わりに指揮する奴かな。サイモン程のてきぱきとした動きではないが、新しい魔物の投入タイミングはバッチシだ。

 あれなら確かに任せていても問題無いな。


 俺は天幕に戻ってサイモンに促されるままに椅子に座る。

 どうも話があるらしいな。人払いまでし始めた。

 って、エルジーがいるけどいいのかサイモン?


「此度こちらに来られたのは、アレの件ですね。そちらに人族が一緒でもよろしいのですか?」


「お前達が情報を奪われても問題無いと思うのであればな」


「では、遠慮はいりませんな。むしろ是正の良い機会でございましょう」


「是正? ですか?」


 なにやら機密情報の匂いを嗅ぎ取ったエルジーが身を乗り出す。

 あー、こりゃもう絶対でていくことないな。

 仕方無い。このまま話を聞こう。サイモンも気にしてないようだし。


「現在この北方では人族と取引を行い始めた魔将が出ております。今は疑惑の段階であり、確証できる証拠はございませんが、私が思うにほぼ確定でしょう」


 やっぱあるのか疑惑。しかも人族と取引?

 和平交渉なら問題は無いけど、どうも違うみたいだな。


「和平交渉、ってわけじゃないんだな?」


「ええ。どうも人族に我が軍を売ろうとしている馬鹿がいるようです。おそらく魔王様が台頭した事に対する抗議でございましょう。もちろん、真名で見ていただいてもよろしいですが私は無関係です」


「それはお前を信頼するさ。余程の事が無ければもう一度裏切りを行おうなどしないだろ」


「流石に二度もあの感覚を味わいたくはありませんね。未だに内蔵が無くなっていないかと不安になる時がございますよ」


 はっはと笑うサイモン。その言葉を拾ったエルジーが何があったのだろうかといぶかしむ顔をしている。

 あまり言うべき事じゃないので煙に撒かせて貰おう。

 それよりも、サイモン以外の三人のうち誰か。


「お前以外の奴ってことはあの三人の誰かってことだよな。わかるか?」


「いえ。分かっていればなんとかいたしますが……申し訳ありません。私の不徳と致すところでございます」


「向こうが巧妙なんだろ。俺らも少しだけ調べるが、それで見つからないようなら警戒だけは引き続き頼む。下手なことになればこの地域がディアの逆鱗で荒野になりかねないからな」


「は? ディア?」


「ディアリッチオ。そこの森の主だよ。今魔王城に居るんだけど、流石に自分の領地が人族に蹂躙されるのは許さんだろ。ちなみにアイツのレベル9999らしいぞ」


 この言葉に、サイモンばかりかエルジーも息を呑む。そう言えばディアが魔王城に来てる事魔将共知らないんだっけか。というか、ディアが封印されてないことすらも知らなかったんじゃねェかな?


(どうなんだディア?)


(いきなりですな主様。とりあえず、然りと申しておきましょう。人族に我が地を蹂躙されるのならば、大地諸共人族領を破壊しつくして御覧に差し上げましょう)


「あー、やっぱダメだ。ディアに念話してみたけど占領されるようなら人族諸共大地ごと消し飛ばすってよ」


 サイモンもエルジーも青い顔をし始める。

 まぁ、ディアの領地に踏み込みさえしなければ問題無いからいいよな?


『よくねーだろ。人族絶対踏み込むぞあの森。冒険者とかが秘宝を求めていくらでもな』


「つまり、ここが落ちれば人族の滅亡か……」


 俺の言葉に震えだすエルジー。えらい事知っちまったって顔でガクガクしている。

 しかし、今報告に向う訳にはいかない。俺やサイモンの口から他に重要過ぎる絶望が出て来ないとも限らないのだ。


「あの、そのディアリッチオという魔族の領地はどの辺りで?」


「正確にディアに尋ねた訳じゃないから分からないけど、あそこに街見えるだろ。あそこの大きな屋敷がディアの家で、そこからあの森までと考えると、結構広大だよな?」


「元々ディアリッチオ様の領地がこの辺りでしたので、我々は……もしかして」


 不意に何かに気付いたサイモンが真剣な顔をした。

 顎に手をやり考え込むサイモンは、ゆっくりと顔を上げ俺を見つめる。


「魔王陛下。もしかするとですが、魔将は裏切った訳ではなく、人族をディア様の逆鱗に触れさせるつもりやもしれません」


 成る程、俺に直接手を出せないから人族と俺共々ディアに殺させようってことか。ディアなら俺よりレベルも高いし、今回の魔王の粗相により貴方の領地に人族が侵入したとか言えば俺を殺しに行くと考えたのかもしれない。いいだろう。面白い裏切りだ魔将君。裏切りは……悪なんだぜ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ