表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/337

漁夫の利

「結構強いわね」


 浮き出た汗を拭いながら、若萌はスタンダードボアから剣を引き抜く。

 俺のレベルは18、若萌のレベルが15になった。

 このレベルの理由はよくわからないのだが、レベルが上がるごとに気持ち身体の動きが良くなっている気がしなくもない。


「この辺りの魔物相手なら充分闘えそうね」


「そうだな。正直若萌が居てくれて助かった。俺一人だと危ない場面が何度かあったな」


「そもそも、私がいなきゃこんな無茶な闘いはしてないんじゃない? 一対一を狙ってたでしょ?」


「そりゃそうだが、欲を出してた可能性だってあるさ、二対一でもいけるか? ってな」


 事実、自分一人であれば二体、三体一緒に居る魔物相手に戦いを行う事はなかっただろう。

 それでもバックアタックやら奇襲が無かったかといえば不安だし、今回倒した敵と別な形で遭遇すれば死んでいたのは俺の可能性だってある。

 パーティーは大切だな。と思わずにはいられない状況だった。


 確かに、俺はスーツの御蔭で通常の人よりも強い魔物を倒せる。

 でも魔物の強さによっては敵わない存在や、同じくらいの強さが多数出現することだってあるのだ。

 俺だけで対処するには直ぐに限界が来ていたことだろう。

 つまり、若萌が一緒に来てくれたのは有難いことであった。


「そろそろ帰るか? 五時間は森に居るし」


「あら、もうそんな時間なのね」


 俺と若萌は二人揃って森から脱出する。

 その際にも数体の魔物に遭遇したが、この森の魔物なら充分対処可能のようだった。

 クレイラットを切り裂き、ミニチュアベアを蹴り倒す。

 そうして森から脱出すると、丁度他のメンバーも集まり始めていたところだった。


「良いタイミングらしいな」


「そうね」


 ネイルアートを終えて鏡を使ってアイラインを引いていたMEYのもとへ戻ると、矢鵺歌が最初に戻ってきた。結構なレベルが上がったらしく、11レベルになりました。と楽しげに語る。

 さらに少し遅れて玲人。9レベルに上がったと得意げに告げ、最後にやってきた大悟が8レベルだったことを鼻で笑っていた。

 うん、目く……げふんげふん。ドングリの背比べだな。


 ついでにMEYが自分のレベルを聞かれて確認していたが、10レベル超えたと面倒そうに言うだけでどこまで上がったかは言わなかった。

 ただ、女性陣にレベルが抜かれたことで大悟と玲人が悔しそうにしていたとだけは言っておく。


 なぜ彼らのレベルが少なかったのかは簡単だ。遠距離攻撃だから弓を持つ矢鵺歌の方がより遠くの、そして強い敵を相手取れたというだけだ。近距離でフォローも居なかった大悟は自分が倒せそうな敵だけを相手取ったせいで一番レベルが低くなったようだ。


 城に戻って反省会を行う。結局レベル上げはパーティーを組んで行う事に決定したが、若萌が意見を言って俺と若萌だけは別パーティーを組むことになった。

 その分他のメンバーからの好感度は下がったようだが、それは俺じゃなく若萌だから大丈夫かな。


 反省会が終わり、個室へと向う。俺達全員に鍵のかかる個室が完備されているのだ。

 ベッドに腰掛ける。これから食事があるので皆で食堂に集まるのだが、俺はスーツを着ているせいか食事をする必要がないので……というかこれ餓死したりしないよな?

 一日抜いたけど全然食事したいとは思えなかったし、その辺りは上手い具合に設定されているのかもしれない。


 コンコン。それは食事時間が過ぎて少しした後だった。

 誰かが訪ねて来たようで、俺は確認もせずにドアを開く。

 ドアの前に居たのはMEYだ。


「はろぁ~」


 挨拶もおざなりに済ますと、彼女は無遠慮に部屋へと入り込む。

 周囲を見回す。

 入口から右奥にベッドがあるだけの申し訳程度の個室だ。

 まさに寝て起きるためだけの部屋である。


「あらら、何処の部屋も変わらないわね」


「そりゃそうだろ。で? 何しに来た?」


「あ、それそれ。明日からのパーティー編成さ、あんたと若萌のパーティーにあたしも入れてくれる?」


「パーティーに? なんでまた? わざわざ嫌われ者パーティーに来る必要無いんじゃないのか?」


「量より質よ。楽してレベル上げするなら断然あんたたちと一緒のがいいじゃん。あたしのレベル今15だしぃ」


 そうか。こいつ俺達とパーティー編成したままになってたからレベルが勝手に上がって若萌と同じレベルになってたのか。

 しくった。と思ったが、よくよく考えれば全く問題無い気がしなくもない。

 やる気なしでレベル上がるというのが少し癪ではあるが、彼女一人でレベルを上げろと言っても彼女には無理だろう。


 そもそもが一度も戦闘に参加してないのだから、できるだけレベルは上げといて生存力を上げておいても損はないと思う。一応勇者仲間なのだし。


「あら? やっぱりタダじゃ無理だとか? 仕方無いわね……外に出すなら本番も良いわよ?」


「は?」


 妖艶に微笑むMEYの行動に、俺は意味が分からず呆気に取られた顔で聞き返していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ