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魔王領慰問団1

 シシルシを人族領に送り届け、代わりにエルジーたちと共に魔王城へと戻る。

 交渉の方を前回指摘された若萌の言葉で伝えたところ、一応流通交渉はなんとか通す事が出来た。

 正規の値段になったかは俺にはわからないが、取り合えず、ギュンターと若萌に判断を任せれば大丈夫だろ。


 馬車に乗ったまま揺られることしばらく。

 ラオルゥが横に侍ってきている居る以外、誰もが無言の馬車の中、俺はひたすらにラオルゥの胸から伝わる感触を感じないように考えるので必死だった。

 あの野郎、絶対面白がって誘惑してるだろ。


 エルジーさんに見せつけようとしたり、矢鵺歌に一緒にどうだとか誘ったり、この馬車の中ではラオルゥだけが楽しげにしていた印象だ。

 矢鵺歌はエルジー達七人を注視していたし、エルジーたち七人はじぃっと時間が過ぎるのを待っている様子。どう見てもプロ集団だ。甘えは一切ないだろう。


 魔王城に辿りつき、魔王ギュンターに謁見を終え、部屋への案内が終わった途端、エルジーを残したメンバーが一斉に姿を消すくらいに、相手も自分たちが情報収集に来た事を隠す気が無いらしい。

 まぁ、相手からすれば大手を振ってスパイ活動を表だって出来るのだから早速動くわな。見つかっても殺されることも無いし、相手が隠そうとすれば隠そうとするほど暴く事が出来るだろう。


「エルジーさんはいかねぇの?」


「私は貴方の見学です。勇者が魔王城で何をしているのか見て来るようにと言われております」

 

 なるほど。俺は矢鵺歌と顔を見合わせる。

 エルジーの目的は魔王となった俺が何をしているのかを報告することらしい。

 残念だが喰っちゃ寝してるだけだぞ?

 でも、そんな姿を報告されるのはちょっと嫌だな。


『折角だから魔王領ゆっくりと見回るか? 前回の魔神への挨拶回りじゃ街やら前線基地を見てないだろ』


 ナビゲーターにしちゃいいこと言うな。

 折角だしお言葉に甘えるか。各所の情報も奪われるけどギュンターと矢鵺歌が止めるところにはいかないようにすればいいだろうし。

 彼らも奪われる前提で場所をセッティングしてくれるだろ。


 という訳でギュンターに伝えてみたところ、彼も忙しくてそこまで手が回っていなかったので喜んで行ってきてくれと言われてしまった。

 ギュンターからしても秘密にしておく場所が無いらしい。

 魔神を封じている場所も意味の無い箱モノと化してしまったので人族に踏み入られて困る場所はないのである。


「あの、その慰問とやらは私もご一緒しますが、本当によろしいのですか?」


 エルジーの方が心配そうに話しかけて来たくらいである。

 まぁ、自分が情報を収集する立場であるので、情報が集まるのならばよいにこしたことは無いのだが、相手からワザと情報をくれるというのだから意味が分からないだろう。

 しかも嘘の情報を告げる訳でもなく、ただ情報を開示してくれるというのである。

 あまりにも警戒感が無さ過ぎてプロのスパイであっても相手を心配してしまう程に不安になっているらしい。


 お前ら大丈夫か? といったニュアンスを告げるエルジー。

 とりあえず本日は魔王城に来たばかりなのでエルジーを休ませる意味でも慰問は明日からにすることにした。


 慰問に同行するのは暇を持て余した矢鵺歌とラオルゥ。西の安全な場所から向う事にしよう。

 西、北、東、南といった順序が良いだろう。

 あ、魔神の一柱であったフラージャが死んだ事って機密になるんだろうか?

 西に慰問に向った際にバレるよな多分。


 まぁ、いいか。アレいなくても過剰戦力だし。

 あ、でも西からの上陸されるとちょっとヤバいか。

 魔王国の一番防備が薄い場所が西だからな。魔将も一人しかいないし。

 二足歩行のセイウチみたいなおっさんを思い出しながら俺は考える。


 そうだな、今回の慰問で海軍についても考えてみるか。

 実際に見て何が必要かを考えて、ギュンターと若萌に丸投げっと。

 そうか、そう考えると気持ちが軽くなるな。元々気軽に見学しに行くつもりだったけど、見て来た事を報告するだけなら楽だ。やっぱり魔王なんてやるより、俺は側近をしておくのがいい気がして来た。


 皆と別れて自室に戻る。

 ラオルゥが一緒に付いて来たが、スーツ姿のため襲われる心配はないのでそのまま放置。

 まぁ、襲ってくれてもいいっちゃいいんだが、それを誰かに見られた後が恐ろしいのでスーツ姿で寝るのは維持させてもらう。若萌とかユクリとかが何をしてくることか。


「ふーむ。まさか使節団の中に暗殺者まで混じっていると寝る時が面倒だな」


「あん?」


 急に声を発しながら天井を見上げるラオルゥ。

 どうやらそこに暗殺者がいるらしい。

 俺には分からないのだが、流石魔神様か。


「汝、我等を襲うのは構わんが、ソレが人族を滅ぼす可能性がある事、理解しておるのか? 今の貴様等はセイバーの胸三寸で生かされておるに過ぎんぞ?」


 くっくと笑みを浮かべるラオルゥは、なぜか俺のベッドに上がり込むと早々寝息を立て始めた。

 寝る場を追われた俺は床で眠ることになったが、暗殺者が襲ってくる事はなかった。

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