表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/337

個別探索

「は? 個別行動?」


「ああ。にっちゃうを相手にするのは俺には無理だし、どうも個別に戦った方が経験値は多く貰えるんじゃないかと思う」


「ってことは、君のレベルは僕らより多いのか?」


 翌日、東門にやってきた俺達は、敵と闘う前にパーティーを組むかどうかで揉めていた。

 そもそもの問題は俺だけどな。

 そんな俺の問題行動に、大悟が反応する。


「まずはこの辺りの魔物を普通に倒せるかどうかよ。皆でとりあえず闘ってみて、一人でもイケるならそれでもいいとは思うわ。ただし、パーティーが組める範囲限定。それでいい?」


 若萌の言葉に俺は頷く。

 確かに初見の場所で単独行動はかなり大変だろう。

 前回の森でそれなりに戦えることはわかったが所詮は徒手空拳。必ず俺の限界が来る。

 おそらくだがスーツの御蔭で普通の人間よりは強い相手と闘えるのだろうが、レベル差が覆るのは大体10レベル前後だろう。ソレ以上に開きある敵と闘う場合は俺でもかなり無理があると思う。


「そうですね。まずはあちらのハウンドドッグあたりから始めてはいかがです?」


 今回の二人の兵は前回とは別の二人だった。

 二人とも真面目な好青年といった姿で、歴戦っぽい兵士さんほどの頼りがいはないが、あの貴族系兵士程のウザさもない。


 兵士に紹介された魔物はハウンドドッグ。見た目はただの黒い犬だ。

 俺達はパーティーを組んで闘う。

 矢鵺歌が弓を穿ち、ひるんだハウンドドッグに大悟が走り込む。

 その横を玲人の暗黒弾が追い抜き、ハウンドドッグを撃破した。


「うをいっ!?」


「なんだ? 敵を倒したのに怒るな」


「今の、ワザとだよね! 僕が闘う予定だったんだよ!?」


「知るか」


 本当に仲が悪いな大悟と玲人。二人の性格が合わないのは分かり切ったことだけど。


「男性陣協調性なさすぎ……」


 呆れた矢鵺歌。MEYもやる気なさそうにネイルアートにいそしんでいる。


「ふん、ようやく誠が言ってた意味がわかった気がするよ。僕の稼いだ経験値がお前にまで入るのは我慢ならないね」


「こっちこそ願い下げだカスが。テメェだけ底辺彷徨ってやがれ」


 ふんっ。とそっぽを向き合った二人は早々にパーティーから離脱して一人ハウンドドッグ相手に戦闘を始めていた。

 当然ながら一人で戦うので苦戦気味だ。


「あー、あの二人手伝った方が良くないか?」


「そう思うなら単独でするとか言わなければいいのに。仕方無いわね。矢鵺歌さんは大悟くん、MEYさんは玲人くんのフォローお願い」


「え? 無理だし」


「私も、折角だし一人でやってみたい、かな」


 これ、俺のせいだろうか? 勇者パーティー即行バラバラだ。

 兵士達もうわちゃぁと頭を抱えている。

 俺は思わず若萌を見る。これ、どうする気? と冷めた目を向けて来る若萌。

 俺は頭を掻きながら森に逃げることにした。


「あ、ちょっと!?」


 若萌が何か言って来たが、俺はそれより早く森に向い、即行敵と遭遇した。

 人型大の蛇だ。レッドオロチ。全体が赤茶けた色をしており、顔が三角形をしている。明らかに毒持ちの蛇だろう。


 シャッと迫る蛇の一撃をぎりぎり躱す。かなり早い。

 さらに突撃と同時に背後の尻尾が追撃。

 なんとか両手で捉えるが、かなりの強さに驚いた。

 直撃受ければ意識を狩られるくらいの威力がある。


「ぬりゃぁ!」


 尻尾を持ち上げ思い切り地面に叩きつける。

 ぎゃっと呻いた蛇は、しかし、こちらに毒液を飛ばす。

 びしゃりと顔に直撃した。

 だが残念。俺が来ているスーツの御蔭で俺は毒に掛からないらしい。


「せいっ」


 なんとか身体を起こしたレッドオロチが俺に攻撃を、と鎌首擡げた瞬間だった。

 背後から迫った若萌の一撃がオロチの首を切り裂く。


「若萌?」


「あら、お邪魔だった? 苦戦してるように見えたんだけど」


「パーティー組んでるから問題無い。毒液吐かれただけだ」


「普通は毒なんて吐かれたらもっとパニックになるものだけど? スーツなら安全なのね」


 理由に気付いた若萌はオロチに近づきアイテム回収。

 俺の獲物と言いたかったがトドメを刺したのは彼女だ。仕方無いのでアイテムは譲ることにした。


「全員がレベル20になる前になるべくレベルを上げるつもりね。何故かしら?」


「あー、別に意味はないんだけど、どうにも俺はスキルを覚えないみたいでな。レベルを上げることで皆と同じくらいにしとかないと一人役立たずになりそうなんだ」


 実質、俺はレベルが二倍以上あるのにスキルは一つも覚えていない。

 他のメンバーは少しづつ成長しだしているらしいのだが、どうにも俺だけは厳しい世界のようだ。


「そう。とりあえず全員が20レベル超えるまででしょ? だったら突破しているのが二人や三人になっても問題はないわよね?」


「それはまさか?」


「ええ。パーティーを組んだままにしましょ。誠と一緒の方がレベル上がりは良さそうだし」


「だが敵は強力だぞ? 死ぬかもしれない」


「死んだら教会に持っていく人がいた方がいいでしょ。そう言う意味でも二人の方がいいわ」


 それもそうかと納得する。俺は若萌と二人、パーティーを組んだままレベル上げを行う事にしたのだった。どうでもいいが、ついでにパーティーを組んだままだったMEYのレベルも鰻登りだったのに気付いたのは闘い終えて集まった時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ