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夏の始まり

会いたい…


彼は今何をしているのだろう。どうして私の前から消えたのだろう。


私はただ暗闇にいた。


時は流れているのに、私の中は空白だった。


なんだかんだと言い、時に流されながら過ごしていると、ある日、ポストにたまった郵便物を全て手に取った。そして、家で一つ一つ確認すると、同窓会のお知らせのハガキ。私は、「もしかしたら、彼に会えるかも!」と思いながら、出席に丸をつけた。しかし、すぐには、そのハガキを出さなかった。すると電話が鳴った。電話に出ると、高校で仲がよかった友達からだった。

「もしもし?」

と出ると、

「もしもし?花?久しぶり!」

と言う。私は、

「久しぶり!」

と答え、その後、話が弾んだ。

「それでさ、花も行くよね?」

と言う。私は、

「なにに?」

と言うと、

「同窓会!」

と言う。

「うーん…ハガキに丸はつけたんだけど、まだ、出してないだよね…」

と言うと、

「えー!」

と友達は言う。友達は、

「いいから、来い!」

と言う。

「会いたい!」

とその後に言い、

「絶対来いよ!」

としつこいくらいに言う。私は、

「わかったよ!」

と言い、

「やったー!」

と友達は言う。

「じゃあ、またあとで!」

と電話は切れた。


その日、私は、同窓会をやるお店に行くと、もう、すでに人が集まっていて賑わっていた。同じクラスで彼の友達である頼くんが私に気づく。

「花じゃん!」

と言うと、友達はそこにいたのか、

「はなー!」

と私に抱きついてきた。

「久しぶりー!」

と言う。私は、

「久しぶりー!」

と友達に言った。友達は、

「はなー!ここ!」

と私の手を引っ張り隣に座らせた。友達は、

「花に会いたかったんだよ!」

と再び私に抱きついた。

「飲もう!」

と私の分まで用意をしてくれ、飲んだ。友達の愛と話していると、

「はなー!」

とみなが抱きついて来た。

「久しぶりー!」

と。みんなで飲み、騒ぎ楽しんだ。


すると、突然、沙耶が

「ねー!花!そう言えば…」

と話してかけて来たが、愛が、その話を「あーーー!」と遮った。私は、

「どうしたの?」

と言うが、愛は

「なんでもないよー!」

と言い、

「はなー!いつでも、頼っていいからね!何かあったら呼んでね!」

と言い、抱きついた。私は、辺りを見回すと秋の姿がなかった。真美も私のところに、

「久しぶりー!」

と抱きついた。

「元気だった?」

と言う。私は、

「元気だよー!真美は?」

と言うと、

「うちも元気だよー!」

と再び抱きついて来た。少し落ち着いてくると、

「2次回行く人〜?」

と、頼が言う。すると、愛が

「行くよね?」

と、私に聞く。私は、

「うん!」

と答え、肩を組み、歌いながらお店の外に出た。


そして、2次回。カラオケだった。10人くらいに減り、それでも、歌い騒ぎさらに飲みまくり、楽しんだ。


このまま、幸せな日々が続いたらいいのに…


その帰り道、彼の親友の頼くんが、

「はなー!」

と呼ぶ。私の隣にいた愛は、

「はなー!行くよー!」

と声をかける。私は、

「なに?」

と言うと、

「やっぱり、なんでもない…」

と答え、彼は言う。愛は、私のところに走ってきて、

「お願いだから、花には…」

と頼に言う。

「もう、関係ないんだから!」

とその後に言い、愛は、

「行くよ!」

と、私の手を引っ張った。愛は、

「もう、忘れな。秋のことは。」

と言う。私は、

「え?」

と言うと、

「そのほうがいい!」

と言う。

「うん…」

と私は言った。


愛とはあの同窓会以来も会うようになった。一緒に町の中に出掛けたり、旅行に行ったりお茶したりと会う機会が増えた。


それから2週間が経ったそんなある日のこと。


あの同窓会の時以来の頼に会った。彼は、

「久しぶり!」

と言う。私は、

「久しぶり…」

と答えると、彼は、

「あのさ…」

と私に話し始めようとした。

「うん?」

と言うが、なかなか、答えなかった。しばらく間が空いた。私は、

「なに?」

と聞くと、彼は、

「秋のことなんだけど…」

私は、

「え?」

と言うと、

「秋…実は…」

とゆっくりと言う。

「花には言わないでくれって言われたんだけど…でも、やっぱり、秋には後悔してほしくないし…」

と加えた。私は、自分の耳を疑った。

「え?なんて…?」

と混乱した。

「なんで?なんで?」

私は、思わず反射的に走った。全速力で。人に当たっても、ヒールが脱げても、ただただひたすら全速力で走った。


彼がいる病院に着いた。すると、受け付きのところに行き、

「秋は?秋はどこ?」

ともう、落ち着くこともできない。

「秋!秋!」

と彼の名前を呼ぶ。看護師さんは、

「落ち着いてください。ご案内しますので。」

と案内してくれた。彼のいる病室に入ると、看護師さんは、

「お友達が来ましたよ!」

と言う。私に、

「どうぞ!」

と看護師さんは言い会釈をした。そして、看護師さんは、病室から出て行った。私は恐る恐る彼のベットのところまで歩いていった。すると、彼と私の目が会った。彼は驚いていた。

「お前…なんで…」

と彼は言う。私は、目から涙が溢れた。

「秋…」と。

彼は、

「はな…なんで?ここに?」と。

私は、自分の目を疑った。疑うことしかできかった。私は、彼に近づき、近づくたびに涙が止まらなくなる。

「なんで…言ってくれなかったの?」

と言うと、彼は、ただ、

「ゆめ…?」

と何度も何度もつぶやく。私はその彼を見て少し笑った。彼も私を見て笑った。


看護師さんによると、彼は…


あと1ヶ月生きれるかどうかわからない、手術法がないまだ、世界でも知られていない病気だった。こんなにも医療が進んでいる世界なのに、彼の病気はただただ、どうにもしようがなかった。


私は、その日、1日1日の1秒がとても貴重だと思った。


私の最初で最後の切なくて悲しく、優しい最高の夏が来ようとしていた。




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