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夏のはじまり1

ぽつんとなにかに取り残されたような穴が心の一部に大きく空いた。暗闇の中にいる。


それは、現実逃避をしたくなるようなこと。君がいない世界なんて…


わかってはいるけど…


どんなに泣きわめいてもどんなに彼に会いたくてももう…。


私は今、ある川のある野原の芝生の上に座っている。


川は、キラキラとしていて太陽の日差しできれいに輝いている。吹いている暖かい風は、少し涼しく芝生がゆらゆらとしている。


私は、急にあることがふと蘇った。


それは、1年前のこと。夏休み。


暑くて暑くて扇風機の前で涼んでいた。扇風機の風は、気持ちよく、ごろごろとしていた。


そんな時、チャイムが鳴った。

「ピンポーン!ピンポーン!」と何度も鳴る。動きたくない私。しばらくしても、鳴り続ける。私は、「いない…」とつぶやく。まだ鳴り続けるチャイム。いい加減イライラし、立った。そして、イライラしながらも、ドアの前に行く私。ドアの小さな穴から覗くと、誰もいない。私は、ドアを開けた。目の前には誰もいなかった。ドアをちゃんと開け、外に出た。しかし、誰もいなかった。私は、ドアを閉め、扇風機の前に戻った。


すると、再び、ごろごろとしようとした時、

「ピンポーン!ピンポーン!」とチャイムが鳴る。私は、再び、ドアの前に行った。そして、ドアの小さな穴から覗いたが、また、誰もいなかった。私は、イライラしながらも外に出ると、目の前に現れたのは、私の初恋の彼だった。彼は、秋。


「あの…」

と急に話し始める彼。私は、

「何しに来たの?」

と冷めた顔して言うと、

「あのさ、お願いがある!」

と彼は神経な顔をして言う。

「なに?」

と言うと、

「あのさ…」

と再び始める。なかなか、言わない彼は、

「とりあえず、中に入れて!」

と私の了解も得ずに勝手に上がり込んだ。

「え?はぁ?なに勝手に」

と、怒りながら言うと、勝手に冷蔵庫を開け冷たく冷やされた麦茶を手にし、コップも取り出して、勝手に飲み始めた。一気飲みをした後、「はぁ…」と一息をつくと、勝手にソファーに座り込む。私は、さすがに彼にイライラし、口を開いた。

「人の家に勝手に入って勝手に…」

と怒ると、彼は再び真剣な顔をして、

「でさ、お願いがあるだけど…」

と3度目に口を開いた。そして、

「あのさ…もう1度やり直さない?」

と、言う。私は、勿論、

「はぁ?」

だ。勝手に家に入ってきて勝手に自分の家のように…

彼は、その後に

「やり直してくれなくてもいいから、彼女のふりをしてくれない?」

と言う。私は、

「なんで?」

と冷たくした。彼は、

「今、どうせ、彼氏いないっしょ?」

と言う。

「はぁ?」

と怒りでいっぱいな私は、混乱した。

「なんなの?はぁ?はぁ?」

彼は、

「お願いします!」

と頭を下げる。私は、混乱中だ。

「あの、突然、なんなんですか?勝手に人の家にまで入って!」

と怒りながら言うと、

「本当にごめん!でも、俺…」

と顔を赤くする。私は、

「やだよ!他にもいるでしょ?」

と言うと、彼は、私に近づいて来た。動揺を隠そうとしながらも、

「お願い!」

と彼は再び頭を下げる。私は、あまりにしつこい彼に、

「わかったよ…」

と答えてしまった。すると、

「ありがとうな。」

と私の頭をぽんぽんとした。


彼、秋に出会ったのは、高校2年生の時。


彼は、テニス部だった。私は、テニス部のマネージャーだった。女の子からの人気者で私は、彼のことが好きだった。でも、彼の周りにはいつだって人でいっぱいで特に女の子が多く近づきがたい存在だった。そして、クラスも違う。マネージャーだからといって、彼と関われるわけでもなかった。


しかし、そんなある日、私は、テニス部のマネージャーの仕事をしていた。選手の使った物や着たものを洗ったり、干したり。他にもボールの感じを確認したり色々と。


すると、彼が練習が終わったのか、私に

「これもよろしく!」

と私の顔を見て微笑みながら言う。その後に私の頭をぽんぽんとした。私は、顔が真っ赤になった。


次の日、選手たちの来た物を干していると、

「大変だね!毎日!」

と言う。私は、

「そうだね…」

と答えると、

「手伝うよ!」

のカゴの中に入ったティシャツを持ち、干した。

「ありがとう!」

と言うと、彼は微笑んだ。


それから、私は、彼と話すようになり、私は彼に惹かれていくようになった。ただ、見ていられるだけでよかった。それだけでよかった。


しかし、ある日、彼は、

「話がある…」

と言う。

「練習終わったら、話すから…」

と言われ、彼はそのまま戻っていった。私はそのまま、マネージャーの仕事を続けた。


練習が終わると、私は、選手達の使った物や着た物を洗ったり干したりとマネージャーの仕事をしていた。すると、彼は、私のところに来て、

「手伝うよ!」

と言って、洗濯物を干してくれた。全部仕事を終え、

「ありがとう!」

と微笑みながら言うと、

「あのさ…」

と言う。私は、

「なに?」

と答えると、

「俺、嗣永のことが好き!」

と言う。私は、

「え?」

の顔を真っ赤にしながら言うと、彼は私の頭をぽんぽんとした。そして、微笑んだ。私は彼の微笑みにさらに真っ赤になる。私は、

「わ、私で良ければ…よろしくお願いします…」

と言うと彼は、微笑んだ。そして、再び頭をぽんぽんとした。


それから、付き合い始めた。


そして、高校を卒業してからは、自然と消滅した。


その彼に告白されたわけだ。


これが私の最初で最後の夏だった。


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