↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/110

第九十二話「マサヤとルーシェリア」

今回はマサヤ視点です。

「あら、マサヤ。おかえりなさい」

「ただいま……」


 学校から帰宅した俺は母に浮かない顔を見せつつ、玄関で靴を脱ぎ長い溜息を吐いた。

 放課後は渚と近所のファーストフード店で、お茶して帰る約束をしていたのに帰り際、如月澪が渚を引っ張ってどこかに連れて行ってしまったのだ。

 放課後のデート、楽しみにしてたのになぁ……。

 いつの日からか俺と渚は恋人同士になっていた。

 

 きっかけは清家雫が落とした消しゴムを床から拾い上げた日だ。

 消しゴムを拾い上げた俺の視線は、そのままの体勢で女子たちの白い足に釘づけになった。

 二次元や薄い本を超越したリアルの『エロイ生足』どもがそこにある。

 

 だが、エロ心でニヤケたのも束の間で、その時に気がついたんだ。

 白鳥渚の素足には傷やら痣があることを。

 ひょっとして、家庭内で暴力を受けているんじゃないだろうか。

 けれども、渚の両親は飛行機事故で亡くなってることも俺は知っている。

 じゃあ、誰が暴力を振るっているのか?

 そこまで考えたが、それ以上考えるのはやめた。

 家庭の事情だ。むやみやたらに他人の俺が口を挟んでいいことでもない気がする。

 言葉一つで彼女を傷つけてしまうデリケートな問題なのだ。

 それに、そもそも俺の勝手な思い込みかもしれないのだから……。


 とはいえ俺はその日から、白鳥渚のことが気になっていた。

 そして知った。

 彼女はいつも一人ぼっち。お弁当を食べる時も、合間の休憩時間も誰とも話さなかった。

 けしてイジメに遭ってる訳ではない。

 自らの殻に閉じこもったように誰にも心を開かないのだ。

 彼女の笑顔が見てみたい。

 いつしかそんな感情が俺の中に芽生えたのだ。


 それからの俺は事あるごとに彼女に話しかけた。

 彼女に話しかける努力をしていた。

 彼女が微笑んだ。

 その結果、俺は渚と付き合う事になった。

 そして彼女にも初めての友達ができた。その子が如月澪だ。

 

「マサヤ」

「なんだい?」


 階段を上るところで、母さんに呼び止められた。


「部屋にナユタがいるわよ」

「ナユタ?」

「あら? わからない?」


 母はそう言いつつ、ニンマリとした。


「それと可愛らしい女の子が二人も遊びにきてるわよ」

「へ……女の子?」

「夕食の時間まで、ナユタと遊んであげてね」


 母はそれだけ告げると、そそくさと夕飯の準備を始めた。

 ナユタって、誰だっけ? まったく思い出せない。

 思い出せないが、俺の部屋に女の子が二人も?

 顔が緩んでしまう。

 渚と澪かもしれないなぁと。


 わくわくしつつ部屋のドアを開けた。

 だが、そこにいたのは渚でも澪でもなかった。


 ……だれだっけ?

 唖然としながらも俺は彼女達と一人の少年を見た。

 

 一人はメイド服を着た女の子で俺と年の差をさほど感じさせない美少女。

 もう一人は、少々人間離れした青い髪の美少女で、魔女のコスプレをしている。


 そしてもう一人……。

 幼少の頃の俺に似た奴がいる。

 いやいや、似てるどころか俺そのものだった。

 白生地に青い線が入った漫画の主人公のようなコートを着ている。


「あ、あのう……君達って誰だっけ?」


 俺がそう言うと、少年が我先にといった風に自己紹介をしてきた。


「ぼ、僕はミッドガル第七王子のルーシェリア・シュトラウス。こっちがメアリーで、こっちがドロシーだよ」


 緊張した口ぶりで少年がそう言った。


「ルーシェリア?」

「うん。そうだよ。で、君は……ひょっとしてマサヤかな?」

「そ、そうだけど……」


 この状況、さっぱり意味がわかんねーぞ?

 

「あ、お初にお目にかかります。私はルーシェ様のお目付け役のメアリーです。マサヤさん、よろしくお願いします」


 メイドの子が丁寧に挨拶してくれた。

 

「わたしはドロシーです。マサヤさんは王子にそっくりなのですね」


 中学生ぐらいの女の子だ。

 やはり彼女は少し人間離れしてる気がする。

 青い髪に青い瞳はともかく耳が少し尖がっている。

 三人ともコスプレかと思ったが、ドロシーと名乗った少女を見て、これはガチだと思った。

 コスプレ特有の手作り感もなければ、髪だって自然な色合いだ。

 瞳もカラコンって感じでは無い。


 呆然としてると、メイド服のメアリーと名乗った女の子が「さあ、マサヤさんもくつろいでください」と言いつつ俺の手提げバックを受け取り、机の上に置いてくれた。


「マサヤさんもお茶どうぞ」


 青い髪の女の子がお茶を汲んでくれた。

 俺も腰を下ろし、緊張しながら茶を啜る。

 その様子を、二人の女の子がマジマジと見つめてくる。

 あまりにも見つめられるので、恥ずかしくて咳こみそうになった。


「ルーシェ様って大きくなるとこんな感じになるんですね」

「大きい王子もカッコイイのです!」


 二人の女の子が俺を見て、そう言った。

 そして、目の前の少年がリーダー格なのだろうか。

 少年は「時間がないから、手短に話す」と、俺に言う。


 で、話を聞いて驚いた。

 嘘みたいな話だが、未来から来たと言う。

 しかも一万二千年も遙か遠い先の未来からだ。


 その未来は科学が衰退し魔法文明が栄えてるという。

 だが、俺は一瞬で、その話を信じた。


 少年が指先に、小さな火球を出現させた。

 それも何個もだ。

 それはマジックとはかけ離れたものだった。

 魔術まで見せつけられたら信じない訳にはいかない。

 それに……目の前の少年は言う。

 

「君が僕で僕が君だ」


 つまり俺と少年は同一人物だと。


 ぶっとんだ話だが、彼の手のひらを見せて貰った。

 まるで、俺自身の手のひらだった。

 指紋も手相も瓜二つなのだ。

 お互いに見比べて、少年自身も納得したようだった。


 ――そして話は更に佳境へと入っていった。


 少年は29歳の頃、白鳥渚の娘。

 白鳥優奈がトラックに轢かれそうになったところを助けたそうだ。

 その時、瀕死の重傷を負い、一万二千年以上も治療に専念していたという。

 しかも、その治療用の装置が、機械でも生身の人間でもない人工クリーチャーだと聞いた。

 映画のトラン○フォーマーにでてくるような生命体? に近いようだ。


「ふう……」


 俺は溜息をついた。

 そして少年に尋ねた。


「それは白鳥優奈じゃなくって、神代優奈じゃなかった?」

「……へ?」


 少年が間の抜けた顔をする。

 だが、俺にとっては重要な問題なのだ。

 俺と渚は付き合っている。その優奈という少女が俺の娘であってほしい。


「実は……渚は俺の彼女なんだよ」


 ポツリと言った。

 少しだけ照れながら……。

 すると、三人とも大きな声を張り上げ、大袈裟に驚く。


「え、えええええええええええええええええっ!!!」

「ル、ルーシェ様……ルーシェ様の想い人が……渚さん?」

「お、王子の恋人が白鳥渚なのですか?」


 あ、なんだ?

 ルーシェリアじゃなくて、俺の恋人って話なんだが……。

 つーか、そんなに驚くことなのだろうか?

 

「今のはびっくりしましたよ王子!」

「僕だって今のは驚いた……」

「ルーシェ様……四人も娶るとか言いださないでくださいね……」


 メアリーとドロシーと名乗った女の子がジト目でルーシェリアを見た。


「そんなこと言いだすわけないだろ! ハリエットにブン殴られるよ……そもそも僕と渚は敵対関係なんだし、それはあり得ないよ……」


 敵対関係ってなんだ? 俺は未来で渚と敵対関係になるってことなのか?

 詳しく聞くとそうではなかった。

 いや、実際敵対してるらしいが、未来の俺が目覚めた後に、渚達が未来に召喚されて勇者になったそうだ。


 まるでラノベやマンガの世界の話のようだ。

 それに俺の世界は目の前の少年の世界の過去とは些か違うようでもあった。


 それは草すら生えない悲しみの人生だった。

 イケメンでリア充なこの世界の俺とは真逆の人生だった。


 で、俺が知りたい白鳥優奈の父親は誰かわからずじまい。

 だが、白鳥渚は白鳥財閥の娘だ。

 ひょっとしたら俺が養子になった。

 都合よく、そう結論付けた。


 結論付けた俺は一呼吸置きながら、ルーシェリアにお願いした。

 未来の白鳥渚を救ってくれと。


 ルーシェリアは快く頷いてくれた。

 さすが俺だ。話のわかるヤツだ。


 妹のミノリが部屋に来た。


「おにぃちゃん、お母さんが夕飯の支度ができたって!」


 ミノリが俺とルーシェリアにそう言った。

 ミノリはルーシェリアを本当の兄だと認識してるようだ。

 それだけ伝えるとスタスタと階段を降りていった。


 そしてルーシェリアが真剣な眼差しで呟いた。


「マサヤ……」

「ん?」

「ひょっとしたら僕達が未来に戻った後。今日、僕達が出会った記憶は消え去ってるかもしれない」

「あれ? そうなの?」

「ああ、多分消えてると思う。それと僕からもお願いだ。父さんと母さんをよろしく頼む。また僕にはいなかった妹にもね」


 ルーシェリアが見た夢の話も聞いた。

 彼は夢の中で、世界が砂となり、魔物が溢れだしゴブリンが俺や家族を襲った夢を見たそうだ。


 その話も記憶から消えてしまうんじゃ、実際どうにもならないかもしれないが、俺は強くその想いを受け取った。


「マサヤ、ナユタ、ご飯の準備できてるわよー。早く下りてらっしゃい。あと、お友達も」


 階段の下から母が呼んだ。

 父さんも仕事から戻ってるようだ。


「ルーシェリア、いや……君は俺なんだよな……。むず痒い話だけど、最後に夕飯を一緒に食べようぜ?」

 

 彼らは二時間ほどしかこの時代に滞在できないらしい。

 また、残り時間も三十分ほどだという。


「じゃあ……遠慮なく……」


 ルーシェリアはそう言いかけた時に何かを感じ取ったようだ。


「な、なんだ……こ、この魔力は……」

「へ? なんだって?」

「とてつもない魔力を感じる……」


 メアリーさんとドロシーさんも何かを感じ取ったようだった。


「学校の方角だっ!」


 ルーシェリアは突如、部屋の窓を開けた。

 俺には何も見えないが、ルーシェリアの表情は深刻だった。

 彼は階段を駆け降りた。

 メアリーさんとドロシーさんも駆け降りる。

 

 訳がわからない俺も後に続く。


「父さん……」


 食卓で新聞を読んでいる父さんをルーシェリアが父さんと呼んだ。 

 

「ああ、ナユタか、どうしたんだい? そんなに慌てて?」

「父さん……。僕を育ててくれてありがとう。母さんも、そしてミノリもお元気で!」


 父さんはナユタを見てもミノリ同様に家族だと認識しているようだ。

 ルーシェリアは、父さんにそう告げると、真っ先に玄関へと向かった。

 そのルーシェリアを母さんが追う。


「ナユタ……ここはあなたの家、私の大切な息子。いつでも気軽に帰って来ていいのよ」

「ありがとう母さん」


 三人とも靴を履くと外へと飛び出した。

 急展開に思考が追いつないまま俺も外に出た。


「ルーシェリア、何があったんだ?」

「召喚勇者の話をしたよね。学校の上空に強大な魔力を感じるだ。何かの前触れかもしれない。行って確認しないと!」


 ルーシェリアはそう言いつつ時計を見るのだった。


最後まで読んで頂いてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。